はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

英語でオレオレ

2013-07-08 22:17:23 | はがき随筆
 元上司の米国人地質学者からEメールがきた。マニラで学会の後、気付くと財布がない。カード類も財布の中なので無効手続きをとった。ホテルに預けた旅券は宿代を払わないと戻らず、帰国もできない。急ぎ3100㌦を送金してほしいという。
 夫は無職でぎりぎりの生活だ。そんな大金は無理だと返信した。2日後、まだマニラにいる、少しでもいいからときた。
 どうしたものかと彼の別居中の妻にメールした。彼のコンピューターがハッカーにやられていた。当人は米国にいる。海外送金を使った振り込め詐欺とは。油断も隙もありゃしない。
  鹿児島市 種子田真理 2013/7/7 毎日新聞鹿児島版掲載

おいの結婚

2013-07-08 18:38:27 | はがき随筆
 先月、おいが結婚した。そのおいが初めて彼女の家にあいさつに行った時、「僕は薩摩の人間ですが、交際を許してもらえますか」と開口一番、彼女の父親に尋ねたそうだ。会津若松在住の父親は快く許してくれたという。
 我が一族が戊辰戦争に行ったとは聞かないし、白虎隊のことも歴上の秘話として知っているだけだ。それなのに、どうしてといぶかしく思った。だが、今でも会津では憎き長州、薩摩として語り継がれていると、彼女から聞いたという。
 迫害された側は幾世代にもわたって伝えていく。近隣国ばかりではなかった。
  出水市 清水昌子 2013/7/8 毎日新聞鹿児島版掲載

おナベの会

2013-07-08 18:29:08 | はがき随筆
 高価な鍋を買ったまま、母を見送っても、なお使わずにしまい込んでいました。
 「由井ちゃん、そろそろ料理講習に出ておいでよ」と誘われて出かけました。
 「マジック鍋は使いこなしていますか? 簡単でおいしくできるでしょう」 
 ハンサムな先生がジョーク交じりで筑前煮、なめこのつくだ煮、蒸しパン、赤飯などをあっというまに仕上げ、試食です。
 「ジェジェジェ。うんまいなあ。失神しそう」と大騒ぎ。
 次回は、海鮮ちらしずしやスープを作るそうで、とても楽しみです。
  阿久根市 別枝由井 2013/7/6 毎日新聞鹿児島版掲載

勉強中

2013-07-08 18:23:28 | はがき随筆
 乗合電車で、たまたま乗り合わせた、見るからにご高齢のご婦人。何と英単語を書きつづったものを、わずかな時間を利用して勉強されていました。私も「六十の手習い」とはいえ、ラジオとテキストを片手に毎朝続けてはいたので興味津々。つい見とれた。
 簡単な英会話ができたらという願いもむなしく今に至る。放送を聞いたからといって、今更バイリンガルになれるわけもない。話せなくてもよいから老化防止になればと目標を下げ、あきらめず投げ出さずに、先輩を見習って努力し続けたい。いつか役立つ時を夢見て。
  鹿屋市 中鶴裕子 2013/7/5 毎日新聞鹿児島版掲載

車椅子の人

2013-07-08 18:17:28 | はがき随筆
 車椅子を押しておられるのは、高齢の男性である。「よいしょ」と小さな声で診察室入り口近くに車椅子を止められた。
 頑張ってと、私は心の中でエールを送る。車椅子の女性は、つらそうな表情でうつむいておられる。視線を止めていると、痛むのか顔までゆがんで見える。でも介護してくださる人がいて幸せだなとぼんやり思った。待合室の人々は、待ちくたびれたように、皆無表情である。 
 そして、名前を呼ばれた男性は、車椅子を押して診察室に入っていかれた。その後ろ姿に、患者もつらいが、家族も大変だいう思いだった。
  鹿児島市 竹之内美知子 2013/7/4 毎日新聞鹿児島版掲載

棚田草刈り 活気戻る

2013-07-08 07:14:45 | 岩国エッセイサロンより

2013年7月 7日 (日)

    岩国市   会 員  片山 清勝

 標高500㍍にある休耕田の雑草刈リボランティアに、初めて参加した。
 棚田を見下ろしながら「かつては児童が150人もいた」と、集落に住む元教員が話した。眼下の田は、明治の初めに圃場整備された歴史を持つという。
 しかし近年、稲の植えられていない荒れ田には、背丈ほどの雑草が茂っている。山間地の問題を目の当たりにし、深刻さを感じる。
 十数台の草刈り機が一斉に仕事を始める。エンジンは小さいがまとまった音に、「久しぶりに活気を感じる」と集落の人の笑顔。
 機械は見る間に雑草を刈り倒す。初めて目にする回転刃の性能に驚いた。昼のむすびを食べながら話を聞く。経験から出る話の奥深さに驚く。
 草刈り機の操作を教わり、慎重にスタート。次第に慣れて、回転刃が雑草を切る感触を感じ始めて、自信が出た。
 倒れた雑草を眺めながらの達成感。次回も参加しようと決めた。

   (2013.07.07 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載