漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「柬カン」<えらぶ> と 「揀カン」「諫カン」「練レン」「錬レン」「煉レン」「鰊いわし」

2024年04月25日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 カン・えらぶ  木部 jiǎn

解字 金文第一字は束(たばねたもの)の中の左右に点をいれた形。第二字は中が八に変化した形。[簡明金文詞典]は「象声詞(擬声語)として用い、鐘や鼓の声(音)の形容」としている。篆文になると中が八の字に統一され、後漢の[説文解字]は「簡を分別する之(これ)也(なり)。束に従い八に従う。八は分別也(なり)」とし、束(たばねたもの)を開き分けて選ぶ意とする。篆文以降は、えらぶ(柬ぶ)意味で用いられるようになった。また、簡カンに通じ、てがみ・なふだの意がある。
 なお、新字体(常用漢字)で用いられるとき、柬⇒東に変化する。
意味 (1)えらぶ(柬ぶ)。えりわける。 (2)てがみ。なふだ。「書柬ショカン」 (3)地名。「柬蒲塞カンボジア」(インドシナ半島南東の国)

イメージ 
 「えらぶ」
(柬・揀・諫)
  悪い物をえらんで取り出し、中を「よくする」(練・錬・煉)
 「その他」(鰊)
音の変化  カン:柬・揀・諫  レン:練・錬・煉・鰊

えらぶ
 カン・えらぶ  扌部 jiǎn
解字 「扌(手)+柬(えらぶ)」の会意形声。手でえらぶこと。
意味 えらぶ(揀ぶ)。よりわける。「揀選カンセン」(揀も選も、えらぶ意)「揀別カンベツ」(えらび別ける)
 カン・いさめる  言部 jiàn 
解字 「言(ことば)+闌(えらぶ)」の会意形声。相手の行動の良くない部分を選んで、言葉で告げて、その間違いを改めるよう忠告すること。特に、家来が主君に意見する意味に用いる。
意味 (1)いさめる(諫める)。いましめる。さとす。「諫言カンゲン」(目上の人の非をいさめる)「諫臣カンシン」(主君の過ちを諫める忠誠な臣下)「諫死カンシ」(死んでいさめる)「諫止カンシ」(いさめて思いとどまらせる)「切諫セッカン」(強くいさめる)
(2)地名。「諫早市いさはやシ」(長崎県中央部にある市。東部の諫早湾では古くから干拓が進められた)

よくする
 レン・ねる  糸部 liàn
解字 旧字は練で「糸(いと)+柬(よくする)」の会意形声。糸を水洗いしたり、煮たりして上質にすること。転じて体をきたえる意に用いる。新字体で、練⇒練に変化する。
意味 (1)ねる(練る)。ねりぎぬ。「練糸レンシ」(練ってやわらかく白くなった絹糸) (2)体や技をきたえる。「練習レンシュウ」「練磨レンマ」(練り磨くこと)「水練スイレン」(水泳の練習。古語では、水泳の達人)「鍛練タンレン」「熟練ジュクレン」(なれて上手)「未練ミレン」(①未だ熟練していないこと。②心の残ること。あきらめきれないこと)(3)(煉の書き換え字として)「練炭レンタン=煉炭」
 レン・ねる  金部 liàn
解字 旧字は鍊で「金(金属)+柬(よくする)」の会意形声。金属を焼いたり溶かしたりして質を良くすること。きたえる意は練と通用する。新字体で、鍊⇒錬に変化。
意味 (1)ねる(錬る)。金属をねりきたえる。「錬金術レンキンジュツ」「錬鉄レンテツ」(よくきたえた鉄)「精錬セイレン」(粗い金属の純度をたかめ精製する) (2)心身や技芸をきたえる。「鍛錬タンレン」(=鍛練)「錬成レンセイ」(技や心身をきたえる=練成)
 レン  火部 liàn
解字 「火(ひ)+柬(=錬。精製する)」の会意形声。火で金属などを精製すること。ねる、きたえる意だが、常用漢字である練・錬にほとんどがおき換えられ、材料を混ぜ合わせてこねる・ねりかためる意で用いられる。
意味 (1)ねる(煉る)。きたえる。 (2)こねる。ねりかためる。「煉瓦レンガ」(粘土などをねりかためて焼いた建築材料)「煉炭レンタン」(石炭などの粉末をねりかためた燃料)「煉丹レンタン」(昔、中国で丹(に。辰砂)を煉って作られた不老長寿の薬)  (3)(宗教)「煉獄レンゴク」とは、カトリック教で天国と地獄の間にあり死者の魂が天国に入る前に、火によって罪を浄化されるとされる場所)

その他
 レン・にしん  魚部 liàn
解字 「魚(さかな)+柬(レン)」の形声。レンという魚。レンのイメージは不明。中国では魚の一種とする。日本では、にしんに当てる。古くは鯡と書くことが多かった。柬レンをつけた鰊にしんは、三枚におろして身欠きニシンにするなど、加工して「よくする」意か。 
意味 (1)小魚の一種。 (2)[国]にしん(鰊)。鯡とも書く。ニシン科の海魚。かつては食用・肥料など用途が広かったが、現在は漁獲量が激減した。カズノコはその卵。「鰊曇(にしんぐも)り」(北海道の日本海側でニシンの漁期である4月前後に多い曇り空。<広辞苑>)「鰊粕にしんかす」(ニシンを煮て、圧搾して油をとったあと乾燥させたもの。 魚肥とした。)「鰊御殿にしんごてん」(第二次世界大戦前に北海道の日本海側に建てられた、網元や漁師たちが寝泊りした豪華な居宅兼漁業施設の俗称。小樽市に移築復元された小樽市鰊御殿がある)

小樽市鰊御殿(北海道有形文化財)
 レン・おうち  木部
解字 「木(樹木)+柬(レン)」の形声。レンという名の木。和名は、おうち(楝)。センダン科の落葉高木。南宋の[爾雅翼]は「木高さ丈(約3m)餘、葉は密に槐カイ(樹)の如く尖り,三四月に開花,紅紫色,實(実)は小鈴の如し名は金鈴子。俗に之を苦楝と謂う,亦(また)含鈴と曰う。子可以楝,故名」とする。

センダン(楝おうち)の花。筆者撮影(2024.5.18)
意味 おうち(楝)。センダン科の落葉高木。春にうす紫色の花をつけ、実・樹皮は薬用(駆虫)となる。木材は建築材などに用いられる。栴檀(センダン)とも書く。「楝色おうちいろ」(少し青みがかった紫色)

<紫色は常用漢字>>

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