はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

特別なつけ揚げ

2014-04-17 12:09:39 | はがき随筆
 

春風と共に私の大好物のつけ揚げが届いた。鹿児島市のKさんが、私の結婚記念日に毎年送ってくれるのだ。「味のある夫婦」になってくださいね――というメッセージであろう。
 Kさんは私が松元中で担任をした生徒で、利発でユーモアに富む人気者だった。3年生の時、若い私に反発したこともあったが、社会に出てからは心が通い合い、彼女は私を結婚式に招いたり、退職を祝ってくれた。
 昨年初め、Kさんたちの還暦同窓会で会ったのに、秋には仲間と遊びに来た情の深い人……。こよいは特別においしいつけ揚げで晩酌を楽しもう。
  出水市 清田文雄 2014/4/17 毎日新聞鹿児島版掲載

私の願い

2014-04-17 11:37:19 | はがき随筆
 やっぱり5月がいい。開け放たれた窓いっぱいに高千穂の峰がそびえる。頂から裾野へと視線を落としていくと、森や草原も正に万緑。時折、心地よい薫風がわが七竅をくすぐる。私は籐寝椅子に身を預ける。身ほとりには、妻お手製のどら焼きとミルクたっぷりのカフェオレ。そして、小鳥たちのさえずりに飽きたら……。サラ・ブライトマンがいい。
 「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」。緑に遊ぶ太陽の光を前進に感じながら、私はゆっくり眠りに落ちていく。そう、こんなふうにソフトランディングしたい。――私の願い――。
  霧島市 久野茂樹 2014/4/16 毎日新聞鹿児島版掲載

古希が舞う

2014-04-17 11:23:17 | はがき随筆


 朝の楽しみはフジの花との対面である。初めて挿し木したので愛着はひとしおだ。
叔母からもらった博多織のブローチと似ている。
 「捨てがたくて、何かできないかしら。使ってちょうだい」と、いただいた古布で作ってみよう。使いこなされた大島紬。縮緬、緋色の帯揚げなど、とてもすてきだ。
 着物から作った花柄のブラウスには同じ布で、黒い服には緋色。ダンス用のブラウスの3色すみれの刺しゅうの上には濃紫。局に合わせて刺しゅうがはねているみたい。古布がよみがえった。舞った。
  阿久根市 別枝由井 2014/4/15 毎日新聞鹿児島版掲載