北海道新聞2024年12月2日 19:49
俳優の斎藤歩さん(左)と人形劇師の沢則行さんが共演した芝居「カフカ経由 シスカ行き」(加藤哲朗撮影)
【幕別】俳優、演出家、劇作家で「札幌座」の斎藤歩さんと小樽出身でチェコを拠点とする人形劇師の沢則行さんによる芝居「カフカ経由 シスカ行き」が1日、町百年記念ホールで上演された。笑いを交えつつ戦争が絶えない現代を鋭く描いた作品が観客の心を揺さぶった。
NPO法人まくべつ町民芸術劇場と北海道新聞帯広支社の主催。約250人が詰めかけた。
舞台は日本海に面した稚内市抜海。人形劇を織り交ぜながら宗谷管内礼文島の香深(かふか)に残るアイヌ民族の物語やサハリン・ポロナイスク(敷香(しすか))のウイルタ民族の伝説などを語り合う中、2人の頭上を戦闘機が飛び交う。最後は「世界が今、右へ右へ傾きつつある。俺たちおやじは左へステップを踏もうよ」との斎藤さんの掛け声で2人が軽快に踊った。
札幌から訪れたパート従業員、外崎朋子さん(64)は「人形劇を使いながら面白いシーンも多かった一方、今起きている戦争についても考えさせられた」と振り返り、「がんと闘病中の斎藤さんの演劇がいつまで見られるかと思うと胸が痛い。また見させてほしい」と涙を浮かべた。