今日は家内が朝から県立図書館に借りた本を返しに出掛け、帰った来て「お父さん、一寸、珍しい物を買って来たので一緒に飲みませんか?」と話し掛けてきた。「何かいな?」と台所に行くと家内が「甘酒」のボトルを嬉しそうに出して来た。「おう、此れは珍しいなぁ~」と二人で頂く事に成ったが何十年振りだろうか?
私はアルコール類は全く駄目で殆ど口にしないが、甘酒は子供の頃に母親が良く造ってくれた思い出がある。私が子供の頃はジュースや炭酸飲料は今の様に豊富に無く、ラムネや三ツ矢サイダーの時代で偶に親戚からカルピス等を贈答で貰うと飛び上がって大喜びした時代あった。其の様な時代に秋の農繁期が終り段々と気温が下がって来ると母親が麹を買って来て湯たんぽ等で温度調節をしながら甘酒を造ってくれた。当時の我家は11人家族だったので高さが60~70cmで周囲が40cm位の中身が入ると大人でも持ち上げる事が大変な水瓶2個に母親が甘酒を仕込んでくれたが、此の甘酒の味が一番良くなるまで待ち切れずに家族が皆「飲み頃に成ったかな?」と入れ替わり味見をするので時には飲み頃に成る前に中身が無く成って仕舞う事も度々であった。
私の実家は茅葺屋根の家だったので火を扱う台所は(釜屋と呼んで居たが)母屋から離れて居た関係で甘酒が入って居る亀は其処に置いてあり、夜などに味見に託け、甘酒を盗み飲むと冷たい甘酒が胃の中に流れ込んで行く時に感じる感覚は子供心に「五臓六腑に染み渡る感覚とは此の事か!」等と感じた物である。然し此の甘酒も私が中学生に成る頃には何故か造らなく成って仕舞った。
其の後、甘酒を味わったのは家内と結婚してから2年位経って偶々、世間話の中で義兄(旅グループの姉の御主人)はアルコール類は全く嗜まないが甘酒が大好きである事を知り、家内が姉夫婦には私達の親代わりとして色々御世話に成って居たので甘酒を造ってみると言い出した時には町人育ちの家内が甘酒など造れるのか?と私も一寸驚いたが聞いてみると家内の母親は豪農の娘で、家内が子供の頃に甘酒を良く作って居たし、家内も母親の体が丈夫な方では無かったので高校生の頃から炊事関係は遣って居た様で甘酒造りも母親から見様見真似で習っていたらしく、翌日に早速、麹屋を見付けて買って帰り、「湯たんぽと毛布」で温度管理をしながら甘酒を造った。
此の甘酒は出来が良かったので2~3年程は続いたが、甘酒造りは結構、手間隙が掛かるし私達の子供達は甘酒寄りはジュース類が好きで甘酒は飲まないので甘酒造りも、やがて遣らなく成って仕舞った。其の後、家内とスパー等に出掛けた折に、私が甘酒を見付けて手にする事は何度かあったが1.5Lサイズで500円近くするので買って帰る事は無かったが、今日家内は急に甘酒が呑みたく成って買って来たらしい。
久し振りに甘酒を一口飲むと、あの甘い味と完全に液体に成って居ない粒々感の残る、あの独特の喉越しを久し振りに味わい非常に懐かしく感じた。子供の頃に甘酒を飲み過ぎてゲップを連発したり、少し胸焼けしたり、時にはお腹が柔らかく成り過ぎた事や誰も居ない釜屋内で密かに甘酒を一人で楽しんだ事等を思い出し甘酒を楽しんだ。