はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

五月の想い

2007-05-15 19:08:44 | アカショウビンのつぶやき
 告知うけ妻と涙す 柿芽立ち  克己

10数年前、私たちは大きな試練の中にいた
風薫る五月 小鳥は歌い 野山に花々は咲き乱れ
山々は新緑に彩られ 命に溢れていた 
然し私には すぺてが 灰色に見えた

命の日が一日ずつ失われていく…
涙しつつ奇跡を祈り
生かされた今日一日を感謝して過ごした五月

「次は、アカショウビンになって帰ってくるよ」
と遺る家族を励まし、静かに旅立った彼

63歳は、早すぎます神様
天にどんなご用があったのでしょう

あれから12年 私は生かされている
アショウビンの彼と いつ会えるのだろう
それは私がアカショウビンになった時?
  
    アカショウビンのつぶやき

写真はBird Watchingさんからお借りしました。



 

父の親指

2007-05-15 10:18:42 | はがき随筆
 いつからだろう。眉がかゆくなると親指でかいている。7年前に他界した父が、晩酌しながらやっていた。他の指ならスムーズなのに、親指で眉をかくなんて不自然で、ぎこちないかゆみ止めの格好なのだ。
 気がつくと、娘の私がやっている。これがまた、親指の太さが眉によく接触してかゆみが止まる。心の中で笑って、父が現れたことをおかしく、そして懐かしく思う。
 多分、93歳を迎えた母のことが心配で、時々、親指の力を借りて、母の事を頼んだよと言わんばかりの父の、お願いなのかもしれない。
   阿久根市 徳丸伸子(54) 2007/5/15毎日新聞鹿児島版掲載