西日本新聞2017年01月30日 13時35分

たいまつを手に集落を練り歩く人々
クリスマスを迎えたばかりの真夜中に、3千本ものたいまつの行列が現れる-。台湾でそんな壮大な伝統行事があると聞き、昨年12月24、25日、台湾中央部にある南投県信義郷の望郷を訪れた。
亜熱帯と熱帯に位置する台湾だが、標高約千メートルの望郷では、比較的涼しい気候に適したキャベツやブドウの畑が広がっていた。ガイドを長年続ける邱徳祥さんによると、約千人の住民の大半はキリスト教徒のブヌン(布農)民族で、1951年に教会を建てて以降、たいまつ行列を続けているという。その幻想的な雰囲気にひかれ、今では観光客も含めて約3千人が行列に参加している。
イブの夕暮れ時、集落は香ばしいにおいに満ちていた。観光客をもてなす豚の丸焼きが、あちこちの民家の軒先で作られていた。豚の丸焼き2匹分を振る舞ったブドウ農家には100人前後が来場。ほかにも鶏肉や川魚の料理が20皿ほど提供されたが、あっという間に無くなった。食事代はいらず、食べた人がそれぞれの判断で礼金を渡せばいいという。2回目の参加という台北市の会社員女性は「ここの豚の丸焼きは最高。食べたくなってまた来た」と笑顔を見せた。
たいまつ行列が始まったのは25日午前3時。子どもたちが太鼓や笛を奏でると、長さ50~60センチのたいまつを手にした約3千人が集落の中心に集まってきた。子ども楽隊を先頭に延々と続く炎の列は「聖誕快楽!(メリークリスマス)」と声を掛け合い、お互いに記念写真を撮り合いながら約2時間集落内を練り歩いた。
締めくくりは花火。まだ明けぬ満天の星空に次々に打ち上げられると、ひときわ大きな「聖誕快楽!」の声が上がり、興奮と満たされた気分の中で行列は幕を閉じた。
祭典は次の夜まで続いた。日が暮れると、派手な電飾の特設ステージ上で、地元の若者によるヒップホップダンスや女性グループのラインダンス、親子による先住民族の踊りを披露。この日はやや肌寒かったものの、中年男性グループのショートコントやシスターたちによるかわいらしい踊りもあり、数百人の観客で埋まった会場は笑いと熱気に包まれた。
地元で雑貨店を営む男性は「私たちにとって特別な日を、大勢の人に祝ってもらうのは最高だね」と満足げ。望郷のクリスマスは南国らしく陽気に、感謝と幸せを多くの人と分かち合う日だった。
●メモ
望郷は、台湾を代表する景勝の湖「日月潭(にちげつたん)」の約30キロ南にあり、台北市から車で4時間ほどかかる。富士山より高く、日本統治時代に「新高山(にいたかやま)」と呼ばれた台湾最高峰の玉山(3952メートル)も、15キロほど離れた南東側にくっきり見える。近年は観光に力を入れており民宿が増加。歩いて渡れるつり橋や露天風呂の温泉も楽しめる。
http://www.nishinippon.co.jp/nlp/travel_report/article/304759

たいまつを手に集落を練り歩く人々
クリスマスを迎えたばかりの真夜中に、3千本ものたいまつの行列が現れる-。台湾でそんな壮大な伝統行事があると聞き、昨年12月24、25日、台湾中央部にある南投県信義郷の望郷を訪れた。
亜熱帯と熱帯に位置する台湾だが、標高約千メートルの望郷では、比較的涼しい気候に適したキャベツやブドウの畑が広がっていた。ガイドを長年続ける邱徳祥さんによると、約千人の住民の大半はキリスト教徒のブヌン(布農)民族で、1951年に教会を建てて以降、たいまつ行列を続けているという。その幻想的な雰囲気にひかれ、今では観光客も含めて約3千人が行列に参加している。
イブの夕暮れ時、集落は香ばしいにおいに満ちていた。観光客をもてなす豚の丸焼きが、あちこちの民家の軒先で作られていた。豚の丸焼き2匹分を振る舞ったブドウ農家には100人前後が来場。ほかにも鶏肉や川魚の料理が20皿ほど提供されたが、あっという間に無くなった。食事代はいらず、食べた人がそれぞれの判断で礼金を渡せばいいという。2回目の参加という台北市の会社員女性は「ここの豚の丸焼きは最高。食べたくなってまた来た」と笑顔を見せた。
たいまつ行列が始まったのは25日午前3時。子どもたちが太鼓や笛を奏でると、長さ50~60センチのたいまつを手にした約3千人が集落の中心に集まってきた。子ども楽隊を先頭に延々と続く炎の列は「聖誕快楽!(メリークリスマス)」と声を掛け合い、お互いに記念写真を撮り合いながら約2時間集落内を練り歩いた。
締めくくりは花火。まだ明けぬ満天の星空に次々に打ち上げられると、ひときわ大きな「聖誕快楽!」の声が上がり、興奮と満たされた気分の中で行列は幕を閉じた。
祭典は次の夜まで続いた。日が暮れると、派手な電飾の特設ステージ上で、地元の若者によるヒップホップダンスや女性グループのラインダンス、親子による先住民族の踊りを披露。この日はやや肌寒かったものの、中年男性グループのショートコントやシスターたちによるかわいらしい踊りもあり、数百人の観客で埋まった会場は笑いと熱気に包まれた。
地元で雑貨店を営む男性は「私たちにとって特別な日を、大勢の人に祝ってもらうのは最高だね」と満足げ。望郷のクリスマスは南国らしく陽気に、感謝と幸せを多くの人と分かち合う日だった。
●メモ
望郷は、台湾を代表する景勝の湖「日月潭(にちげつたん)」の約30キロ南にあり、台北市から車で4時間ほどかかる。富士山より高く、日本統治時代に「新高山(にいたかやま)」と呼ばれた台湾最高峰の玉山(3952メートル)も、15キロほど離れた南東側にくっきり見える。近年は観光に力を入れており民宿が増加。歩いて渡れるつり橋や露天風呂の温泉も楽しめる。
http://www.nishinippon.co.jp/nlp/travel_report/article/304759