狸公殿

　午前6時過ぎ、ラジオ体操に出た時、門の外のプランターの土に大きい穴が。花泥棒？　と疑ったが、落ち葉を掻き回している鳥が来るため、ユリの辺りを確かめると案の定、土を引っ掻いている。もう一度プランターを確かめると根を一塊抜いてあるが、球根は取り去っていない。さーて、これは何かの仕業だ。
　用事で近所を回っていると、５件目の入り口で土に足跡がくっきりと残っているので、主に尋ねると「狸です」と断言。「食べ物を探し回るのでしょう」とのこと。ユリの根も狸の仕業。夕方一片の肉を置いた。
　　鹿児島市　東郷久子　2013/4/18　毎日新聞鹿児島版掲載

ここだけの話

　藤原正彦さんの講演を同郷の友人たちと聴きに行った。ユーモアを交えて祖国への誇りと日本の再生を熱く語り、会場は笑いと感動で満たされた。
　講演会後、私たちは喫茶店で品格とは程遠い話になった。公演日を間違えていた友人がいたり、私も会場の整理券を忘れ、取りに帰ったことを打ち明けた。
　一つ年下の友人が「お二人は後期高齢者なんですから」と、笑いながら車のドアを開けようとしたが、なかなか開かない。やがて他人の車と分かり、大笑いした。みんなで「今日の出来事はここだけの話にしよう」と言いながら別れた。
　　鹿児島市　田中健一郎　2013/4/16　毎日新聞鹿児島版掲載