トシ子さん
最近、質問がないけど?
いや、いっぱいあるんですけど
忙しそうなんで・・
このあいだも塩対応されたし・・
塩対応って(笑)
そんなんしたか?
ま、そんなときもありますがな ^^;
じゃあいいですか?
はいな!
この前の安全パトロールで
現場事務所の外に温度計があったのを見たんですけど
温度ってなんのために計ってるんですか?
ん・・・
それはねえ、よいコンクリートになるかならないかには
温度が大きくかかわってくるから
と言えばいいかな。
じゃあ今日はそれで!
いやあ・・
それを説明するのは・・・
ひょっとして
知らないんですか?
失礼な (-_-)
わかっちゅうけど
かんたんに説明するのがむずかしい。
ということは
本当の意味でわかってないということなんじゃあ・・
うん
そうとも言える・・・
なんでやねん!
てか
なんちゅうか
時間がかかるがよ。
じゃあ別のをいきます?
いや、やる。
おねがいしまーす。
ではまず、
コンクリートが固まるしくみから。
コンクリートはどうして固くなるか
知っちゅう?
ハイ
乾くと固まるんでしょ?
そう
いやちがう。
それは
模範的で優秀なまちがいです。
えーーー
なんですかそれーーー
でも水分が抜けると固くなっていきますよ。
あたし、昔、お父さんの手伝いで
型枠を入れて田んぼのあぜをつくったことがあるから
わかってますもん。
ほー
そりゃすごい。
たしかに
乾いていくのはまちがいない。
でも、だから固まるわけではない。
コンクリートが固まるのは
セメントを構成する化合物が水と反応して
あたらしい化合物になるから。
この化学反応のことを水和反応と呼ぶがよ。
すいわはんのう?
そう
水和反応。
じゃあもっと基本的なことからいこうか。
コンクリートは何と何と何でできる?
えーっと
セメントと水
それと・・・
石
そう。
セメントと水と砂利やね。
ちなみに砂利のことを専門的に言うと骨材っていう。
セメントに水を加えたら
セメントからイオンが溶け出してセメント水和物という結晶ができる。
この結晶がセメントの粒子と粒子のあいだのすきまを充填して固まっていく。
この化学反応を水和反応という。
このときにちゃんと性能を発揮できるかどうか
これに温度が大きくかかわってくるわけやね。
このグラフを見てみ。
コンクリート強度に対する温度の影響
(『コンクリートなんでも小事典』土木学会関西支部編、P.75)
温度が低いと
高い場合に比べて水和反応が進みにくい
だから強度が出にくい。
逆に温度が高いと
水和反応が活発になるので
特に初期の強度が大きくなってるのがわかるよね。
人間の場合を考えてみ。
四季のうちでいつが過ごしやすい?
わたし冬が好き!
ワシゃ夏が好き!
いやいや好きキライじゃなくて
一般的に言うと?
春とか秋ですか?
そうやね。
温度が極端に高かったり低かったりすると暮らしにくい。
ふつうは
直射日光が当たる場所にずーっといたい人はおらんし
寒い風が吹くなかで過ごしたい人もおらん。
コンクリートもそう。
そしたら
夏とか冬には仕事ができんじゃないですか。
いやいや
そんなことしよったら御マンマの食いあげになる。
だから
高温には高温の
低温には低温の
それぞれに応じた施工や養生をせんといかんわけよ。
その目安となる基準が
『コンクリート標準示方書』っていう
いわばコンクリートの教科書みたいな本に載っちゅう。
たとえば・・・
*コンクリートを練り混ぜてから打ち終わるまでの時間は、25℃以下で2時間以内、25℃を超えると1.5時間以内を標準とする。
*打ち込み後の湿潤養生期間の標準は、日平均気温が5℃以上、10℃以上、15℃以上でそれぞれ、9日、7日、5日(普通ポルトランドセメントの場合)
とか
*日平均気温が4℃以下になることが予想されるときは、寒中コンクリートとしての施工を行わなければならない。
その逆として
*日平均気温が25℃を超えることが想定されるときは、暑中コンクリートとして施工を行わなければならない。
などなど
温度に関する基準が決められちゅうがよ。
へーそうなんですね。
ついでにもうひとつ。
肝心なことを教えちょこ。
さっき、あんたは「乾く」って言うたよね。
でも
コンクリートはできるだけ乾燥させないようにする。
これが基本中の基本ながよ。
えー
でも乾きますよ。
そう
だから乾かないように努力する。
特に打ち終わったあとは、適当な温度のもとで湿潤状態に置く必要があるがよ。
しつじゅん・・ですか?
そう
湿って潤う
と書いて湿潤。
特に初期が大事。
乾燥させるとじゅうぶんな強度が出ないし
ひび割れが発生したりする。
今度はこのグラフを見てみ。
(同、P.74)
縦軸が上にいけば行くほどコンクリートのなかの隙間が多くて
横軸が右に行けば行くほど水分が少ない。
つまり
コンクリートを養生するときに
水分をしっかりと与えた場合と
水分を与えずに乾燥させた場合のグラフやね。
乾燥の程度がきつくなるにつれて空隙量が大きくなる。
すきまの多いコンクリートになると
強度が出にくくなって将来的な耐久性にも問題が出るわけよ。
ということで今日のポイント。
コンクリートが本来の性能を発揮するためには
水と温度が重要です。
以上、わかったかな?
最初も言ったように
これについて説明しだしたらむちゃくちゃ時間がかかるきね。
今日はこれぐらいにしておこう。
ハイ
わかりました。
水分をたっぷりとって
お肌にうるおいを。
っていうことですよね。
う、うん。
まあそんなところかな ^^;
・・・・・・・・・
ということで
『トシ子さんの疑問に答える』シリーズその5は、
土木の王道、コンクリートについてとなりました。
ではトシ子さん
次をたのしみにしちゅうぜよ。
(宮内)
参考文献:
『コンクリートなんでも小事典 固まるしくみから、強さの秘密まで』
(土木学会関西支部編、井上普他著、ブルーバックス)
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