K市の郊外の椿苑でのこと。昔ながらの、ひそやかな花の前に座り込んでいた。そこへ、冬帽にコートの衿を立てた初老の紳士が現れた。イケメンである。
「藪椿がお好きなようですね。私もそうです。よく来るのですよ。私の名前はMです。お名前をお聞きしてもいいですか」「はい、由井と申します」
その後、花の時期に何回か出会い、他愛のない話をした。
住所もフルネームも知らないあの方は、今年もあそこにいることだろう。
私は郷里で1人、あれほどの樹と巡り合えずに日を送るばかりだ。
阿久根市 別枝由井(65) 2007/3/13 掲載
「藪椿がお好きなようですね。私もそうです。よく来るのですよ。私の名前はMです。お名前をお聞きしてもいいですか」「はい、由井と申します」
その後、花の時期に何回か出会い、他愛のない話をした。
住所もフルネームも知らないあの方は、今年もあそこにいることだろう。
私は郷里で1人、あれほどの樹と巡り合えずに日を送るばかりだ。
阿久根市 別枝由井(65) 2007/3/13 掲載