漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「列レツ」<つらなる> と 「烈レツ」「裂レツ」「冽レツ」「洌レツ」「例レイ」

2024年11月10日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 レツ・つらねる・つらなる 刂部 liè

解字 篆文は「刂(刀)+毛髪のある頭骨(発音はレツ)」の会意形声。刀で断首した毛髪のある頭骨を、墓に並べること。中国古代王朝の殷代の墓には断首した頭骨を並べて悪邪を祓(はら)う呪禁(まじない)があった。現代字は毛髪のある頭骨⇒歹に変化した「歹+刂」の列レツになった。ならべる意から、つらねる・つらなる意となる(白川静「常用字解」より)。また、頭骨を断首することから、首を「きる」意味があり、音符の「イメージ」に出てくる。
意味 (1)つらねる(列ねる)。つらなる(列なる)。れつ。「行列ギョウレツ」「列島レットウ」(列をなして連なった島)「列車レッシャ」(2)ならべる。ならんだ順序。「陳列チンレツ」「序列ジョレツ」(3)ならびに参加する。「列席レッセキ

イメージ  
 「つらなる」(列・例・烈・冽・洌)
 刀で「きる」(裂)
音の変化  レツ:列・烈・冽・洌・裂  レイ:例

つらなる
 レイ・たとえる  イ部 lì
解字 「イ(人)+列(つらなる)」の会意形声。同じ列につらなることができる人を例レイといい、似たもの・仲間・類(たぐい)の意となる。また、たとえる・ならわしの意となる。
意味 (1)似たものの仲間。たぐい。「類例ルイレイ」「例外レイガイ」(2)たとえる(例える)。例をあげる。「例文レイブン」「事例ジレイ」(3)いつも。ならわし。しきたり。「例会レイカイ」「例祭レイサイ」「慣例カンレイ」(4)きまり。さだめ。「条例ジョウレイ
 レツ・はげしい  灬部 liè
解字 「灬(火)+列(つらなる)」の会意形声。火がつらなり激しく燃えること。転じて、はげしい・きびしい意となる。
意味 (1)はげしい(烈しい)。きびしい。あらい。「烈火レッカ」(激しく燃える火)「烈風レップウ」「熱烈ネツレツ」「猛烈モウレツ」(2)気性が強く正しい。「烈士レッシ」(気性が強く節義を守る男子)「烈女レツジョ」(気性が強く節操を守る女性)  
 レツ  冫部 liè
解字 「冫(こおり)+列(つらなる)」の会意形声。氷がつらなる形で、さむい・つめたい意。
意味 さむい。つめたい。「冽冽レツレツ」(寒さ・冷たさのはげしいさま)「秋風シュウフウ冽冽」(秋風が寒々と吹く)「凜冽リンレツ」(寒気のきびしいさま)「清冽セイレツ」(水が清く冷たいこと)※「清セイレツ」との違いに注意。
 レツ・きよい  氵部 liè
解字 「氵(水)+列(つらなる)」の会意形声。きれいな水がつらなること。きよらかな意となる。また、酒が澄んでいること。
意味 きよい(洌い)。「清洌セイレツ」(水が清らかなこと)※「清セイレツ」と違いに注意。「芳洌ホウレツ」(香りがよく澄んでいる酒)

きる
 レツ・さく・さける  衣部 liè・liě
解字 「衣(ころも)+列(きる)」の会意形声。衣の布地を切ること。裁ち切る意。転じて、ひきさく意となる。
意味 (1)さく(裂く)。ひきさく。さける(裂ける)。「決裂ケツレツ」(①切れ裂けること。②会談・交渉などが物別れになること)「亀裂キレツ」(亀の甲羅のような形にひびが入る)「裂傷レッショウ」(皮膚などの表面が裂けた傷)(2)ばらばらに分かれる。「分裂ブンレツ」「破裂ハレツ」「炸裂サクレツ」(爆弾などが破裂すること)(3)裁ち切る。「裂地きれじ」(裁断した織物。表装等に用いる貴重な織物)「名物裂めいぶつぎれ」(中国渡来の織物の中で特に珍重された裂地。茶器の仕覆シフク(包み袋)や軸装・袱紗フクサなどに用いられる)

名物裂(「名物裂文様」(家庭画報.comより)」
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「咢ガク」と「愕ガク」「諤ガク」「顎ガク」「鍔ガク」「鰐ガク」「萼ガク」「鄂ガク」「鶚ガク」

2024年11月08日 | 漢字の音符
咢[噩] ガク  口部 è
  
解字 金文第一字(上)は、「口4つが四方に配置され、中央の人に横線が入った形」。第二字は人の首の付近に曲がった横線が入った形」。成り立ちの意味は不明だが、金文で国名と人名に用いられている。楚帛ソハク(春秋戦国)は、口四つに十字が配置された形だが、篆文[説文解字]は「口口+屰ギャク」になり、現代字は咢ガクに変化した。一方、楚帛の「口四つに十字形」は、楷書で噩ガクに変化している。両字は異体字で同字とされている。
 字の初形の意味は不明だが、地名・人名以外に、愕ガクの原字である「おどろく」。そのほか「わるい」「やかましい・さわがしい」意がある。また、音符字を見ると「口を大きくあける」イメージで説明できる字が多い。これは「口口+屰(逆向き)」で、口を広げる意味に解したものと思われる。
意味 (1)おどろく。おそろしい。「咢然ガクゼン」(=愕然)(2)わるい。不吉だ。「噩音ガクオン」(訃報)「噩報ガクホウ」(凶報)(3)直言する。「咢咢ガクガク」(直言するさま)

イメージ 
 「おどろく」
(咢・愕) 
 意味(3)の「直言する」(諤)
 「口を大きくあける」(顎・鰐・萼・鍔)
 「形声字」(鄂・鶚)
音の変化  ガク:咢・愕・諤・顎・鰐・萼・鍔・鄂・鶚

おどろく
 ガク・おどろく  忄部 è
解字 「忄(心)+咢(おどろく)」の会意形声。咢には、もともとおどろく意があり、忄(心)をつけておどろく意を明確にした。
意味 おどろく(愕く)。あわてる。「驚愕キョウガク」(非常に驚くこと)「愕然ガクゼン」(ひどくおどろくさま)

直言する
 ガク 言部 è
解字 「言(はなす)+咢(直言する)」の会意形声。おそれず直言する。
意味 おそれず直言する。遠慮なく言う。「諤々ガクガク」(直言する)「侃々諤々カンカンガクガク」(遠慮することなく議論する)

口を大きくあける
 ガク・わに  魚部 è
解字 「魚(さかな)+咢(口を大きくあける)」の会意形声。口を大きくあけて獲物におそいかかる魚(水にすむ動物)のワニ。

ワニ広島市安佐山動物園のブログより)
意味 わに(鰐)。ワニ科の爬虫類。熱帯の川や湖にすむ鋭い歯をもつ肉食性の動物。「鰐口わにぐち」(口の形が横にひろいもの。がまぐち。また、社殿や仏堂につるす扁円の音響具)
 ガク・うてな  艸部 è
解字 「艸(くさ)+咢(口を大きくあける)」の会意形声。口を大きくあけて花を包むように外側にある花のガク。

オカメザクラの萼筒と萼片(「趣味の園芸・オカメザクラ」より)
意味 うてな(萼)。花のがく。花の外側にあって花を保護し支えているもの。花びら(花弁)を下方で包んで支える器官。「花萼カガク」「萼片ガクヘン」「萼筒ガクつつ
 ガク・あご  頁部 è
解字 「頁(かお)+咢(口を大きくあける)」の会意形声。顔の中の口を大きくあける部分である「あご」。
意味 (1)ほお骨の張った顔。(2)[国]あご(顎)。「上顎うわあご」「下顎カガク」(したあご)
 ガク・つば  金部 è
解字 「金(金属)+咢(口をあける)」の会意形声。口があいていて刀身を通す金属製のつば。刀の柄(つか)と刀身の間にはめる金具で、柄を持つ手を保護する。

鍔(つば)(「名古屋刀剣博物館・刀剣ブログ」より)
意味  (1)[国]つば(鍔)。刀のつば。「鍔迫り合い」(相手の刀を鍔で受けて押しあうこと)「金鍔キンツバ」(金で装飾した鍔。また、鍔の形をした菓子)(2)中国では、刀の刃や、刀のみね、の意味で使われる。
形声字
 ガク  阝こざと è
解字 「阝(=邑。くに・むら)+咢(ガク)」の形声。ガクという名の邑(くに・むら)をいう。
意味 (1)殷代の国名。今の河南省沁陽市北西にあった。(2)地名。春秋時代の楚の地名。「鄂州ガクシュウ」(今の湖北省鄂州市)「鄂省ガクショウ」(湖北省の別称)(3)直言する。「鄂鄂ガクガク」(①意見をのべて議論する。=諤諤、②さわがしいさま)
 ガク・みさご  鳥部 è
解字 「鳥(とり)+咢(ガク)」の形声。ガクという名の鳥で鶚(みさご)をいう。
ミサゴ(鶚)(「ウィキペディア・鶚」より)
意味 (1)みさご(鶚)。タカ科の大形の鳥。水辺にすみ、急降下して魚を捕らえる。うおたか(魚鷹)。「鶚視ガクシ」(鋭くみつめる)「鷙鳥シチョウ(猛禽の鳥)は百を累(かさ)ぬるも、一鶚ガクに如かず(後漢書・禰衡デイコウ伝)」(猛禽の鷙鳥を百羽集めても一羽の鶚にかなわない)(2)推薦する。「鶚書ガクショ」(人を推薦する文書。鷙鳥よりも、はるかにすぐれた鶚のような人を推薦する意)「鶚薦ガクセン」(推薦文)「鶚表ガクヒョウ」(推薦する上書)
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「象ショウ・ゾウ」<ぞう>「像ゾウ」「橡ゾウ」と「為イ」<象にさせる>「偽ギ」「譌カ」

2024年11月06日 | 漢字の音符
 改訂しました。
 ショウ・ゾウ・かたち・かたどる  豕部 xiàng  

解字 長い鼻をもつゾウの姿を描いた象形。甲骨文字と金文は、象の長い鼻を描いている。篆文は鼻が人の前屈かがみ姿に似た形になり、現代字はその部分がクに変化した象になった。後漢の[説文解字]は「南越(中国南部)の大獣なり。長鼻、牙あり」と説明している。また、本来の意味と関係なく発音だけを借りる借音シャクオンの用法で、象ショウの発音が「かたち」や「かたどる」意味で用いられる。
意味 (1)ぞう(象)。ゾウ科の哺乳動物。「象牙ゾウゲ」「象箸ゾウチョ」(象牙の箸はし)(2)かたち(象)。かたどる(象る)。すがた。ようす。なぞらえる。「象形文字ショウケイモジ」(物の形から生まれた文字)「現象ゲンショウ」(現れるすがた)「対象タイショウ」(①人の意識が向けられるもの。②目標となるもの)「象徴ショウチョウ」(シンボル)

イメージ  
 「ぞう」
(象・橡)
  意味②の「すがた・かたち」(像)
音の変化  ショウ・ゾウ:象・像・橡

ぞう
 ショウ・ゾウ・くぬぎ・とち  木部 xiàng
解字 「木(き)+象(ぞう)」の会意形声。樹皮が象の皮のような木。クヌギやトチの木をいう。

クヌギの樹皮(「庭園図鑑」より) 

トチの樹皮(「庭園図鑑」より)
意味 (1)くぬぎ(橡)。写真上はその樹皮。櫟レキとも書く。(2)つるばみ(橡)。くぬぎ(橡)の実(どんぐり)を原料とする植物染料の一種。黒染め色。(3)[国]とち(橡)の木。写真下はその樹皮。栃(とち)は国字。

すがた・かたち
 ゾウ・かたち・かたどる  イ部 xiàng
解字 「イ(人)+象(すがた・かたち)」の会意形声。人や物のすがた・かたち。また転じて、かたどる・似る意味になる。
意味 (1)人や物のすがた・かたち(像)。「映像エイゾウ」(映した人や物の像)「想像ゾウゾウ」(思い浮かべた人や物の像)「肖像ショウゾウ」(人物の絵・写真・彫刻など)(2)本物の人物や事物になぞらえて作ったもの。かたどる(像る)。「銅像ドウゾウ」「石像セキゾウ」「仏像ブツゾウ」「偶像グウゾウ」(神仏の像。崇拝の対象物)(3)にる。形が似ている。「像似ゾウジ」(似る)



     イ <象にさせる>
[爲] イ・なす・する・ため・なる  灬部れっか wéi・wèi

解字 甲骨文から旧字体まで、「手のかたち+象(ぞう)」の会意。甲骨文は手が左につき、金文は向きが変わった手がつき篆文以降は上につく。象の鼻先に人の手をくわえ象を使役する形で、土木工事などの工作をすることをいう。旧字で爲、新字体で為に変化した。
意味 (1)なす(為す)。する。行なう。「行為コウイ」「人為ジンイ」「無為ムイ」(自然のままで作為がないこと)「有為ウイ」([仏]因縁によって生じたこの世の一切の現象)「為替かわせ」(ひきかえ。交換)(2)ため(為)。ために。(3)なる(為る)。~となる。

イメージ  
 「象にさせる」
(為・偽・譌)
音の変化  イ:為  カ:譌  ギ:偽

象にさせる
 ギ・いつわる・にせ  イ部 wěi
解字 旧字は僞で「イ(人)+爲(象にさせる)」の会意形声。象にさせたことを人がしたようにいつわること。新字体は偽に変化。後漢の[説文解字]は「詐(いつわ)る也(なり)。人に従い爲の聲(声)」とする。発音はイ⇒ギに変化した。
意味 (1)いつわる(偽る)。だます。「偽造ギゾウ」「偽名ギメイ」「偽証ギショウ」「虚偽キョギ」 (2)にせ(偽)。にせもの。「偽書ギショ」「真偽シンギ
譌[訛] カ・いつわる・なまる  言部 é
解字 「言(ことば)+爲(=偽(僞)の略体。いつわる)」の会意形声。いつわる言葉。訛(あやまる。いつわる。なまる)の異体字。従って発音はカ。
意味 (1)いつわる(譌る)。いつわり。うそをつく。「譌言カゲン」(いつわりごと)(2)あやまる。まちがえる。「譌字カジ」(誤った字)「譌雑カザツ」(あやまりみだれる)(3)なまる(譌る)。なまり。(=訛)「譌音カオン」(方言)
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「旁ボウ」<かたわら・ひろがる>と「傍ボウ」「榜ボウ」「謗ボウ」「牓ボウ」「膀ボウ」「蒡ボウ」「磅ボウ」「滂ボウ」

2024年11月04日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
 ボウ・ホウ・かたわら・つくり  方部 páng・bàng

解字 甲骨文と金文は「凡ボン・ハン+方(方向)」の会意形声。凡は舟などの形であるが、ここでの意味は不明。方は方角・方向の意で発音も兼ねる。旁はこの他にも多様な字体があるが、甲骨文字の意味は、①地名またはその長。殷に敵対した「旁方」と呼ばれる地名、②祭祀名、となっている[甲骨文字辞典]。金文は[簡明金文詞典]が、①方向、方位、②人名、とする。篆文は方以外の部分が大きく変化した。[説文解字]は「溥(あまねし・ひろい・おおきい)也(なり)。方の聲(声)」とし、意味が変化した。その後の隷書(漢代)以降では、隋の訓詁書の[博雅]は「旁、大也。廣(ひろい)也」とし説文解字と同じ意味だが、543年の[玉篇]は「猶(なお)側ソク(そば・かたわら)也(なり)。一方に非(あら)ず也(なり)」とし、「かたわら」の意味があるとする。しかし、その字体から意味の変化を知るのはむずかしい。
 現代字は旁となったが、意味は篆文以降の、あまねく・ひろい意、および、かたわらの意味があるが、「かたわら・そば」の意は、日本では人をつけた傍ボウが受け持っており、現在、旁の字は、漢字の「つくり(旁)」の意がポピュラーである。
 なお、旁の音符字を点検してみると、「かたわら」の意味で解字できるものと、それ以外のものがある。そこで、イメージは「かたわら」とし、それ以外の字は「形声字」として解字した。
意味 (1)あまねく。ひろい。「旁引ボウイン」(広く調べ出す。広く考証する。博引)「博引旁証ハクインボウショウ」(広く引用し広く証拠を示して説明する)(2)かたわら(旁ら)。(=傍ら)(3)つくり(旁)。漢字の右辺の部分。
覚え方 傍の字を参照。傍を、ごろ合わせで覚えておくと、旁も書けて便利。

イメージ 
 「かたわら」
(旁・傍・榜・牓・膀)
 「形声字」(謗・蒡・滂・磅)
音の変化  
  ボウ:旁・傍・榜・牓・膀・謗・蒡・磅  ボウ・ホウ:滂

かたわら
 ボウ・かたわら・はた  イ部 bàng
解字 「イ(人)+旁(かたわら)」の会意形声。かたわらにいる人。転じて「かたわら」の意となる。旁が、あまねく・かたわら両方の意があるので、人をつけて、かたわらの意を明確にした字。
意味 (1)かたわら(傍ら)。はた(傍)。そば(傍)。わき(傍)。「傍線ボウセン」(文字や文章のわきに引く線)「路傍ロボウ」(みちばた)「傍観ボウカン」(かたわらで見る)「傍若無人ボウジャクブジン」(傍らに人無きが若(ごと)し)(2)分かれた。派生した。「傍系ボウケイ」「傍流ボウリュウ」「傍証ボウショウ」(証拠となる傍系の資料。間接の証拠)(3)つくり(傍=旁)  
覚え方 ひと()たつわ(立ワ=冖)ほう()ぼうに観者 (※立の下とワの上は重なる)
 ボウ  木部 bǎng・bàng
解字 「木(いた)+旁(かたわら)」の会意形声。道や建物のかたわらに立てた木製の掲示板。
意味 (1)たてふだ。掲示板。「榜札ボウサツ」(たてふだ)。(2)官吏登用試験の合格者を発表する掲示板。「金榜キンボウ」(金色の紙に書いた合格者の掲示板。金牓とも)「榜元ボウゲン」(官吏登用試験の首席合格者)(2)かかげしめす。「標榜ヒョウボウ」(かかげあらわす)

金榜キンボウ。金色の紙に書いた官吏登用試験合格者の掲示板(「北京孔子廟・国子監博物館の展示」)
 ボウ  片部 bǎng
解字 「片(木の板)+旁(かたわら)」の会意形声。土地の境界(かたわら)に立てた目印の木札。
 牓示石
意味 (1)たてふだ。「牓札ボウサツ」(たてふだ=榜札)(2)境界の表示札。「牓示ボウジ」(木の杙くいや石などで領地の境界を標示したもの)「牓示杙ボウジぐい」(荘園などのさかいぐい)「牓示石ボウジいし」(荘園などの境界石)
 ボウ  月部にく bǎng・páng・pāng
解字 「月(からだ)+旁(かたわら)」の会意形声。月(からだ)の旁(かたわら)にある部分で、片腹、片腕、昆虫などの羽をいう。なお、膀胱ボウコウ(ゆばりぶくろ)には、かたわらの意味はなく形声字である。
意味 (1)わき。わきばら。(2)かたうで。「膀臂ボウヒ」(片腕。助っ人。臂は、うでの意)(3)かたわらに付く羽。「翅膀シボウ」(昆虫などの羽)(4)「膀胱ボウコウ」とは、尿を一時的に溜める袋状の器官(ゆばりぶくろ)に使われる字。下腹部中央に位置する。膀ボウも胱コウも形声字。

形声字
 ボウ・そしる  言部 bàng
解字 「言(いう)+旁(ボウ)」の形声。相手の欠点をあげつらって言うことを謗ボウという。後漢の[説文解字]は「毀(そしる)也(なり)。言に従い旁ボウの聲(声)」とする。
意味 そしる(謗る)。悪口をいう。「謗言ボウゲン」「誹謗ヒボウ」(誹も謗も、そしる意)「誹謗中傷ヒボウチュウショウ」(悪口を言いふらして他人を傷つける)「毀謗キボウ」(人を非難する。毀はこぼつ意)「ザンボウ」(あしざまに言ってそしる)「分謗ブンボウ」(同僚が謗りを受けるのを自分も分かち合う)
 ボウ  艸部 bàng

葉付きの牛蒡
解字 「艸(草)+旁(ボウ)」の形声。ボウという名の草。「牛蒡ゴボウ」に用いる字。
意味 「牛蒡ゴボウ」とは、キク科の二年草。古くは薬草として中国から伝来。日本では根菜として栽培される。牛は草木の大きいものに冠され、蒡ボウのなかでも大きいものを指して言った言葉。「牛蒡子ゴボウシ」(ゴボウの種子を乾燥したもの。民間薬として消炎、解毒、解熱効果がある)
 ボウ・ホウ  氵部 pāng
解字 「氵(みず)+旁(ボウ・ホウ)」の形声。水が盛んに流れたり、雨が盛んに降るさまを滂ボウ・ホウという。[説文解字]は「沛ハイ(雨や水の勢いがよいさま)也(なり)。水に従い旁の聲(声)」とする。
意味 (1)水が盛んに流れたり、雨が盛んに降るさま。「滂湃ホウハイ」(水勢の盛んなさま)「滂沛ホウハイ」(①水の豊かで広い。②雨が盛んに降る。③恩沢が豊か) (2)涙の盛んに流れるさま。「滂沱ボウダの涙」(涙が盛んに流れる)(3)豊かで広い。「滂洋ホウヨウ
 ホウ・ポンド  石部 bàng・páng
解字 「石(いし)+旁(ホウ)」の形声。石が落ちる音を磅ホウという。六朝時代の梁の[玉篇]は「石の聲(声)なり」とし石の崩落する音の形容。また、イギリスの重さの単位であるポンド(pound)をいう。
意味(1)石が落ちる音の形容。また落ちる音が広がる意。「磅磅ホウホウ」(石がぶつかって飛び散る音)「磅唐ホウトウ」(①ひろくはびこる。②音が四方に響きわたる)(2)ポンド(磅)。イギリスの重量の単位(pound)。1ポンドは、453.592グラム。また、貨幣の単位(pound)。
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「兎ト」 <うさぎ> と 「菟ト」「逸イツ」「冤エン」

2024年11月02日 | 漢字の音符
[兔] ト・うさぎ  儿部 


 上は兎、下は免メン
解字 甲骨文はうさぎの形の象形。金文からかなり変形した。篆文第1字は春秋期の字で金文とのつながりがある、篆文第2字は[説文解字]だが、子を分娩する形の免に尻尾をつけた形。旧字は兔となったが、上が刀のうさぎ(ネットででない)もあるのは免の旧字に対応している。新字体は兎となった。旧字と新字体のうさぎの点は尻尾を表している。
意味 (1)うさぎ(兎)。「脱兎ダットの如く」(逃げ出す兎のように)(2)月の異称。月に兎がすむという伝説から。「玉兎ギョクト」(中国古代の伝説で月にすむウサギ。玉は満月の意。臼と杵で薬草をつく(日本では餅をつく)という。転じて、月のたとえ)「金烏玉兎キンウギョクト」(太陽と月。また、日月のたとえ。金烏は太陽にすむ三本足のカラス。転じて太陽のたとえ)

玉兎(兎の餅つき
うさぎの字三種 現代字は、ノが上に着くので「野(ノ)兎」と覚える。兎を含む字は、旧字のクうさぎ(兔)刀(かたな)うさぎ(冤エンに含まれる)がある。

イメージ 
 「うさぎ」
(兎・逸・冤)
 「形声字」(菟)
音の変化  ト:兎・菟  イツ:逸  エン:冤

うさぎ
 イツ・はしる・それる  辶部

解字 篆文は「辵チャク(すすむ)+兔(クうさぎ)」の会意。はしる・のがれる・かくれる・足がはやい等、兎の動くさまをいう。旧字は「辶+兔」となり、新字体で逸となった。新字体では、兔の丶(点)がない。
意味 (1)はしる(逸る)。のがれる。にがす。「逸機イッキ」(機会をのがす)「後逸コウイツ」(後ろにそらす)(2)かくれる。うしなう。「逸史イッシ」(書きもらされた歴史上の事実)(3)それる(逸れる)。そらす(逸らす)。はずれる。「逸脱イツダツ」「見逸(みそ)れる」(うっかり見落とす)「御見逸(おみそ)れしました」(①気付かなかった。②相手を見直した)(4)足がはやい。抜きんでる。「逸材イツザイ」(5)気楽に楽しむ。「逸楽イツラク」「安逸アンイツ」(6)[国]はやる(逸る)。はぐれる(逸れる)。
 エン  冖部
解字 「冖(おおい)+刀うさぎ」の会意。覆いをかぶせられ外にでることができない兎。動き回ってのがれた兎の「逸イツ」に対して、不幸にしてつかまった兎を「冤エン」という。ウ冠の寃エンは異体字。
意味 (1)ぬれぎぬ。無実の罪をうける。「冤罪エンザイ」「冤獄エンゴク」(無実の罪で牢獄につながれる)「雪冤セツエン」(無実の罪を明らかにしてはらす。雪は、すすぐ・ぬぐう意。=雪辱)(2)うらみ。服従を強いられたうらみ。「讐冤シュウエン」(うらみをはらす)「冤家エンカ」(かたきの家)
覚え方 ワ(ナ(わな)にはまった刀うさぎエンザイ。なお、スマホでは「クうさぎ」で表示されている。

形声字
 ト  艸部
解字 「艸(くさ)+兔(ト)」の形声。トという名のつる草の一種である「菟糸トシ」に用いられる。

菟糸トシ(中国ネットから)
意味 (1)「菟糸トシ」は、ねなしかずら。寄生するつる草で、種子は「菟糸子トシシ」という。「菟糸燕麦トシエンバク」(菟糸は糸がついていても織ることができず、燕麦は麦がついていても食べることができない。有名無実の例え。燕麦は主に馬の飼料だった)(2)「菟糸子トシシ」(菟糸トシの成熟した種子を乾燥した漢方薬。用途は強精や強壮薬で、茯菟丸ブクトガンという漢方に配合されている)(3)兔に通じうさぎ。菟[=兎](4)「於菟オト」(虎。楚の方言)「木菟ずく」とはミミズクの古名。古くは「ツク」。フクロウ科の鳥のうち、頭に耳のような羽毛をもつものの総称。 
<紫色は常用漢字>


参考音符
 ザン <ずるくはしこいウサギ>



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする