漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「奥オウ」<おく>と「襖オウ」「懊オウ」「燠おき」「澳イク」と「粤エツ」

2024年04月23日 | 漢字の音符
  エツを追加しました。
[奧] オウ・イク・おく  大部 ào・yù 

解字 篆文は「宀(たてもの)+釆ベン+両手」の会意。釆ベンは獣の爪(つめ)の分れている形の象形であるが、ここでは爪に続く足裏の肉の意で祭肉。奧は、祭肉を神聖な建物の隅に両手で供える形[字統]。[説文解字]は「宛(かがむ)也(なり)。室之(の)西南隅」とし、部屋の西南隅でかがんで祈るかたちとする。奥深い所で祈るので「おく(奥)」の意味になった。旧字体は、両手が大になり、新字体でさらに、釆⇒米に変化した奥となった。(供えるのは米と覚える)
意味 (1)おく(奥)。家屋の西南のすみの部屋。神を祭る所。家の奥まった部屋。「奥座敷おくザシキ」。 (2)奥深いところ。「奥義オウギ・おくギ」「深奥シンオウ」 (3)[国]おく(奧)。夫人。おくて。「奥方おくがた」「奥手おくて」(成長・成熟のおそいこと)

イメージ 
 「おく」
(奥・燠・襖・懊・澳)
 「その他」(粤)
音の変化  オウ:奥・襖・懊  イク:燠・澳  エツ:粤

おく
 イク・オウ・おき  火部 yù
解字 「火(ひ)+奧(おく)」の会意形声。建物の奥に火があり、あたたかいこと。日本では燃えた木が炭火になったものをいう。
意味 (1)あたたかい(燠かい)。あたためる。「燠燠イクイク」(あたたかいさま) (2)[国]おき(燠)。薪が燃えて炭火になったもの。赤くおこった炭火。
 オウ・ふすま  衣部 ǎo
解字 「衤(ころも)+奧(=燠。あたたかい)」の会意形声。あたたかい綿入れの衣服をいう。日本では部屋を仕切る建具の「ふすま」の意味に使う。
意味 (1)あわせ。あお(襖)。綿入れの衣服。「袍襖ホウオウ」(綿入れの衣服) (2)[国]ふすま(襖)。建具のひとつ。両面から紙や布を貼った障子。「襖絵ふすまえ」「襖紙ふすまがみ

襖ふすま(「畳店の襖見本」から)
 オウ・なやむ  忄部 ào
解字 「忄(心)+奧(おく)」の会意形声。心の奥深くに思う意で、なやみや、うらむ意に用いる。
意味 (1)なやむ(懊む)。「懊悩オウノウ」「懊嘆オウタン」(憂えなげく) (2)うらむ。「懊恨オウコン」(懊も恨も、うらむ意)
 イク・オウ・くま・おき  氵部 ào
解字 「氵(水)+奧(おくまる)」の会意形声。水が陸に奥深く入り込んだ所。日本では海や湖の奧すなわち沖をいう。
意味 (1)くま(澳)。川や湖が陸地に奥深く入りこんだ所。「澳港オウコウ」(奥まった港)「隈澳ワイイク」(湾曲してはいりこんだ水ぎわ。隈も澳も、くまの意) (2)[国]おき(澳)。海や湖の岸から遠く離れた所。 (3)地名。「澳門マカオ」(中国広東省南部の港湾都市)「澳太利亜オーストリア」(中央ヨーロッパのドイツ語圏の国。首都ウィーン)

その他
 エツ  米部 yuè

解字 篆文は「宀(たてもの)+釆ベン+于の変化した形」。このうち「宀(たてもの)+釆ベン」は奥の旧字()の上部となる形で建物の西南隅で奥まったところの意。そこに于の変化形がついて全体の発音がエツとなった。漢代の隷書では釆⇒米に変化し、さらに現代字は米が白の外周りで囲まれた形+丂の粤エツになった。エツの発音は曰エツ・越エツ、と同じであり、曰・越の両字には「ここに」という発語・助詞の用法があり、粤エツにも同じ用法がある。また、奥の上部の奥まったところの意は、中国大陸の南の奥まった所を表す広東省方面を古くは粤エツと言った。

広東省(「ウィキペディア」より)
意味 (1)[文頭に置く発語・助詞]ここに(粤に)。「粤若エツジャク」(=曰若(エツジャク)=ここに。発語の辞)  (2)歎息の声。「粤ああ」  (3)広東省の略称。広東省の車のナンバープレートの識別記号。粤人エツジン(越人)のいた地域。「粤語エツゴ」(広東語)「粤地エツチ」(広東省地方の古い呼び名)「粤犬エツケン吠雪ハイセツ」(粤の犬は、雪に吠える。粤の地方は暖かく雪が降らないので犬が雪を怪しんでほえる)  
<紫色は常用漢字>

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