はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

廃駅慕情

2007-01-26 21:03:23 | はがき随筆
 旧改札を入りベンチに掛け、目を閉じる。思いは昔に、行き交う声に。「行ってくるから、キバレヨ」「今帰って来ぞ、オヤッサー」などと響き合った。ホームは綺麗に整頓され、春は南側の大きい藤棚に藤の花が咲き旅情をくれた。耳を澄ませると潮騒が心地よい。小さい島には荒平神社がある。晴れた日は錦江湾が広く、視界をのばし端麗な開聞岳を見る。地元の人たち、旅人も絵のように映る風景は深く記憶に残る。大隅線は大正7年7月に始まり91年に遡る。廃駅数33、距離90㌔は歳月の中に埋没か、透明な冬の日差しの中、人々の中に生き続けるだろう。
   鹿屋市 小幡晋一郎(74) 2007/1/26 掲載  

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