最近は段々と気温が下がり暖房機が必要な季節に成って来た。暖房器具には電気、ガス、石油機器商品等が有るが電気を熱源とする場合は熱変換効率が悪いので安全面では非常に優れて居るがコスト的には割高に成るし電気ストーブは元々局部的な温めには適しても部屋全体を暖める程の能力が有る商品は少ない。ガス機器関係は都会では(都市ガス)先行配管がされて居れば使用出来ても田舎に成れば配管の問題や携帯性(部屋から部屋への持ち運び)が出来ず不便であるし安全面でガス漏れの危険性が有る(正常な状態で使用すれば問題は無いが其の事は他の機器でも同じだがガス機器には爆発事故などが発生する可能性がある)。反して石油暖房機器は石油燃料の入替えと云う不便さ(臭いや手が汚れる等の)は有る物の携帯性には優れ然も灯油をガス化させて燃焼させると云う効率の良さが売りで有るが如何しても燃焼中の臭いと云う欠点が付き纏う。全体的に考えると安全面、能力、クリーン度を考えるとエアコンに軍配が上がるが購入コストやランニング・コストが割高に成るし基本的に寒冷地には能力的に向かない。
矢張り何かの燃料を燃やす暖房機器は熱効率が高く視覚的にも暖かく感じる事から寒冷地を除く簡易的な暖房器具としての需要は便利さ、購入コスト、ランニング・コスト等から考えて石油暖房機器が多く使われて居る。石油暖房機器の代表格と云えば石油ストーブと石油ファンヒーターだが以前とは違い近年では価格差が少なく成り石油ファンヒーターの需要が高まって居る。ご存知の様に両者共に石油を燃やして熱源にする訳だが機器としての大きな違いは石油ストーブは自然対流で周囲を暖かくするのに対して石油ファンヒーターは後部に有るファンモーターで熱を強制対流させる為に速暖性に優れて居る。
最近の石油ファンヒーターは全ての動作が制御基板のマイコンに寄って制御され写真は石油ファンヒーターの燃焼部(気化部)で本体上部を取外して燃焼筒部分を除いた写真だが丸い網目の部品の下がポット状に成って居り最初の点火前には本体容器に埋め込まれたシーズ・ヒーターで電気的に熱せられある一定の温度に成ると其の温度をサーミスターで検知し電磁ポンプが作動し気化容器の中にノズルから灯油の液体が送り込まれるとポット内(気化器本体)に入った灯油は内部の温度により直ぐに気化されて気体に成って丸い網目の部品から出て来る時にタイミングを合わせて燃焼用のバーナーモーターが回った段階で左側の下に向いたコ字形の点火電極から網目の部分にスパークが起こりガスに点火し燃焼が開始されると燃焼気化器(ポット)の燃焼熱(本体温度)を利用して次々と灯油のガス化を始めシーズヒーターの電源はオフされる仕組みと成って居る。
点火プラグの右側に下側に向いたU字形に曲がった電極が有るが此れが石油ファン・ヒーター内で一番重要な部品で燃焼部分が常に正常に動作して居るか如何か?を常時監視する役目のフレーム・ロッドと呼ばれる電極で機器が動作時には常に一定の電圧が引火されて居て燃焼が始まると炎の中のイオン電子を通して網目部品にμAオーダーの電流が流れ其の値をマイコンが常時監視し失火や点火しない場合や異常燃焼状態を監視し状況に寄っては機器の運転を停止させる役目を担って居る。此の写真のファンヒーターは燃焼中に異常検知し燃焼が継続出来ない故障商品を分解した物だがバーナーキャップ(丸型の部品)を良く見ると網目の部分に楕円形の白い模様が付いて居る。同じ様にフレーム・ロッド電極も白色化している。此れは「シリコン化現象」と呼ばれ空気中の何かの不純物が本体後ろの送風ファンに寄って燃焼部に入り燃焼に寄って真っ赤に焼けているフレームロッドやバーナーキャップに当たると不純物の燃カスが其々の部品に固着した状態で白色化している。お互いに微弱な電流が流れる部分に不純物が固着すると其れが電気的抵抗と成って流れる電流値が低下すると当然マイコンは異常燃焼と判断して仮に実際の燃焼が正常状態で有っても異常燃焼と判断をして機器の動作をストップさせる安全回路が作動し運転を停止させて仕舞う事に成る。実は石油ファンヒーターには本体故障が原因では無く使用条件から来る此の手の修理依頼が非常に多い。
では何故此の状態が起こるのかは様々なケースが有り原因を究明するのに苦労をするのだが次の様な原因が挙げられる。
1、 石油ファンヒーター近くで加湿器を使用する。
2、 台所等の水周りの近くで使用する。
3、 新築の壁紙を張った部屋で使用する。
4、 一部の化粧品やヘヤスプレーを多用したり特殊な薬剤や其れ等を保管する場所で使用する場合
矢張り圧倒的に多いのが1~2の場合で水道水の微粒子が存在する空間では水分は燃焼部で瞬間に蒸発するが水道水の中気含まれるカルキや其 れ以外の成分は部品に燃焼カスとして付着して問題を起こす。
石油ファンヒーターに加湿器は必要無い。何故なら灯油を1リットル燃やせば其の成分構造から多量の水蒸気を出すので加湿器は必要なく特に
超音波式加湿器は粒子が細かいので空気中に長く浮遊するので症状が発生する率が高く、此の様な条件下で使用するなら石油ストーブのチョイス が正解
3、の事例は症状が出ると説明してもお客様に中々理解をして貰えない問題で説明に苦労する事例だが現役時代に年数回は必ず経験する事例で 其の対応に苦労する問題・・・・ 如何も壁紙を張り付ける接着剤の一部に原因がある様だが此の成分が6ヶ月~1年位しないと完全に抜け 去らないので如何しようも無い。
4、の場合も結構ある事例でヘアスプレーは石油ファンヒーターには天敵、従って理容室や美容室での石油ファンヒーターの使用は適さない。
では症状が発生した場合は如何するか?だが対応は至って簡単でフレームロッドとバーナーキャップの電気の流れる部分の白色化(シリコン化)を上の写真の様にワイヤーブラシかサンド・ぺパーで磨いて白色化した部分を磨いて取り除くだけでOKで至って簡単に直す事が出来る。残念ながら現在は商品単価の低さや此れ等の石油機器独特の問題点で採算が取れずに現在の家電メーカーの大半は此の業界から撤退し現在はコロナ、ダイニチ等の石油機器専門メーカーだけしか製造をしていない様だが燃焼の良否の検知は全く同じ方式を採用して居るので燃焼中の異常エラーが出た場合は此の理屈を知って居れば後はアマチュア精神で大半が直る筈、ただし現在の石油ファンヒーターの気化器はバナーモターを使用しない(低コスト化の為)方式になって居る為に完全密閉式に成って居る事から写真の気化器の様に分解修理が出来ない構造になって居る為に万一、不良灯油を入れて燃焼すると大半の場合はそこでアウトに成るので結果として修理代に大枚を払う事に成る。くれぐれも御注意を!
灯油の問題と保管に関して
灯油は成分的に水と油に分離し易い性質を持って居り前のシーズンの残り灯油を燃やすなどは論外、可也の確立で気化器をパァ~にしてしまう。ポリタンクの中に分離した水が見える灯油の上澄みを利用しても駄目、石油ファンヒーターにはクリーニング機能(気化器の空焼き機能)が付いて居るが元の状態には絶対に戻らず燃焼出来ても臭い等の問題は殆どの場合解消されない。出来無いに等しい。
ポリタンクを外で保管するのは余り良くない。紫外線による劣化と外気温の変化でポリ容器が常に膨張収縮の繰り返しが起こり其の段階で吸い込んだ空気の水分が温度低下で結露して水に分離し其れが底に溜まる。
買出しが面倒等とドラム缶で灯油を保管する場合が有るがシーズン中に消費しなければ次のシーズンには底数cmは水に分離した成分に成る事は間違いなし、それを御丁寧に先の深い(元々そう成って居る)ポンプで吸い上げると底の不良灯油から出て来るので即 アウト状態 此の保管方法だと百発百中でアウト状態に!
ポリタンクから灯油をカートリッジ・タンクに入れる時でもポンプの先は常に容器の底から浮かした状態で吸い上げる事、残量が少なく成った段階で明るい場所でポリ容器を適時調べて水に分離していないかの確認をする事!
シーズン・オフに本体タンクの灯油を抜くのが面倒で有れば新聞紙1日分を半折に棒状にして丸め本体のタンク口に突き刺して置く事(新聞紙が灯油を吸い取ってくれる)
此れだけ注意して使用すれば動作不良や故障する事は無く長年使用する事が出来る。私の業務経験から修理預かりした問題の商品の90%以上が此れ等が原因で有り高熱に晒される燃焼部分の消耗部品を除くと回路部品の不良などは殆ど無く長年の経験から其の確立は全体数の3%も無い。