はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

鳴けないカラス

2007-03-06 12:23:46 | はがき随筆
 冬の唐湊墓地はどんよりと曇っていた。墓地の清掃を終えて昼食をとっていた時、カラスの鳴き声がいやに激しくなった。外に出て見ると、近くの雑木林に50羽程のカラスが入り乱れて鳴き合っている。叫んでいるような声もあれば悲鳴も聞こえた。まるでなわばり争いのようだった。昼過ぎて枯れ花を片付けていると、1人のご婦人が参道の途中にカラスの死骸があり怖くて通れないとの事。後で死骸を片付けながら私は、人間の社会に置き換えて考え、身につまされた。「お前も、航走の世界で敗れたんだなあ」
   鹿児島市 高野幸祐(74) 2007/3/6 掲載
写真はsenmeiさんよりお借りしました。