愛する子供の命を奪われた三上夫婦。
その事件が原因となって、
離婚することになった二人。
数年を経て、加害者に、
遭遇することになった
三上と元妻、佐和子。
この事件によって、
了解不能という、
精神的な病になってしまった、
妻を想う三上。
犯罪を犯したとしても、
心神喪失、心神衰弱ということで
不起訴あるいは無罪となります。
罪を与えるか、それとも罪を与えないのかは
その時の加害者の
精神の状態にかかっています。
その時の精神状態が基準となって、
有罪、無罪の区分けが出来るなんて…。
被害者家族にとっては、
やりきれない、
深い心の傷が残ってしまう。
被害者がいれば加害者は、
当然いるはずなのに
加害者の心の病がさまたげとなって
憎むべき人の存在は、
被害者からは見ることは、
できなくなってしまう。
とても悲劇的です。
仕返しを試みたとしても
報復をする方の精神状態は正常なので
罪に問われることになります。
家族にすればあまりに不条理なこと。
佐和子の心の中は?
悲しみ、苦しみ、怒りの限界から、
見いだした解答とは?
佐和子の心情がグッと、
心につきささります。
なにも知らず味方となって、
加害者のことを想うゆき。
このゆきの心の中にも永遠に
癒されることのない、
深くて大きな傷跡が…
重い内容ですがラスト近くなっての、
思いもかけない展開に
夢中になりました。
天使のナイフ、悪党、
そしてこの「虚夢」
社会を凝視する、
薬丸岳氏の小説です。