はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

山歩きは面白い

2013-07-06 22:28:36 | はがき随筆
 噴火の痛手を気にしながら中岳散策路へ向かった。地底からの招かれざる客は色彩豊かな小さな砂利に見える。しみじみと踏みしめて歩く。ツツジは白いサンゴのように立ち枯れしていた。それでも元気に花を咲かせている新芽にはほっとする。
 木陰で弁当を広げたその時、夫が声を殺して指をさす。すぐ近くを茶色いうぶ毛のヒナが1羽よちよち歩いている。私は行方を見守った。危険を予知したのか、早足で道端の茂みの中へ。巣立ちには難しそうなところ、無事を祈るばかりだ。
 初めての「ショー付き山ランチ」の味は格別だった。
  薩摩川内市 田中由利子 2013/7/3 毎日新聞鹿児島版掲載

ランドマークツリー

2013-07-06 21:57:51 | はがき随筆

 夏の遮光用にと、部屋の南側に植えたT足りーに、今年初めて小さな白い花が咲いた。遠目には、枝に雪の綿帽子が積もっているように見えた。
 この木は、3年前の転居時に女房の友人から贈られた。豪州原産のハーブ。気が啓太時だけ、水やりなどをしていたが、苗木から今は2メートルを超すまで育った。細い枝に涼しげで香りも良い細い葉をたくさんつけた。
 身もがわくように、5月初めから咲き続けた花に驚いた。植物にうとく、観葉植物と思っていた。開花まで3年かかることも初めて知った。1カ月ほど、我が家のランドマークツリーだった。
  鹿児島市 高橋誠 2013/7/2 毎日新聞鹿児島版掲載

「生まれてバンザイ」

2013-07-06 19:08:06 | 岩国エッセイサロンより
2013年7月 6日 (土)

   岩国市  会 員   吉岡 賢一

息子夫婦に初めての赤ちゃんが生まれた。
2350㌘。手のひらに乗りそうなちっちゃな体がピンクの毛布にくるまれ、バンザイして眠っている。
この世に生まれてきたことを自ら喜んでいるのだろうか。それとも両親や私たちの喜びを察して「生まれてバンザイ」を叫んでくれているのかな。
 初産が帝王切開であっただけに、身二つになった元気な姿と対面した時は思わず心の中でガッツポーズ。
恐る恐る抱き上げる両手に新たな命の鼓動と果てしない夢が広がる。
これから始まる長い付き合い、年など取っていられようか。
  
(2013.07.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載