母性
この物語は、
「母性について」「母の手記」「娘の回想」と
3つに区分された構成になっています。
各章とも登場人物の独白で綴られています。
母親が書いた
『愛能う限り娘を大切に育てた』という手記と
娘の回想。
母と娘の心が交わらない。
母親と娘、
二人の見方や考え方の、
食い違っているところが
明らかになるように描かれています。
特に母親の心の歪みに
腹立たしいと同時に、
心が痛みます。
テーマである母性が、
ねじ曲がり変質してしまっているのです。
育てた娘との心の隔絶が、
痛々しい。
愛を受けて育ったとしても
子供にその愛が受け継がれてはいかない。
愛という言葉を使いたがるのは、
愛されていない証拠。
誰からも愛されていないと感じてしまった娘。
祖母の命と引き換えに助かった娘。
祖母の最期の願い『愛能う限り』
娘を大切に育てて欲しいという
思いに従って娘を育てたつもりの母。
親子にかかわらず、
人の心の中って、
外からは計り知れないものがあって
難しいものがあります。
ま、救いのあるラストで、
一応ほっとしました。