漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

漢字の由来 参考文献を教えて下さい (くみ)

2022年07月12日 | 漢字の音符
 「漢字の由来についてとてもわかり易かったので、どの参考文献を使っているか教えていただきたいです。宜しくおねがいします。」(2018年5月17日の「特殊化した部首」へのコメント。2022.7.4投稿)

 コメントありがとうございます。漢字の由来といいますと「字源」になると思います。私が読んだ本のなかで、分かりやすかったのは以下の本です。
加藤道理『字源物語 漢字が語る人間の文化』(明治書院 平成11年)
加藤道理『続 字源物語』(明治書院 平成13年)
 甲骨文字や金文および篆文テンブンの基本的な文字の字形を示したうえで分かりやすく解説しており、漢字の由来を知るうえで参考となる本です。お近くの図書館にもあると思いますので、一度ご覧ください。

 次にご参考までに私の字源研究方法と参考文献をお知らせします。
私の字源研究方法
 漢字は大きく分けると、(1)基本となる核文字(音符ともいいます)と、(2)そこに部首がついた複合文字から成り立っていると考えます。核となる文字は、6,500字収録の山本康喬編『漢字音符字典』で、900字前後とされています。私のやり方は、(1)の核文字(音符)を古代文字まで遡って成り立ちを探り、基本的意味を把握したうえで、『漢字音符字典』で音符がどんな形で部首と結びついて複合文字が成立しているか確認します。そして特定の音符と部首の結合によって何故この文字が成立したかを探るものです。

具体的には以下の段階を踏んでゆきます。
(1)漢字の古い字形の変遷をたどる。
 漢字の由来を解き明かすには、元の漢字(特に音符)がどんな形をしていたかを知る必要があります。というのも現在の漢字である楷書体は、発生当初の漢字と異なった形をしているものが多いからです。
 私が漢字の古い形に興味を持つようになった十数年前は、城南山人編『古代文字辞典 甲骨・金文編』(マール社 2002年刊)を用いて調べていました。この本は春秋戦国時代の小篆も一緒に付いていたので便利でした。

 しかし、最近はネット上に充実した内容のサイトがあり、これらを使うと短時間で簡単に調べられるようになりました。主なサイトは以下の二つです。
①「漢典」  https:// www.zdic.net
 中国語(簡体字)のサイトです。検索窓に調べる漢字1字を入れて検索し、出た画面で「字源字形」の項目をクリックすると、古文字の変遷が一覧できます。
 検索窓への漢字入力は日本語入力で可能です。説明は簡体字ですが、字形だけを知るのであれば十分利用できます。

②「漢字古今字資料庫」  https:// xiaoxue.iis.sinica.edu.tw/ccdb
 繁体字のサイト(台湾)です。検索窓の字形欄に調べる漢字1字をいれて検索し、出た画面でさらに「字形演変」をクリックすると、古文字の変遷が一覧できます。漢字入力は日本語入力で可能です。説明は繁体字です。

③以上二つのサイトでは漢代以降の隷書レイショと楷書の変遷が十分に網羅されていませんので『新書道字典』(二玄社)で補っています。書道字典はたくさんありますが、字形変遷だけでしたら、大部の字典は必要ありません。なお『角川書道字典』は、非常に充実していますが、収録文字が白黒逆になっています。つまり、拓本そのままの字体です。この字体が好みの方はいいと思いますが、出典の文字も白黒逆ですので読みにくいところもあります。

(2)古い字形を解釈する。
 ここからが大問題です。古い字形は専門家の解釈を参考にしないと解けません。日本で字形の由来を研究した白川静氏(1910~2006)は『字統』(平凡社)で、中国最古の字源字典である『説文解字』を引用しつつ、甲骨文や金文研究の成果を加え、多くの文字に独自の見解を付け加えました。『常用字解』(平凡社)はその常用漢字版です。また、藤堂明保氏(1915~1985)は『学研 漢和大字典』で漢字の上古音(東周~秦漢代)を復元し、発音の類似から字源を分析し、大きな成果をあげました。『漢字源』(学研プラス)は、その後継書です。
 しかし、白川静氏の説は由来を呪術的側面に結び付けすぎる傾向があること、藤堂明保氏の説は発音を重視しすぎて個々の字形についての考察が弱いこと、などが指摘されています。

 私も白川・藤堂両氏の著作から多くを学びましたが、2011年に刊行された落合淳思氏の『甲骨文字小字典』(筑摩書房)を読んで、甲骨文字を字源とする解釈が、現代字まで通じるものが非常に多いことに感銘をうけました。その後、2016年に落合氏は甲骨文字のほとんどを収録した『甲骨文字辞典』(朋友書店)を刊行しましたので、以後はこちらを使用しています。
 また、落合氏は今年(2022年3月)小学校六年生までのすべての教育漢字1026字を字形史として表示した『漢字字形史字典 教育漢字対応版』(東方書店)を出版しました。この本も参考文献として利用しています。

 そのほか『角川 新字源』(角川書店)は、2017年に改訂新版を発行し、さらに充実した内容となりました。字源の説明は簡潔にして要領を得ています。しかし深い説明はしていません。字源だけでなく複合文字が会意文字か形声文字を判断するときの参考にも大いに役立てています。

 中国の本では、谷衍奎著『漢字源流字典』(華夏出版社 2003年)が、各文字ごとに古文字の変遷を掲載し、簡潔で適切な字源解説をしており参考になります。ただし、簡体字ですので、その読解力が必要となります。

  以上、私の個人的な方法を述べさせていただきました。参考になれば幸いです。
ご質問のある方や、このほかの参考文献を使っておられる方は、コメント欄に投稿ください。








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