MSN産経ニュース 2012.3.21 06:49 (1/3ページ)[旅・観光]
米国を代表する観光地であるアリゾナ州の大渓谷、グランドキャニオンで、先住民と開発業者の間で裁判沙汰のトラブルが生じている。5年前に完成した展望橋「スカイウォーク」の運営や付随施設の建設をめぐり、双方が「契約違反だ」「うそつきだ」などと非難の応酬を繰り返し、先住民側が先月、州の裁判所に損害賠償を求める訴えを起こしたのだ。背景には、現地が先住民居住区として米政府から“治外法権”を認められた特殊な区域であることによる、ビジネス感覚の差があるとみられる。グランドキャニオンは誰のものなのか?
特殊区域でビジネス
年間約450万人の観光客が訪れるグランドキャニオンは、1919年に米国の国立公園に指定され、79年には世界遺産にも登録された。
スカイウォークは、グランドキャニオン・ウエストと呼ばれる西方の奥地にあり、一帯は先住民ワラパイ族(約2200人)の居住区(所有地)になっている。ラスベガスの業者が建設主体となり、スカイウォークは2007年3月に2年の歳月と3000万ドル(当時の為替レートでは約35億円)の建設費をかけて完成。橋の床は厚さ10センチの強化ガラスで出来ており、空中散歩の気分が味わえる。橋の先端から崖まで約21メートルあり、谷底までは約1200メートル。歩行料金は1人30ドルで、1日約3000人が訪れ、パワースポットとしても人気があり、橋の先端でプロポーズすることが若者たちの間で流行(はや)っている。
スカイウォークが建設された背景には、ワラパイ族の経済的苦境もあった。ワラパイ族は50%近い失業率や貧困に直面しており、またはグランドキャニオン・ウエストは交通の便が悪く、貴重な収入源の一つであるはずの観光産業でも収益が伸び悩んでいた。このためスカイウォークを名所化することで、観光客の誘致につながると期待された。ただ、特殊区域であることから、一般企業が土地を取得したり、通常のビジネスを行うことはできないため、スカイウォークの運営はワラパイ族が行い、完成から25年間、売り上げの50%を開発業者に渡す契約になっている。
土産店の建設不履行
トラブルは、開発業者が契約にあったレストランや土産店等を建設しないことから生じた。しかし、業者のCEOであるデビッド・ジン氏は「建てようにも電気も水道も未整備では建てようがない。これはワラパイ族の方でやるべきものだ。しかも、ワラパイ族は50%の支払い約束を果たしていない。先住民はうそをつかないのではなかったのか」と憤る。
ワラパイ族の自治評議会は先月、契約不履行で1140万ドル(約9億5000万円)の損害賠償を求める訴えを起こしたが、評議会のキャンディダ・ハンターさん(32)は「本来なら1億ドル要求しても理不尽ではなかったが、パートナー関係を破壊したくなかったので控えめにした」と話す。
スカイウォークの運営は続いているが、裁判の結果によっては先行きは不透明だ。また、ワラパイ族の間でも意見が割れ出し、長老たちからは「グランドキャニオンは先祖が代々眠る聖地であり、そもそもスカイウォークなど建てさせるべきではなかった」(70歳のドロレス・ホンガさん)といった声も噴出している。スカイウォークで「一生に一度」の体験をしたい観光客は、準備を急ぐ必要があるかもしれない。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120321/amr12032106510002-n1.htm
米国を代表する観光地であるアリゾナ州の大渓谷、グランドキャニオンで、先住民と開発業者の間で裁判沙汰のトラブルが生じている。5年前に完成した展望橋「スカイウォーク」の運営や付随施設の建設をめぐり、双方が「契約違反だ」「うそつきだ」などと非難の応酬を繰り返し、先住民側が先月、州の裁判所に損害賠償を求める訴えを起こしたのだ。背景には、現地が先住民居住区として米政府から“治外法権”を認められた特殊な区域であることによる、ビジネス感覚の差があるとみられる。グランドキャニオンは誰のものなのか?
特殊区域でビジネス
年間約450万人の観光客が訪れるグランドキャニオンは、1919年に米国の国立公園に指定され、79年には世界遺産にも登録された。
スカイウォークは、グランドキャニオン・ウエストと呼ばれる西方の奥地にあり、一帯は先住民ワラパイ族(約2200人)の居住区(所有地)になっている。ラスベガスの業者が建設主体となり、スカイウォークは2007年3月に2年の歳月と3000万ドル(当時の為替レートでは約35億円)の建設費をかけて完成。橋の床は厚さ10センチの強化ガラスで出来ており、空中散歩の気分が味わえる。橋の先端から崖まで約21メートルあり、谷底までは約1200メートル。歩行料金は1人30ドルで、1日約3000人が訪れ、パワースポットとしても人気があり、橋の先端でプロポーズすることが若者たちの間で流行(はや)っている。
スカイウォークが建設された背景には、ワラパイ族の経済的苦境もあった。ワラパイ族は50%近い失業率や貧困に直面しており、またはグランドキャニオン・ウエストは交通の便が悪く、貴重な収入源の一つであるはずの観光産業でも収益が伸び悩んでいた。このためスカイウォークを名所化することで、観光客の誘致につながると期待された。ただ、特殊区域であることから、一般企業が土地を取得したり、通常のビジネスを行うことはできないため、スカイウォークの運営はワラパイ族が行い、完成から25年間、売り上げの50%を開発業者に渡す契約になっている。
土産店の建設不履行
トラブルは、開発業者が契約にあったレストランや土産店等を建設しないことから生じた。しかし、業者のCEOであるデビッド・ジン氏は「建てようにも電気も水道も未整備では建てようがない。これはワラパイ族の方でやるべきものだ。しかも、ワラパイ族は50%の支払い約束を果たしていない。先住民はうそをつかないのではなかったのか」と憤る。
ワラパイ族の自治評議会は先月、契約不履行で1140万ドル(約9億5000万円)の損害賠償を求める訴えを起こしたが、評議会のキャンディダ・ハンターさん(32)は「本来なら1億ドル要求しても理不尽ではなかったが、パートナー関係を破壊したくなかったので控えめにした」と話す。
スカイウォークの運営は続いているが、裁判の結果によっては先行きは不透明だ。また、ワラパイ族の間でも意見が割れ出し、長老たちからは「グランドキャニオンは先祖が代々眠る聖地であり、そもそもスカイウォークなど建てさせるべきではなかった」(70歳のドロレス・ホンガさん)といった声も噴出している。スカイウォークで「一生に一度」の体験をしたい観光客は、準備を急ぐ必要があるかもしれない。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120321/amr12032106510002-n1.htm