はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

記憶

2007-05-10 16:32:11 | はがき随筆
 ランドセルが、小さな孫の背中で揺れて、新1年生がスタートした。
 そういえば、半世紀余りも前の新1年生が持つ鞄は布製だった。私はシルバー色の帯を再生して作った肩かけ鞄をプレゼントしてもらった。
 地模様のあるその鞄に、赤い糸で刺しゅうをしてくれたのは母だったのだろう。60年前の今の季節、やはり胸躍らせて、桜の門をくぐったのです。
 嬉しくて、うれしくて、スキップしている私。学校までの道程の様子など、新1年生には何でも新鮮に映ったものだった。私の小さな時の記憶は、この頃から始まっている気がする。
   霧島市 口町円子(67)2007/5/10 毎日新聞鹿児島版掲載