春は別れと出会いの季節。縁側で日差しを浴びていたら、ふっとあの日、汽車に乗って旅立った記憶がよみがえってきた。古里を後に列車が滑り出すと、母ちゃんが「ムイをせずキバレよ」と一言。ホームで見送る両親との寂しい別れだったが、離れて分かる古里のすばらしさ。思うのは古里の山や川、そして日々の暮らしだった。今、古里に帰り、この自然に親しみながら暮らしているが、あの日から四十数年が過ぎた。人生を振り返ると、古里があって親や多くの縁、出会いによって励まされここまで生きてこれた。でもあの日の両親はもういない。
さつま町 小向井一成 2014/4/4 毎日新聞鹿児島版掲載
さつま町 小向井一成 2014/4/4 毎日新聞鹿児島版掲載