美術展ナビ2023.05.23
「この機会にしか見られない体験。6回は通いたいですね」と話す風間さん Ⓒ 2023 Disney
森アーツセンターギャラリー(東京・六本木)で8月31日まで開催中の「ディズニー・アニメーション・イマーシブ・エクスペリエンス」。圧倒的な映像と音響に包まれ、『白雪姫』から最新作に至るディズニー・アニメーションの豊かなクリエーションの数々を体験できる没入型イベントです。熱心なディズニーファンとして知られ、オフィシャルサポーターを務める風間俊介さんに、この“エクスペリエンス”(体験)の魅力を伺いました。(聞き手・読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)
ディープなファン、ライトな層、誰もが楽しめる構成
Q ディズニー・アニメーションの歴史を網羅した構成になっていました。どの作品に魅力を感じましたか。
A 1番を決めるのは難しいですね。『アラジン』の空から『ピーター・パン』の空への繋ぎや、冒頭の『ライオン・キング』はたまらないと思いました。“壮大さ”がディズニー作品すべてに共通する魅力だとおもうのですが、映画のスクリーンよりさらに壮大で、視界の端っこまで映像があると、こんなに違う体験になるとかと思いました。
『ライオン・キング』でシンバが誕生する感動的な場面。流れる音楽はもちろん「サークル・オブ・ライフ」 Ⓒ 2023 Disney
空飛ぶじゅうたんで世界への旅に出るアラジンとジャスミン。「空」を描いた場面は爽快感あふれました。 Ⓒ 2023 Disney
ダンボやベイマックスなど「空」でつながるキャラクターが次々と。Ⓒ 2023 Disney
Q 主役ではないキャラクターにもしっかり光があたっていましたね。
A 『塔の上のラプンツェル』や『ライオン・キング』のように「これは必ず登場するでしょうね」というファンの誰もが知る場面が切り取られるのと合わせて、深くディズニーを愛する人にとって、「ここでこれが来たか!」というところもたくさんありました。ディズニー作品を愛しているすべての方が喜べるように作られていました。そういうところが嬉しく、ワクワクしました。
『塔の上のラプンツェル』のランタンの場面に見入る風間さん。Ⓒ 2023 Disney
作品の本質をつかんだ巧みな映像
じっくり時間を使って引用された『ポカホンタス』 Ⓒ 2023 Disney
Q 『ポカホンタス』や『モアナと伝説の海』などにもしっかり時間を使っていたのが印象的でした。
A 例えば「カラー・オブ・ザ・ウィンド」(※)は曲の本質が存分に表現された映像と音の演出でした。静寂から始まって、オールが水に入る際のちゃぽん、というか微かな音や木々のゆらめきなどが見事でした。最新のテクノロジーによってこうしたダイナミックな映像表現が可能になったのですが、そこでテクノロジーでは還元できない森や海などの自然が重要なテーマになっていることが興味深かったです。
(※)「カラー・オブ・ザ・ウィンド」 ディズニー・アニメーションを代表する名曲のひとつ。先住民族の娘である主人公のポカホンタスが、自然の偉大さや人間もその一部として共生していくことの尊さを歌います。
北米大陸の自然が見事に表現された『ポカホンタス』の場面 Ⓒ 2023 Disney
海や森など自然を描いた作品を重視していました。こちらは『モアナと伝説の海』から Ⓒ 2023 Disney
近作の『ラーヤと龍の王国』。東南アジアの雄大な自然に目を奪われます Ⓒ 2023 Disney
Q 昨年、北米から始まった「ディズニー・アニメーション・イマーシブ・エクスペリエンス」が初めて海に渡ったのが日本でした。
A ディズニーの公式がそう言っているわけではなく、あくまで私の個人的な感慨なんですが、海を越えてやってくるのが日本が初めてだった、というのは「東京ディズニーランド」の時と同じような喜びを感じます。ディズニーのパークがまずカリフォルニア州のアナハイム、次にフロリダ州のオーランドにできて、その次にできたのが日本(1983年開業)でした。しかも今回はウォルト・ディズニー・カンパニーの創立100周年という節目の年ですから。なにがしかの物語を感じてしまいますね。
今も、アニメーターの描く「一本の線」がすべての始まり
Q 最後にアニメーション制作の現場の展示もありました。
A 最新の文明の進歩によって、スクリーンに投影できる最高の表現を体感したあとに、それでも物語はアニメーターの描く線一本から始まるのだ、という明確なメッセージを感じました。その届け方、過程がいくら変わっても、原点は変らない。これからもディズニーはアニメーションを起点として物語を紡いでいくんだろうなあ、と思いました。
「ディズニー・アニメーションの精神を見習いたい」と風間さん Ⓒ 2023 Disney
Q ディズニーが内包する多様性と変わらないものについて、表現者として感じることを伺いたいです。
A 多様性の重視については、むしろ一貫して変わっていない、と思うのです。昔からディズニーはマイノリティそのものを描いてきていて、例えば「ダンボ」は耳が大きくて、他とは違う身体的な特徴があるがゆえに、はじかれていった生き物ですね。だからこそと言うべきか、その彼が見事な輝き方をします。『ノートルダムの鐘』が大好きなのですが、あの主人公のカジモトもそうでした。多様性やマイノリティに対する思いは、信念としてずっと続けてきたものだと私は思います。時代によって見せ方は変りますが、変わらない強さを一番感じるところです。それをやり続けて、しかも時代の先頭に立ち続けています。技術的には様々に最新のものを取り込むのですが、信念は変わらない。そのバランスが素晴らしいと思います。そういうところを見習いたいですし、柔軟でありたい、と感じます。
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インタビューに先立ち、風間さんは開幕前日に行われた内覧会で報道陣の取材に応じました。「ディズニー・アニメーションは、プロの仕事はここまで細部に拘り、これくらいの熱量がないと見る人には伝わらないのだろうな、と思わせてくれます。自分が頑張る理由になっています」と感想を述べていました。
<風間さんのプロフィール>
1983 年 6 ⽉ 17 日 東京都生まれ。ドラマ、CM、映画、舞台と幅広く活動し、日本テレビ系情報番組「ZIP!」(日本テレビ)では⽉曜メインパーソナリティを務める。「東京ディズニーランドガイドブック with 風間俊介」(講談社)発売中。
https://artexhibition.jp/topics/news/20230522-AEJ1382112/