はがき随筆3月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略、年齢は掲載時)
【月間賞】15日「小さな友」松尾繁(77)=出水市
【佳作】16日「教え子の夢」小村忍(69)=出水市
▽18日「こんにちは」畠中大喜(76)出水市
小さな友 書き出しの一文がいいですね。「寒風」のイメージは屋内に閉じこもるものですが、それが「野鳥」で逆に戸外へと解放してくれます。それに、小鳥の挨拶にむきになるところや、ジョウビタキの姿勢に鹿威しをみるなど、すぐれた表現が目立ちます。野鳥との交感が内容になっていますが、小鳥と人との永い永い「よしみ」を、冬の農作業で実感するところに、人も含めた自然の営みを感じさせてくれる文章です。
教え子の夢 学校の教師は、何となく野暮ったく鈍臭い職業に思われがちですが、子どもの命や人格にかかわる仕事には、他人には分からない悩みも喜びもあります。連絡が取れなくて気がかりだった教え子が、20年ぶりに植物の新種を持って会いに来てくれた。ただそれは夢の中であった、という嬉しいような悲しいような、愛情溢れる文章です。
こんにちは 散歩の途中で出会った、向かい風の中を自転車で帰りながら、挨拶してくれた女子高校生の爽やかさに、挨拶も忘れがちな自分を反省したという内容です。ちょっとした挨拶でも人間関係の潤滑油ですので、それが若い世代に守られていることに希望を見ることができた、心地よい文章です。
次に記憶に残った3編を紹介します。
中鶴裕子さんの「モンキチョウ」は、菜の花の花びらをチョウチョウとみた、3歳のお孫さんの感性の豊かさと柔らかさに、感動したという内容です。確かにこういう感性は持ち続けたいものです。年神貞子さんの「納豆」は、平安末の源義家にまつわる納豆の謂れと、ご自分の納豆製造法を並べて書いたところに、たかが納豆ですが、生活の歴史が感じられる文章になっています。武田静瞭さんの「イークンとひな人形」は、飼っている子猫の可愛さにべったりの文章です。この種の書き方は失敗すると厭味が先走りするものですが、趣味のカメラを通して愛猫をみるという視点があるので、客観的な落ち着きのある文章になっています。
(鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)
【月間賞】15日「小さな友」松尾繁(77)=出水市
【佳作】16日「教え子の夢」小村忍(69)=出水市
▽18日「こんにちは」畠中大喜(76)出水市
小さな友 書き出しの一文がいいですね。「寒風」のイメージは屋内に閉じこもるものですが、それが「野鳥」で逆に戸外へと解放してくれます。それに、小鳥の挨拶にむきになるところや、ジョウビタキの姿勢に鹿威しをみるなど、すぐれた表現が目立ちます。野鳥との交感が内容になっていますが、小鳥と人との永い永い「よしみ」を、冬の農作業で実感するところに、人も含めた自然の営みを感じさせてくれる文章です。
教え子の夢 学校の教師は、何となく野暮ったく鈍臭い職業に思われがちですが、子どもの命や人格にかかわる仕事には、他人には分からない悩みも喜びもあります。連絡が取れなくて気がかりだった教え子が、20年ぶりに植物の新種を持って会いに来てくれた。ただそれは夢の中であった、という嬉しいような悲しいような、愛情溢れる文章です。
こんにちは 散歩の途中で出会った、向かい風の中を自転車で帰りながら、挨拶してくれた女子高校生の爽やかさに、挨拶も忘れがちな自分を反省したという内容です。ちょっとした挨拶でも人間関係の潤滑油ですので、それが若い世代に守られていることに希望を見ることができた、心地よい文章です。
次に記憶に残った3編を紹介します。
中鶴裕子さんの「モンキチョウ」は、菜の花の花びらをチョウチョウとみた、3歳のお孫さんの感性の豊かさと柔らかさに、感動したという内容です。確かにこういう感性は持ち続けたいものです。年神貞子さんの「納豆」は、平安末の源義家にまつわる納豆の謂れと、ご自分の納豆製造法を並べて書いたところに、たかが納豆ですが、生活の歴史が感じられる文章になっています。武田静瞭さんの「イークンとひな人形」は、飼っている子猫の可愛さにべったりの文章です。この種の書き方は失敗すると厭味が先走りするものですが、趣味のカメラを通して愛猫をみるという視点があるので、客観的な落ち着きのある文章になっています。
(鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)