はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

黒米のおいしさ知る

2010-06-01 18:00:52 | 岩国エッセイサロンより
2010年6月 1日 (火)

   岩国市  会 員   山本 一

浜田の「きんたの里」へ元勤務先の飲み仲間とバス旅行をした。妻が黒豆を煮たのが好きなので、土産に黒豆を買った。

ところが、帰ってから妻に渡すと黒豆ではなく、「黒米」と書いてあるではないか。びっくり仰天したが、妻は「知っているよ」とまんざらでもない顔なので、少しほっとした。

翌日、妻がパートに出かけ、一人での昼食となった。炊飯器を開けてまたびっくり。何と真っ黒なご飯だ。とても食べたくない。

恐る恐る食べてみると結構おいしい。京都の和菓子屋へ嫁いだ長女が話を聞きつけ、食べてみたいと言うので、残り全てを送った。

先日長女が帰省した時、「夫が試作した」と言って、土産に黒い大きなむすび2個を持ってきた。黒米を使ったおはぎだと言う。食べてみると中にあんが入っていて、なかなかの味である。

黒豆と間違えて買った黒米だが、家族の話題になった。今度行くことがあったら、ちゃんと黒米を意識して土産にしよう。

(2010.06.1 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「ドジ」

2010-06-01 17:56:29 | 岩国エッセイサロンより
   岩国市  会 員   山本 一

友人と居酒屋に行き「君は東京からなので僕が払うよ」と、私が格好良かったのはここまで。財布を見てびっくり仰天。「金がない。間違えた」

最近、うっかりミスが多く、あれこれと工夫をしている。今回もカードや免許証が入った財布からお金だけを抜いて、別の財布に入れた。もし、財布を落としても被害を最小限に抑えるためだ。出掛けに「財布を取り間違えないように」と自分に念押ししたのに……。

 慌てて妻を呼んだ。小言を言われただけでなく、店に居座られ、余計な出費になった。更なるドジ対策が必要だ。
  (2010.06.01 毎日新聞「はがき随筆」)  
岩国エッセイサロンより転載

プールの人気者

2010-06-01 17:46:40 | はがき随筆
 緑豊かなかごしま健康の森公園。東京ドームが7個も入る広大な敷地の一角に屋内プールがある。このプールで話題にのぼる女性を紹介しましょう。
 常連客で最年長者の93歳。水着姿がよく似合うMさんは「プールでよかにせを捜しちょっどん」。よかにせは、すぐ見捨てるからダメと忠告すると「だいでんかいでんの男とは語らん。あたいにも選ぶ権利があっでやなあ」と涼しい顔で話す。
 周りのみんなは大笑いです。申し遅れましたが、私はプールで働く監視員。お客様安全第一を守る外に、別の悩みを抱える羽目となっています。
  鹿児島市 鵜家育男(64) 2010/6/1 毎日新聞鹿児島版掲載

すっきり

2010-06-01 00:17:14 | アカショウビンのつぶやき
 友人のご主人Tさんが剪定に来てくださいました。
例年、夫の命日の前にお願いしてますが、今年も二日がかりで(猫の額の庭なんですが)見違えるようになりました。

子供たちの小学校卒業記念樹・紅白の梅は、とんでもない方向に徒長枝をのばし、今年もアブラムシにやられました。樹の下にある、クチナシと紫陽花は無残にも、真っ黒けです。

今回は、第一にこの梅を剪りたかったのですが、
「梅は今からまだまだ伸びるから、次に剪ろうね…」だって。
   あらぁ、だからこそ、いま剪りたいのに─

梅は後回しにして、庭造りのアドバイスをしていただくことにしました。
狭い庭にどんどん樹を植えたため、成長した樹は押し合いへし合いの状態です。
少々邪魔になってきた、皐を3本撤去し、鉢植えの「白いランタナ」や梅の下でいじけていた「木瓜」を陽の当たる場所に移しました。

樹木に場所を占領された我が家は、野菜も花もほとんどが鉢かプランター。
雑然と放置してあるプランターを眺めた彼がひとこと…。

「整理せんと、また転んで怪我をするよ-」と。
そうなんです、ここで3回も転倒し怪我したんです。

野菜、花、イチゴとグループ分けして、きれいにまとめてくださいました。
これで水まきも楽になりそう。

見違えるようにすっきりした庭に立つと、花たちも生き生きしています。

「命」

2010-06-01 00:09:54 | 岩国エッセイサロンより
岩国市  会 員   檜原 冨美枝

夕食の後かたづけを終え、夜光灯に切り替える。流し台の隅からすばしっこい生き物が出没する。あーあ。今年もまた嫌な相手とご対面。早くから防御策を心づもりしてきたつもりだが……。

 でも、やたらと僧んでばかりではいられない。同じ屋根の下に住み、同じ物を食べて暮らす同士ではないか。ゴキブリーも人間か育てたようなもの。 

しかし、仲良くしていくわけにはいかない。人間の生活文化はそれとは違うのだから。お互い神様から与えられた貴い命ではあるが、買い置きのホイホイの力を借りてシュッとひと吹き。ゴメンとそっと手を合わす。
  (2010.05.30 毎日新聞「はがき随筆」掲載 岩国エッセイサロンより

汚職の秘密

2010-06-01 00:06:26 | ペン&ぺん


 業者は、仕事をもらおうと狙いをつけた役人の身辺を徹底的に調べる。家族は? 酒は好きか。好物は。女性関係は。
 好みの店を探し出し、理由をつけて連れ出す。好きな料理、気を引きそうな女性をあてがう。
 まずはワリカンで。二度三度おごったり、おごられたりを繰り返す。役人が独りで店を訪れ、女性の名を告げれば、しめたもの。ころ合いを見て女性に「新しい和服が欲しいな」と、独り言のように言わせれば良い。
 数日後、業者は役人を呼び出し、こう告げる。「最近、おごっていただくばかりで恐縮です。ワリカンと言っては何ですが」。封筒を差し出す。もちろん、仕事をよろしくという趣旨のカネ。和服をあつらえて、わずかにツリが戻る額だ。
    ◇     
 以上は、武村正義著「小さくともキラリと光る国・日本」に出てくるエピソードに多少、言葉を書き足して汚職の背景を描いてみた。ただし、この話を別の角度から(つまり汚職を捜査する側から)描き直すと、以下のようになる。
     ◇
 捜査員は、業者から接待を受けているというウワサの役人に狙いを定める。身辺を洗う。店はどこだ。業者は。接待している女性は。もちろん役人の発注権限や時期も。
 洗い出し、調べを尽くし、任意で呼び出す。質問を繰り返しても役人はワイロの受け取りなんぞ認めない。カネのやり取りは「おごったり、おごられたり。個人的な交際だ」とシラを切る。
 ――捜査員は旅館の名を挙げる。かの女性と同伴した場所だ。日時も。滞在時間まで。尾行の成果だ。「何ですか」。声を裏返す役人に、別のホテル名も突きつける。冷や汗顔の役人は、こう言って自供を始める。
 「汚職は認める。しかし、その件だけは女房に内密に」
 秘密の暴露は、こうして新たな秘密を生む。
 鹿児島支局長・馬原浩 2010/5/31 毎日新聞掲載