はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

HAPPY BIRTHDA! なんだけど

2007-03-26 23:54:14 | アカショウビンのつぶやき

大慈寺のIさま











 今日はコーラス、鹿屋市合唱祭で歌う曲の楽譜が配られました。
 ハ長調か…なんてたかをくくっていたら、途中どんどん転調し音取りがままならず、やれやれ。
 練習もそこそこに、次はFM番組取材のため、編集担当のO氏と志布志市へ。
 「みんなでハッピーバースデー歌おうと思ってたのに…」と言う先生の声を聞きながら「ごめんなさーい」。

 目指すは志布志市の、700年の歴史をもつ禅宗「大慈寺」。賑やかな町中に突然開ける静寂の中に立つ古いお寺でした。取材させて頂いたのは、住職のお母様、I・イツ子さん。今年80歳になられるIさんと女学校時代の親友Tさんも交えて話が弾み、あとで編集者を、悩ませるだろうなあと思いつつも楽しい会話が続きました。

 鶯の声に送られて大慈寺をおいとまし、同じ志布志市のエッセイ仲間・Y氏宅に電話を入れると、珍しくご在宅の由。
Y氏と愛猫おはなちゃんに会いに行く。最愛の奥様を亡くされ傷心のY氏だったが、素晴らしい友人に巡り合い生き生きとなさっていた。次回は、お二人へのインタビューをお願いして、次なる目的地東串良町に向かう。

 「精神障がい者就労継続支援施設・ルピナス」
 ここは、障がいをもった方々が、玄米餅の製造販売、空き缶リサイクルなどで、僅かでも収入を確保できるよう支援する施設。長年の思いがようやく叶い新しい建物が竣工しました。心を病む方々に優しい配慮がなされた素晴らしい施設です。

 西日の強い窓にカーテンを付けたいとのこと、裁縫大好きの私が引き受けましたが、カーテンレールの取り付けは無理。とうとう日曜大工の腕を買われて、私の大事なパートナー・番組編集担当・O氏の出番となり同行していただいたのです。

 ようやくルピナスの用事も終わり、大きな太陽が山の端にかくれる頃、ルピナスのボランティアスタッフ・Hさんから電話。
「お二人にお礼を申し上げたいので、一緒にレストラン・Koo's へ来て」。固辞するO氏を説得してステキなレストランへ向かいました。

 久方ぶりのご馳走に幸せいっぱいのアカショウビン、その時突然ライトが…どうしたの…故障?
 突然流れてきた曲は、あれっ、スティーヴィー・ワンダーの「Happy Birthday」 じゃないかしら? エエーッ ケーキとキャンドルがテーブルに運ばれ、お客様、お店のスタッフの皆様から、一斉に「おめでとう」の拍手をいただきました。70ウン歳にして初めての晴れがましい誕生日! Hさん素晴らしいプレゼントをありがとう!
 終日走り回ってくたびれましたが、生涯忘れられない誕生日となりました。家に帰ると娘からお花、息子からはプレゼントならぬ、栄転辞令のメールが届いていました。

今日も幸せを感謝しつつ おやすみなさい。アカショウビン
 

今年の桜

2007-03-26 22:31:04 | はがき随筆
 東京都心部に続いて福岡市でも(ソメイヨシノ)が開花した。例年なら南から咲き、開花が北上してゆくのだが、今年は違う。福岡管区気象台の開花予想では、九州南部での開花が本州や九州北部よりも遅く、鹿児島の開花は31日になっている。平年より5日、昨年より11日も遅い。
 桜がもてはやされ出したのは平安時代ごろからだそうだ。それまでは桜より梅の方に人気があり万葉集には桜より梅を詠み込んだ歌が多い。これが、桜の花びらの潔い散りように関心が集まり、台頭してきた武士にも好まれるようになったらしい。
 桜が大好きでたまらない人が「平家物語」に登場している。桜町の中納言成範卿(しげのりのきょう)。「桜町の」が名の前に付くところからして面白い。ことのほか風流を好み、吉野山をあこがれて付近に桜を植え並べ、その中に家を建てたという。そこで一帯を「桜町」と言うようになった。
 さらに「桜は咲いて7日目には散ってしまうが、成範卿が名残を惜しんで天照大神に祈ったところ21日間も咲いていた。当時の帝が賢君でもあったので、神も恵みを発揮して、桜花にも心があったのだろう」とある。
 また、平清盛の末弟、薩摩守忠度(さつまのかみただのり)。無賃乗車の事を「さつまのかみ」と言うのは、この名前に由来しているとか。本人も、このような形で後世に名前が使われていると知ったら残念であろう。
 平家物語では武士と言うより、歌人として印象深く描かれている。都落ちの際に残した歌の一つ、「さざ波や志賀の都はあれにしを 昔ながらの山ざくらかな」を紹介している。やはり桜を歌い込んでいる。
 時代は下って江戸時代の浄瑠璃、仮名手本忠臣蔵で、武士の由良助が商人の義の厚さに平伏して「花は桜木、人は武士と申せども、いっかないっかな武士も及ばぬ御所存」と述べる場面がある。武士は体面ばかりを取りつくろうようになり、桜の清らかさ潔さには到底及ばないと批判していると受け取れる。
 さて今年の桜。ナントカ還元水の大臣も花見はするのだろうか。「花は桜木。いっかないっかな政治家も及ばぬ御所存」。そろそろ潔さを見せてほしい。
 支局近くの甲突き川沿いの桜は日々、蕾が大きくなっている。どんな風情を見せてくれるのか楽しみだ。
   毎日新聞鹿児島支局長 竹本啓自 2007/3/26 毎日新聞鹿児島県版掲載

いじめ

2007-03-26 22:04:17 | はがき随筆
 古稀の祝賀会があった。小学校卒業以来の面々の変わり様。抱き合って歓喜する者、感涙する者、感激の渦に包まれた。宴の最中、K君が私にぽつりと「あんとき、お前に言われた言葉が今でも思い出されて悔しい」と語り始めた。私は全く記憶していなかったが、衝撃を受けた。昭和17年ごろは私達にとっては野、山、川、畑がグラウンドであり、最高のおやつの収穫場所であった。がき大将の私はよく喧嘩をしたが、その場限りで仲直りするのも早かった。しかし、私の無意識な思慮のない発言が、彼の心に長年わだかまっている事を知り、胸中が重くなった。
   鹿児島市 春田和美(71) 2007/3/26 掲載