はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

断片

2006-05-27 09:55:30 | はがき随筆
 私の菜園は戦時、出水航空隊があった跡地にある。子供のころは、そこら中に爆弾の落とし穴と防火用水池があった。なので今でも瓦礫が出てくる。
 鍬で地中から掘り起こされる時、煉瓦の欠片は濡れて赤く、血の色をしている。私は、それを見るとゆさぶられる。何かを語りかけているような気がするのだ。爆死した無数の人たちの伝言かもしれない。恐らくそれは「忘れないで」なのだと思う。
 私は、いくら合祀されていても、彼らが人の殺りくのためにかり出されて、死んでいった無念さを忘れまい。
   出水市高尾野町 松尾 繁(70) 2006/5/27 掲載