はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

気になる人たち

2006-05-29 13:49:58 | はがき随筆
 2年近く前、鹿児島の随友仲間10人で下関へ旅をした。男7人のうち4人が同じ年という奇遇であった。痩身のアスリートKさん。ホームラン記録更新中のMさん、人生の達人Iさん、そして私。同世代と言うことで親近感を覚えたのは事実で、1泊2日の旅を堪能する。その後、特別な付き合いはないが、随筆を通して近況を知り、自分を鼓舞している。Mさんの投稿が見られないのは気になるが、Kさん、Iさんは毎月楽しい話題で心和ませてくれる。私もと思うが、なかなかどうも……。その時々の心の動きに任せるしかない。
   志布志市有明 若宮庸成(66) 2006/5/29 掲載 特集版-6

心の中のハミガキ

2006-05-29 13:41:58 | はがき随筆
 9歳の三希子の日記に、とってもいいキラリと光る文章を見つけた。うれしい。すごい。ピカピカに光って、気持ちがバーンと伝わってくる一文。母ちゃんには決して書くことができない宝物のような文章。
 「これ、とってもステキだから新聞に出してみたら?」と勧めてみた。「うーん、やめとくよ」「えっ、何で?」。
しつこく食い下がろうとしたその時、「母ちゃん、心の中のハミガキをした方がいいよ」と言われて、私はうなだれた。
 9歳の気持ち。やっぱりピカピカに光っている。
 鹿児島市真砂本町 萩原裕子(54) 2006/5/29 掲載 特集版-5

老いては妻に?

2006-05-29 13:35:06 | はがき随筆
 我が家はマンションの1階。庭付きなので花や木が大好きな妻には住み心地満点のようだ。「あちらにはこれを植えて、こちらにはあれを植えて」と、頭の中は常に庭づくりの図面が描かれているようである。毎年恒例の春の木市が始まると気ぜわしくなる。「さあ、木市に行くよ」「俺もか」「当たり前よ。花壇の縁に久留米ツツジを植えるのだから。6株いるから1人では持てないでしょう」「はい、はい」「返事は1回でよろしい」「老いては子に従え」と言うが「老いては妻に従えってあったっけ?」。何はともあれ行くしかないか……。
   鹿児島市鴨池 川端清一郎(59) 2006/5/29 掲載 特集版-4 
画像は季節の花300より

みどり交々

2006-05-29 13:22:12 | はがき随筆
 4月1日から京都へ紅枝垂桜をあてに行ったが花に会えなかった。19日は川内に用あって、まあ金山峠の霧に潤んだ緑の優しさを存分、車窓から楽しんだ。帰途、駅舎から見える山々の緑の濃淡に感嘆。幼かった緑も5月になるとたくましい青年期になる。5月5日の指宿。休暇村に聳える断崖に「ここも阿多カルデラ?」。まるで太古爆発の時の炎かと思われる灼け茶色の岩々。橋牟礼川の遺跡に、水のあることが命とかかわることを解し、池田湖畔から開聞への山地の岩山も阿多カルデラと知る。南薩摩の緑は初夏色に輝いていた。次は万緑。
   鹿児島市唐湊 東郷久子(71) 2006/5/29 掲載 特集版-3

母の習字

2006-05-29 13:12:50 | はがき随筆
 特別養護老人ホームで暮らす母は、米寿を期に始めた毛筆習字が生き甲斐の一つになっている。顔を合わせる度に「習字は全部花マルで、私が一番上手とほめられるよ。見てきて」とせきたてる。展示された十数人の作品すべてに、朱が大きく回され、明るさいっぱい。母は自分の作品がいつも左端に張られるのでトップと思い込んでいる。さすがに「年の順では?」とは言えない。
 車椅子で手が不自由な母が、力強い線で<みどり こいのぼり>と書き、紙面の雰囲気も良い。92歳に筆と半紙をまた頼まれた。
   出水市高尾野町 清田文雄(67) 2006/5/29 掲載 特集版-2

母さんの温もり

2006-05-29 13:03:34 | はがき随筆
 ピアノ教室の発表会に出かけた。2歳ぐらいの幼い娘連れの母親の先生が、教室の4歳の生徒の出番の補佐のため、娘を1人ぼっちにした。赤いチョッキの幼い娘は泣き出した。すぐ、母を追い舞台の近くで、習慣になっていたのか、母と掌を合わせパンと打った。安心したのか、その娘は自分の席に着き、舞台のピアノの椅子を調節している母を見つけ「ママー」と叫んだ。
 終戦の混乱時、2歳のころの私は、熱が出て頭が痛かった。母はどこで見つけたのか、スイカの甘い汁を飲ませた。母の温もりは、世界の全てだった。
   出水市大野原 小村 忍(63) 2006/5/29 掲載 特集版-1