也は「へび」ではなかった。
也 ヤ・なり・や 乚部 yě
也をヘビと説明する字書
①
②
①は「角川新字源」(2017年)の也ヤ。「象形。へびの形にかたどる。もと它タと同じ」と書かれている。②は「古代文字字典 甲骨・金文編」(城南山人編・マール社・2003年)の也ヤ(右から2番目)。金文篇の也には它タが載っている。以上、例をあげたようにかなりの字書が「也は金文で它タ(蛇)であり、元は蛇のかたちから変化した」としている。
しかし、最近の成果を取り込んでいるネットの字典は也をヘビとは見ていない。下の変遷図はネットの「漢典(中国)の也(の字源・字形)」および「漢字古今字資料庫(台湾)の也」を参考にして描いたものである。下の它タ(ヘビ)とくらべると違いが分かる。


上は也ヤ、下は它タ
金文の也は、上掲の「角川新字源」などと形が異なっている。この字は春秋中期の欒書缶ランショフに描かれた「也」で、口の下にヘビのような曲線がついている。今回、金文の掲載されている器の写真と、そこに掲載されている文字を確認でき、也はヘビでなく助辞であることが分かった。
欒書缶(ランショフ)というのは、欒書ランショ(人名)の子孫が先祖を祭るために作った蓋つきの器で、この器の外側と蓋の裏に文字が金で象嵌されている。「也」の字があるのは器体の外側で以下のようになっている。
①
②
③
春秋中期の欒書缶(らんしょふ)に描かれた「也」
https://x.com/seidouki_bot/status/791966063407697921
①は欒書缶(らんしょふ)の器体、②は描かれた文字列。③は文字列の拓墨。
「也」の字は書かれている文字列②③の左から2行目、下から4番目にある。この行は上から「余畜孫書也擇其吉金」(金は次の行の最初の字)と釈されており、「余(われ)は畜(孝)孫[孝孫は人名]の書を也(以)って其の吉金(金象嵌に用いる良質の金)を擇(えら)び」以下は次の行「以て鋳缶(鋳造した缶)を作る」となる。(「百度百科の「戦国欒書缶」による)
https://baike.baidu.com/item/%E6%88%98%E5%9B%BD%E6%A0%BE%E4%B9%A6%E7%BC%B6/10770458
ここで注目すべきは、也が「以って」と釈されていることである。しかし、左3行目の上から2番目の字も、字体が異なるものの「以って」と釈されているが理由は分らない。日本の字書には「也」の意味に「以って」はないが、意味が蛇でなく接続詞的に訳されていることがわかる。
解字 金文は口の下にまがりくねった線を描いて、口から語気がでている形。金文では「以って・用いて」の意味になっている。篆文は[説文解字]が「女陰也」とおかしな解字をしている。この字は隷書(漢代)をへて「也」の形となり、意味も断定の助字「なり」や、感嘆の助字「や」などとして用いられる。
意味 (1)なり(也)。~である。断定の語気をあらわす助字。(2)や(也)。か(也)。文中や文末にあって語の勢いを強めたり、感嘆・疑問・反語の語気を示す助字。(3)や(也)。提示。~は。~というものは。(4)詠嘆。~のことよ。文末に置かれ詠嘆の語気を表す。(5)よびかけ。~よ。(6)「也已のみ」(7)「也哉なるかな」(だなあ)(8)反語。「也や」(ならん也(や)
イメージ
「助字」(也)
「形声字」(地・池・馳・弛・施・絁・髢)
「它タと融合した字」(他・匜)
音の変化 ヤ:也 シ:施・弛・絁 タ:他 チ:地・池・馳 テイ:髢 イ:匜
形声字
地 チ・ジ 土部 dì
解字 「土(つち)+也(ヤ⇒チ)」の形声。天に対し、その下にひろがる土を地チという。土地・地面の意から、ところ・場所の意味などに用いる。
意味 (1)つち。とち。「土地トチ」「地面ジメン」「陸地リクチ」(2)ところ。場所。「地域チイキ」(3)その土地の。「地酒ジざけ」「土産みやげ」(4)身分。位置。「地位チイ」(5)本来持っている性質。「素地ソジ」
池 チ・いけ 氵部 chí
解字 「氵(水)+也(ヤ⇒チ)」の形声。長く水を引いた通水路や城の堀池を池チという。のち、庭の池などをいう。[説文解字注]は「水を畜(ため)るを陂ハ(つつみ)と曰(い)い、地を穿(うが)ち水を通すを池チと曰(い)う」とする。
意味 (1)ほり。みぞ。「城池ジョウチ」(城のほり)「金城湯池キンジョウトウチ」(熱湯をたたえた堀と金属の城。守りが固くせめおとすことができない城)(2)いけ(池)。地を掘って水をためたところ。「貯水池チョスイチ」「池塘チトウ」(池の堤)(3)硯などの水をためておく所。「硯池ケンチ」「電池デンチ」
馳 チ・はせる 馬部 chí
解字 「馬(うま)+也(ヤ⇒チ)」の形声。馬が疾走することを馳チという。[説文解字]は「大駆ク(勢いよく走る)也。馬に従い也チの聲(声)」とする。
意味 はせる(馳せる)。かける。速くはしる。「馳名チメイ」(名声がひろまること)「駆馳クチ」(はせかける。駆も馳も、はせる意)「馳走チソウ」(食事の準備のためにかけまわる:もてなしの立派な料理)「御馳走ゴチソウ」(①豪華な食事、②心をこめたもてなし)
弛 シ・チ・ゆるむ・たるむ・たゆむ 弓部 chí
解字 「弓(ゆみ)+也(ヤ⇒シ)」の会意。弓の弦をはずして弓がのびたさまを弛シという。
意味 ゆるむ(弛む)。たるむ(弛む)。「弛緩シカン」(ゆるむこと。弛も緩も、ゆるむ意)「弛張シチョウ」(緩むことと張ること)
施 シ・セ・ほどこす 方部 shī
解字 「方𠂉(旗の略体)+也(ヤ⇒シ)」の形声。旗をなびかせて人々を指揮して動かし、諸事をおこなうことを施シという。また、施シの意味の一つである「ほどこす」(必要な処置をとる)意から「めぐみ与える」意が派生した。[説文解字]は「旗の貌(さま)。㫃オン・エン(はた)に従い也シの聲(声)。発音は式支切(シ)」とする。
意味 (1)旗がなびく。(2)実行する。おこなう。ゆきわたらせる。しく。「実施ジッシ」「施政方針シセイホウシン」「施工セコウ・シコウ」(工事をおこなう)「施行シコウ」(①実施する。②法律の効力を発生させる)「施術セジュツ」(手術などを実施すること)(3)ほどこす(施す)。必要な処置をとる。「施策シサク」(ほどこすべき対策)「施錠セジョウ」(錠をかける)(4)ほどこす(施す)。めぐみ与える。「布施フセ」(施しめぐむ)「施薬セヤク」(薬をほどこす)「施主セシュ」(①寺や僧に物を施す人。②法事や葬式の当主。③建築主)
絁 シ・あしぎぬ 糸部 shī
解字 「糸(=絹・きぬ)+施の略体シ(ほどこす)」の会意形声。日本の古代では、律令政府の官人が政府から受け取る(ほどこされる)給与は布・綿など現物給与が多かった。絁シは現物給与の絹織物をいう。現物給与は諸国からの現物租税であり、諸国の調(絹・綿・布)のうち、絹織物を絁シとも言った。のちに貨幣経済が発達するにつれて現物納税の絁シは粗悪化し、太い糸で織ったものが出回ったので、あしぎぬ(悪し絹)と呼ばれるようになった。なお、中国では粗い絹の意。

黄絁(きあしぎぬ)(「正倉院宝物」より)
意味 あしぎぬ(絁)。ふとぎぬ(太絹)⇔ 縑かとり。古代日本に存在した絹織物の一種。交換手段・課税対象・給与賜物・官人僧侶の制服などに用いられた。写真の正倉院宝物の黄絁(きあしぎぬ)は、染色に刈安が用いられている。
髢 テイ・かもじ 髟部かみがしら dí
解字 「髟(かみ)+也(ヤ⇒テイ)」の形声。婦人の髪に加えて長くするそえ髪を髢テイ(かもじ)という。髢(かもじ)とは、髪を結うときに地毛の足りない部分を補うための添え髪や義髪のこと。髪文字とも呼ばれる。
意味 かもじ(髢)。髪文字かもじとも書く。(1)長い髪。女房詞の髪(2)婦人の髪に加えて長くする髪。そえがみ。いれがみ。「髢屋かもじや」(かもじの材料を買い取って、かもじを作ってうる店)。「髢草かもじぐさ」(イネ科の多年草。子供がこの葉で人形のかもじを作って遊ぶのでこの名があるという)
它タと融合した字
他 タ・ほか イ部 tā

解字 它タはヘビの意味であるが、金文の時代から它タの音を借りて「ほか」の意味にもちいる使い方があった[常用字解]。篆文は「イ(人)+它タ(ほか)」で、人をつけて「ほかの人」および「ほか」の意味を表した。隷書レイショ(漢代)から它タの代わりに也が使われた他タが現れた。この場合、也はタの発音で使われ現在に至っている。
意味 (1)自分以外の人。血族以外の人。「他人タニン」「他家タケ」(2)ほか(他)。ほかの。べつの。「他国タコク」「他意タイ」(他の意味)「他郷タキョウ」(故郷を離れた土地)「他山の石タザンのいし」(他の山から出る粗末な石でも自分の宝石を磨くのに役立つ。粗末なものでも自分を磨く助けとなる)
匜 イ・ひさげ・みずさし 匚部 yí

「青銅匜イ」
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1805622198676089814&wfr=spider&for=pc
解字 金文は上にヘビ(它)、下に皿ベイ(液体をいれる容器)を描いたかたち。この組み合わせは水をいれて注ぐ容器である匜イを、注ぎ口の側から眺めたかたち。下の皿は注ぎ口のくぼみと容器の足を意味し、上のヘビは向かい側の取っ手の形がヘビのように細長いことを表している。このふたつの図形で水差しを表した。なお、水差しによっては取っ手が龍に見えるものもある。篆文から「匚+也」の匜イに変化した。匜イは西周中晚期に出現し、春秋時代から戦国期を中心に用いられた。多くは四足を持つ。発音のイは、ヤからの転音。
意味 (1)ひさげ。みずさし。水などを入れて注ぐのにもちいる取っ手と流し口のついた容器。「匜水イスイ」(ひさげの水)「洗匜センイ」(ひさげの水を注いで洗う)「盤匜バンイ」(たらいとみずさし。古代の貴族の宴席の折、盤(たらい)と匜イを机上に置いておき、来客は盤の上で匜の水を注いでもらい手を洗った)
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
也 ヤ・なり・や 乚部 yě
也をヘビと説明する字書
①


①は「角川新字源」(2017年)の也ヤ。「象形。へびの形にかたどる。もと它タと同じ」と書かれている。②は「古代文字字典 甲骨・金文編」(城南山人編・マール社・2003年)の也ヤ(右から2番目)。金文篇の也には它タが載っている。以上、例をあげたようにかなりの字書が「也は金文で它タ(蛇)であり、元は蛇のかたちから変化した」としている。
しかし、最近の成果を取り込んでいるネットの字典は也をヘビとは見ていない。下の変遷図はネットの「漢典(中国)の也(の字源・字形)」および「漢字古今字資料庫(台湾)の也」を参考にして描いたものである。下の它タ(ヘビ)とくらべると違いが分かる。


上は也ヤ、下は它タ
金文の也は、上掲の「角川新字源」などと形が異なっている。この字は春秋中期の欒書缶ランショフに描かれた「也」で、口の下にヘビのような曲線がついている。今回、金文の掲載されている器の写真と、そこに掲載されている文字を確認でき、也はヘビでなく助辞であることが分かった。
欒書缶(ランショフ)というのは、欒書ランショ(人名)の子孫が先祖を祭るために作った蓋つきの器で、この器の外側と蓋の裏に文字が金で象嵌されている。「也」の字があるのは器体の外側で以下のようになっている。
①



春秋中期の欒書缶(らんしょふ)に描かれた「也」
https://x.com/seidouki_bot/status/791966063407697921
①は欒書缶(らんしょふ)の器体、②は描かれた文字列。③は文字列の拓墨。
「也」の字は書かれている文字列②③の左から2行目、下から4番目にある。この行は上から「余畜孫書也擇其吉金」(金は次の行の最初の字)と釈されており、「余(われ)は畜(孝)孫[孝孫は人名]の書を也(以)って其の吉金(金象嵌に用いる良質の金)を擇(えら)び」以下は次の行「以て鋳缶(鋳造した缶)を作る」となる。(「百度百科の「戦国欒書缶」による)
https://baike.baidu.com/item/%E6%88%98%E5%9B%BD%E6%A0%BE%E4%B9%A6%E7%BC%B6/10770458
ここで注目すべきは、也が「以って」と釈されていることである。しかし、左3行目の上から2番目の字も、字体が異なるものの「以って」と釈されているが理由は分らない。日本の字書には「也」の意味に「以って」はないが、意味が蛇でなく接続詞的に訳されていることがわかる。
解字 金文は口の下にまがりくねった線を描いて、口から語気がでている形。金文では「以って・用いて」の意味になっている。篆文は[説文解字]が「女陰也」とおかしな解字をしている。この字は隷書(漢代)をへて「也」の形となり、意味も断定の助字「なり」や、感嘆の助字「や」などとして用いられる。
意味 (1)なり(也)。~である。断定の語気をあらわす助字。(2)や(也)。か(也)。文中や文末にあって語の勢いを強めたり、感嘆・疑問・反語の語気を示す助字。(3)や(也)。提示。~は。~というものは。(4)詠嘆。~のことよ。文末に置かれ詠嘆の語気を表す。(5)よびかけ。~よ。(6)「也已のみ」(7)「也哉なるかな」(だなあ)(8)反語。「也や」(ならん也(や)
イメージ
「助字」(也)
「形声字」(地・池・馳・弛・施・絁・髢)
「它タと融合した字」(他・匜)
音の変化 ヤ:也 シ:施・弛・絁 タ:他 チ:地・池・馳 テイ:髢 イ:匜
形声字
地 チ・ジ 土部 dì
解字 「土(つち)+也(ヤ⇒チ)」の形声。天に対し、その下にひろがる土を地チという。土地・地面の意から、ところ・場所の意味などに用いる。
意味 (1)つち。とち。「土地トチ」「地面ジメン」「陸地リクチ」(2)ところ。場所。「地域チイキ」(3)その土地の。「地酒ジざけ」「土産みやげ」(4)身分。位置。「地位チイ」(5)本来持っている性質。「素地ソジ」
池 チ・いけ 氵部 chí
解字 「氵(水)+也(ヤ⇒チ)」の形声。長く水を引いた通水路や城の堀池を池チという。のち、庭の池などをいう。[説文解字注]は「水を畜(ため)るを陂ハ(つつみ)と曰(い)い、地を穿(うが)ち水を通すを池チと曰(い)う」とする。
意味 (1)ほり。みぞ。「城池ジョウチ」(城のほり)「金城湯池キンジョウトウチ」(熱湯をたたえた堀と金属の城。守りが固くせめおとすことができない城)(2)いけ(池)。地を掘って水をためたところ。「貯水池チョスイチ」「池塘チトウ」(池の堤)(3)硯などの水をためておく所。「硯池ケンチ」「電池デンチ」
馳 チ・はせる 馬部 chí
解字 「馬(うま)+也(ヤ⇒チ)」の形声。馬が疾走することを馳チという。[説文解字]は「大駆ク(勢いよく走る)也。馬に従い也チの聲(声)」とする。
意味 はせる(馳せる)。かける。速くはしる。「馳名チメイ」(名声がひろまること)「駆馳クチ」(はせかける。駆も馳も、はせる意)「馳走チソウ」(食事の準備のためにかけまわる:もてなしの立派な料理)「御馳走ゴチソウ」(①豪華な食事、②心をこめたもてなし)
弛 シ・チ・ゆるむ・たるむ・たゆむ 弓部 chí
解字 「弓(ゆみ)+也(ヤ⇒シ)」の会意。弓の弦をはずして弓がのびたさまを弛シという。
意味 ゆるむ(弛む)。たるむ(弛む)。「弛緩シカン」(ゆるむこと。弛も緩も、ゆるむ意)「弛張シチョウ」(緩むことと張ること)
施 シ・セ・ほどこす 方部 shī
解字 「方𠂉(旗の略体)+也(ヤ⇒シ)」の形声。旗をなびかせて人々を指揮して動かし、諸事をおこなうことを施シという。また、施シの意味の一つである「ほどこす」(必要な処置をとる)意から「めぐみ与える」意が派生した。[説文解字]は「旗の貌(さま)。㫃オン・エン(はた)に従い也シの聲(声)。発音は式支切(シ)」とする。
意味 (1)旗がなびく。(2)実行する。おこなう。ゆきわたらせる。しく。「実施ジッシ」「施政方針シセイホウシン」「施工セコウ・シコウ」(工事をおこなう)「施行シコウ」(①実施する。②法律の効力を発生させる)「施術セジュツ」(手術などを実施すること)(3)ほどこす(施す)。必要な処置をとる。「施策シサク」(ほどこすべき対策)「施錠セジョウ」(錠をかける)(4)ほどこす(施す)。めぐみ与える。「布施フセ」(施しめぐむ)「施薬セヤク」(薬をほどこす)「施主セシュ」(①寺や僧に物を施す人。②法事や葬式の当主。③建築主)
絁 シ・あしぎぬ 糸部 shī
解字 「糸(=絹・きぬ)+施の略体シ(ほどこす)」の会意形声。日本の古代では、律令政府の官人が政府から受け取る(ほどこされる)給与は布・綿など現物給与が多かった。絁シは現物給与の絹織物をいう。現物給与は諸国からの現物租税であり、諸国の調(絹・綿・布)のうち、絹織物を絁シとも言った。のちに貨幣経済が発達するにつれて現物納税の絁シは粗悪化し、太い糸で織ったものが出回ったので、あしぎぬ(悪し絹)と呼ばれるようになった。なお、中国では粗い絹の意。

黄絁(きあしぎぬ)(「正倉院宝物」より)
意味 あしぎぬ(絁)。ふとぎぬ(太絹)⇔ 縑かとり。古代日本に存在した絹織物の一種。交換手段・課税対象・給与賜物・官人僧侶の制服などに用いられた。写真の正倉院宝物の黄絁(きあしぎぬ)は、染色に刈安が用いられている。
髢 テイ・かもじ 髟部かみがしら dí
解字 「髟(かみ)+也(ヤ⇒テイ)」の形声。婦人の髪に加えて長くするそえ髪を髢テイ(かもじ)という。髢(かもじ)とは、髪を結うときに地毛の足りない部分を補うための添え髪や義髪のこと。髪文字とも呼ばれる。
意味 かもじ(髢)。髪文字かもじとも書く。(1)長い髪。女房詞の髪(2)婦人の髪に加えて長くする髪。そえがみ。いれがみ。「髢屋かもじや」(かもじの材料を買い取って、かもじを作ってうる店)。「髢草かもじぐさ」(イネ科の多年草。子供がこの葉で人形のかもじを作って遊ぶのでこの名があるという)
它タと融合した字
他 タ・ほか イ部 tā

解字 它タはヘビの意味であるが、金文の時代から它タの音を借りて「ほか」の意味にもちいる使い方があった[常用字解]。篆文は「イ(人)+它タ(ほか)」で、人をつけて「ほかの人」および「ほか」の意味を表した。隷書レイショ(漢代)から它タの代わりに也が使われた他タが現れた。この場合、也はタの発音で使われ現在に至っている。
意味 (1)自分以外の人。血族以外の人。「他人タニン」「他家タケ」(2)ほか(他)。ほかの。べつの。「他国タコク」「他意タイ」(他の意味)「他郷タキョウ」(故郷を離れた土地)「他山の石タザンのいし」(他の山から出る粗末な石でも自分の宝石を磨くのに役立つ。粗末なものでも自分を磨く助けとなる)
匜 イ・ひさげ・みずさし 匚部 yí


https://baijiahao.baidu.com/s?id=1805622198676089814&wfr=spider&for=pc
解字 金文は上にヘビ(它)、下に皿ベイ(液体をいれる容器)を描いたかたち。この組み合わせは水をいれて注ぐ容器である匜イを、注ぎ口の側から眺めたかたち。下の皿は注ぎ口のくぼみと容器の足を意味し、上のヘビは向かい側の取っ手の形がヘビのように細長いことを表している。このふたつの図形で水差しを表した。なお、水差しによっては取っ手が龍に見えるものもある。篆文から「匚+也」の匜イに変化した。匜イは西周中晚期に出現し、春秋時代から戦国期を中心に用いられた。多くは四足を持つ。発音のイは、ヤからの転音。
意味 (1)ひさげ。みずさし。水などを入れて注ぐのにもちいる取っ手と流し口のついた容器。「匜水イスイ」(ひさげの水)「洗匜センイ」(ひさげの水を注いで洗う)「盤匜バンイ」(たらいとみずさし。古代の貴族の宴席の折、盤(たらい)と匜イを机上に置いておき、来客は盤の上で匜の水を注いでもらい手を洗った)
<紫色は常用漢字>
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問い合わせフォームがなかったのでこちらのコメント欄にて失礼いたします。
私は「漢検1級の勉強法」というHPを運営しております、めぐみと申します。
http://kanken1.com/
自分のHPでも山本さんの音符字典を紹介させていただいているのですが、現在アマゾンでは欠品となってしまっています。
中古では扱っているのですが、それが1万円~3万円もする状態になっています。
そこでご質問というかご相談と言いますか…1人でも多くの学習者さんがこの素晴らしい字典を適正価格で入手できるよう、増刷?再販?(言い方が分からなくてすみません)されることを強く望んでおります。
本当に私自身、この音符字典がなければ漢検1級に一発合格するなど出来なかったと思っていますので、感謝するとともに、もっとたくさんの人にも役立てていただけたらなと願っています。
それでは突然のコメント失礼いたしました。
さっそくのお返事ありがとうございます!
やはり売り切れですよね。
今後、増刷になることを願いっております。