漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「丁テイ」 <途中から釘になった字>「釘テイ」「訂テイ」「頂チョウ」「町チョウ」「庁チョウ」「灯トウ」「打ダ」 と 「亭テイ」「停テイ」

2024年03月01日 | 漢字の音符
 テイ <途中から釘になった字>
 落合淳思氏は「漢字の字形」(中公新書)の中で「丁」について考察をすすめ、その見解を述べている。その要旨を引用しながら紹介させていただきます。

 テイ・チョウ・トウ・ひのと  一部

解字 甲骨文字は囗のような四角形が主に用いられ、他の文字と組み合わされるとき、都市の城壁や建築物などの意味で使われた(他に十干の四番目、先の王の略称、祭祀名)。金文では囗もあるが、これを塗りつぶしたが多く使われた。意味は十干の四番目、人名。東周(春秋戦国)には、を釘の頭と考える解釈が出現した(丁チョウと釘チョウが同音だったことも原因)。そこで、さらにの下がのびた釘の「側面形」が作られた。金文の下がのびた字形をもとに篆文の形が作られ、楷書の丁になった。つまり誤った起源の解釈によって新しい字形が作られた。
意味 (1)ひのと(丁)。十干の4番目。また、4番目。「甲乙丙丁コウオツヘイテイ」 (2)成人男子。一人前。「壮丁ソウテイ」 (3)特定の仕事をする人。「園丁エンテイ」(公園や庭園の手入れをする人)「馬丁バテイ」 (4)野菜などのさいの目切り。「豆腐一丁」 (5)[国](町の略字)町の単位。距離の単位。「一丁目」 (6)[国]サイコロの偶数。「丁か半か」 (7)[国](張チョウに通じ)紙など薄いものを数える言葉。「落丁ラクチョウ」 (8)[国]道具を数える言葉。「鉄砲一丁」 (9)[国](鄭テイねんごろ、に通じ)心をこめて。「丁寧テイネイ

十干の読み方(オンライン無料塾「ターンナップ」より)

イメージ 
 「仮借(当て字)」
(丁)
 「くぎ」(釘・打・疔・頂)
 「形声字」(庁・灯・訂・町・汀・酊)
音の変化  テイ:丁・釘・汀・訂・酊  チョウ:疔・頂・町・庁  トウ:灯  ダ:打

くぎ
 テイ・チョウ・くぎ  金部
解字 「金(金属)+丁(くぎ)」 の会意形声。金属製のくぎ。
意味 (1)くぎ(釘)。材木・板などを継ぎ合わせるため打ちこむ金属製の先のとがったもの。「釘付け」「糠ぬかに釘」「目釘めくぎ」(刀剣の身が柄から抜けないように孔にさす釘) (2)くぎを打つ。
 ダ・うつ  扌部
解字 「扌(手)+丁(くぎ)」 の会意形声。手に道具をもち、釘を打つこと。
意味 (1)うつ(打つ)。たたく。「打撃ダゲキ」「打球ダキュウ」「打楽器ダガッキ」 (2)意味を強める。「打開ダカイ」「打算ダサン
 チョウ   疒部
解字 「疒(やまい)+丁(くぎ)」 の会意形声。皮膚から釘が入り込んだように化膿菌が侵入して、深い所で炎症がおこり、表面が釘の頭のように腫れる症状。
意味 できものの一種。かさ。皮膚の汗腺などから化膿菌が侵入して、深いところに炎症巣が生じる症状。現代医療では毛嚢炎モウノウエンという。「面疔メンチョウ」(顔にできる炎症巣)
 チョウ・いただき・いただく  頁部
解字 「頁(あたま)+丁(くぎの頭=くぎの上部)」 の会意形声。頭の上部の意。
意味 (1)いただき(頂)。頭の上。山などの最上部。「山頂サンチョウ」「頂上チョウジョウ」「頂点チョウテン」 (2)いただく(頂く)。頭や物の上にのせる。「頂戴チョウダイ」(頭上に物をいただきささげる。賜ること) (3)[国]いただく。もらう。たべる。「ご馳走を頂く」

形声字
[廰] チョウ  广部
解字 旧字は廰で「广(いえ)+聴チョウ(耳をかたむけてきく)」の会意形声。人々の声を、耳をかたむけて聴く建物の意。新字体は、聴を同音の丁に置き換えた。
意味 役所。「庁舎チョウシャ」「官庁カンチョウ」「府庁フチョウ」「県庁ケンチョウ
[燈] トウ・ひ  火部
解字 旧字は燈で「火+登トウ(のぼる)」の会意形声。火を地上から上にあげた灯(あか)り。新字体は、旧字の登 ⇒ 丁に置き換えた。丁にトウの発音がある。
意味 あかり(灯り)。ひ(灯)。ともしび(灯)。「灯台トウダイ」「灯油トウユ
 テイ・ただす  言部 dìng
解字 「言(ことば)+丁(テイ)」 の形声。[説文解字]は「平議(公平に論断する)也(なり)。言に従い丁テイ聲(声)」とし、公平に議して相談し、正すこと。
意味 (1)はかる(訂る)。評議する。公平にはかる。「二論を相(あ)い訂(はか)る」 (2)ただす(訂す)。誤りをなおす。「訂正テイセイ」「改訂カイテイ」 「校訂コウテイ」(校正して訂正)(3)とりきめる。さだめる。(=定)「訂盟テイメイ」(同盟や条約を結ぶ)
 チョウ・テイ・まち  田部
解字 「田(区画された耕地)+丁(テイ)」 の形声。テイは定テイ(さだめる)に通じ、耕地の境界を定めている畔(あぜ)道をいう。発音字典の[廣韻]は「田や區の畔(あぜ)の埒(くぎり)也(なり)」とする。日本では、まち(町・街)の意になる。
意味 (1)あぜ。田畑を区切る細い道。 (2)さかい(境)。耕作地の境界。 (3)[国]まち(町)。市街。人が多く賑やかなところ。「町屋まちや」 (4)[国]チョウ(町)。行政区画の一つ。「町営チョウエイ」 (5)[国]田畑の面積の単位。距離の単位。面積の一町は、10反(約99・2アール)。長さの一町は60間(約109メートル)
 テイ・みぎわ  氵部
解字 「氵(みず)+丁(=町テイ。さかい)」 の会意形声。波(みず)との境の意で、波打ちぎわをいう。
意味 みぎわ(汀)。なぎさ(汀)。波打ちぎわ。「汀渚テイショ」(汀も渚も、なぎさの意)「汀線テイセン」(みぎわ線。海岸線)
 テイ  酉部
解字 「酉(さけ)+丁(テイ)」 の会意形声。テイは酲テイ(二日酔・悪酔い)に通じ、ひどく酒に酔うこと。
意味 よう。酒にひどく酔う。「酩酊メイテイ」(酩も酊も、酒にひどく酔う意)


       テイ <宿屋>
 テイ・チン  亠部

解字 戦国期および篆文は「高の略体(高い建物)+丁(テイ)」 の会意形声で、テイと呼んだ高い建物。街道沿いにある旅人を泊める宿舎と望楼(ものみやぐら)を兼ねた駅亭(宿駅の建物)を言った。その後、宿屋・料理屋などを言うようになり、また、庭園の中の壁のない休憩所(あずまや)を指すようになった。
意味 (1)宿屋。旅籠屋。料理屋。茶屋。「駅亭エキテイ」(宿駅の建物。宿場の宿)「料亭リョウテイ」「亭主テイシュ」 (2)チン(亭)。チンは唐音。あずまや。庭園などにある屋根だけで壁のない休憩所。 (3)屋号や文人・芸人などの呼び名。「末広亭」「二葉亭」「三遊亭」

イメージ  「宿屋」(亭・停・渟)
音の変化  テイ:亭・停・渟

宿屋
 テイ・チン・とまる・とどまる  イ部
解字 「イ(人)+亭(宿屋)」 の会意形声。宿屋で人が休むこと。そこで動かないことから、とまる・とどまる意となる。
意味 (1)とまる(停まる)。とどまる(停まる)。「停止テイシ」「停車テイシャ」 (2)やめる。中止する。「停戦テイセン」「停学テイガク」 (3)とどこおる。「停滞テイタイ
 テイ・とどまる  氵部
解字 「氵(みず)+亭(=停。とどまる)」 の会意形声。水がとどまって流れないこと。
意味 とどまる(渟まる)。ひと所に水がとどまって流れないこと。「渟水テイスイ」(水がとどまる)「渟田ぬた」(湿田。沼地)「渟足柵ぬたりのき」(大化3年(647年)に越こし国(高志国)に置かれた城柵。沼垂城ぬたりじょうとも書いた。現在の新潟市東区にあったと考えられている)
<紫色は常用漢字>

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