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生命の宝庫:コスタリカの挑戦/1 生態系は共有財 法整備し活用

2010-01-05 | 日記
(毎日新聞 2010年1月4日 東京朝刊)
 「いいものを見つけた」。船頭の男性が川岸に立つ樹木を指した。数メートルまで近づき、目を凝らしてやっと分かった。幹と同じ茶色っぽい色をしたハナナガサシオコウモリが13匹、縦に連なっている。体長は4センチほど。こちらの気配を察すると、下に向けた頭を一斉に震わせて威嚇した。
 昨年11月、中米コスタリカの北東部を流れるサラピキ川をボートで下った。幅約30メートル。シロオビミドリツバメが水面すれすれを飛ぶ。川岸の木の根では爬虫(はちゅう)類のバシリスクのオスが頭をもたげ、立派なとさかを誇示している。川に果実を落とすのはホエザルの群れだ。木の上では、アオアシトキが黒い羽を広げ、すぐ下の枝にはグリーンイグアナが寝そべる。
 2時間のクルーズで、数え切れないほどの野生動物に出合った。両岸に子どもの歓声が響く小学校、民家やバナナ園が並ぶ。豊かな生態系は、人々の暮らしのすぐそばで息づいている。
 コスタリカ政府は80年代から森林保護や植林に本格的に取り組み、国土の27%は国立公園や自然保護区として保全している。エコツーリズムは国の主要産業の一つに成長し、欧米の企業と組んだ薬品開発など生物資源の利用にも積極的だ。
 自然保護関連の法整備も進む。94年の憲法改正で環境権が制定され、98年には生物多様性法が成立。動植物や水、空気などの自然資源は国民の共有財産とし、個人や企業の占有を禁じた。同法の成立に尽力したルイス・マルティネス元国会議員は「多様性から得られる価値に、誰もが民主的にアクセスできるようにしたかった」と語る。企業の不利益になると懸念した政治家は強く反発したが、政府や研究機関、先住民、農民、環境団体などの各代表が協議を重ね、成立にこぎ着けた。
 マルティネス氏は語る。「議論を通じて、市民は政治家が思っている以上に身近な自然を誇りに思い、大切にしたいと願っていることが分かった。コスタリカは小国だが、多様性に関する研究や知識は先進国並みだ。国の発展に多様性が重要だと認識している」
  × × ×
 今年は国連が定めた「国際生物多様性年」。10月には名古屋市で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催される。「生物多様性の先進国」として知られるコスタリカの試みを4回にわたり紹介する。【須田桃子】=つづく
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 ■ことば
 ◇コスタリカ
 南北米両大陸をつなぐ細長い地峡地帯に位置する。東西の大洋に挟まれ、中央に数千メートル級の山が連なる。面積は、九州と四国を合わせた程度の5万1100平方キロ。世界の陸地の0・03%に過ぎないが、既知の動植物の4・5%にあたる9万1000種が分布する「生命の宝庫」だ。単位面積あたりに換算した生物種の数は世界1、2位という。軍隊を廃止した非武装平和主義国としても知られる。
http://mainichi.jp/select/world/news/20100104ddm016040005000c.html

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