はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

補聴器

2007-03-14 10:09:33 | はがき随筆
 遠くから近づいてくる微かなB29の爆音。聴測班計算係だった。余切盤に各分隊からの所見を素早く記入。隊長へ「照射準備」「照射」。高射砲の弾幕、高射機関銃の火花。19歳の春から夏にかけての対空戦の様子。機種選定、高度、航速、進行方向等をやっていた耳だが、寄る年波、老化現象、難聴。薬は無いとのこと。初めは装着、調節に悪戦苦闘。会合に行ったり、日常生活に頼っている補聴器。多くの方のお世話になっている。「福耳ですね。長生きしますよ」と、形と中身は違うようだ。これからも補聴器と共に多少不自由だが毎日を過ごしていきたい。
   薩摩川内市 新開 譲(81) 2007/3/14 掲載