はがき随筆の3月度の入賞者は次の皆さんです。
【月間賞】10日「母の介護」田中健一郎(75)=鹿児島市東谷山
【佳 作】▽ 21日「あの日の桜」本山るみ子(61)=鹿児島市上荒田町
▽ 25日「ノロ休養日」的場豊子(68)=阿久根市大川
「母の介護」は、骨折した母親の介護の話ですが、介護家庭の研修会というものがあるということを初めて知りました。社会の構造が確実に変化してきているようです。そこで紹介された手紙の内容には一考させられます。母親の見た黒猫の夢、眠りに就く時の母親のむしろ可愛さ、文章全体に優しい雰囲気が流れているところに魅力があります。
「あの日の桜」は、中年になって恋をした人と、別れた時の桜花の思い出です。「人生足別離」という漢詩の一節を、「さよならだけが人生さ」と訳した詩人がいましたが、恋は幾つになっても甘美で、別離は切なく、それゆえに記憶に残ります。まるで少女の文章のようなみずみずしさが素晴らしいと感じました。
「ノロ休養日」は、他人ごとと思っていたノロウイルスに罹って、自宅待機を余儀なくされた。軽症だったので、おかげで、家中の掃除に精を出すことができ、素晴らしい春が来たという、軽妙な文章です。確かに人生は考えようですね。
この他に3編を紹介します。
中鶴裕子さんの「イクメン」は、父親の子育てが話題になっているとは知っていたが、それを病院で実際に見た感動の文章です。子供の大きな泣き声、ハグする父親の優しさ、確かに時代は変わりました。
中島征士さんの「10万年後の安心」は、核廃棄物への不安が切実に書かれています。プルトニウムの半減期から計算すると、安心を得るには10万年かかるという。その時間の幅を逆に遡ると、原生人類の出現よりもかなり以前ということになる。本当に大丈夫だろうか、心配になります。
清田文雄さんの「町の魚屋さん」は、奥さまの体が不自由になって以来、8年間も、電話一本で品物を届けてくれる魚屋さんに感謝を表した文章です。時折オマケをいただくが、それが焼き芋だったので奥さまは大喜び。かつては恐らく当たり前であったこういう光景が、特別の話題になることにも考えされられてしまいます。
(鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)
【月間賞】10日「母の介護」田中健一郎(75)=鹿児島市東谷山
【佳 作】▽ 21日「あの日の桜」本山るみ子(61)=鹿児島市上荒田町
▽ 25日「ノロ休養日」的場豊子(68)=阿久根市大川
「母の介護」は、骨折した母親の介護の話ですが、介護家庭の研修会というものがあるということを初めて知りました。社会の構造が確実に変化してきているようです。そこで紹介された手紙の内容には一考させられます。母親の見た黒猫の夢、眠りに就く時の母親のむしろ可愛さ、文章全体に優しい雰囲気が流れているところに魅力があります。
「あの日の桜」は、中年になって恋をした人と、別れた時の桜花の思い出です。「人生足別離」という漢詩の一節を、「さよならだけが人生さ」と訳した詩人がいましたが、恋は幾つになっても甘美で、別離は切なく、それゆえに記憶に残ります。まるで少女の文章のようなみずみずしさが素晴らしいと感じました。
「ノロ休養日」は、他人ごとと思っていたノロウイルスに罹って、自宅待機を余儀なくされた。軽症だったので、おかげで、家中の掃除に精を出すことができ、素晴らしい春が来たという、軽妙な文章です。確かに人生は考えようですね。
この他に3編を紹介します。
中鶴裕子さんの「イクメン」は、父親の子育てが話題になっているとは知っていたが、それを病院で実際に見た感動の文章です。子供の大きな泣き声、ハグする父親の優しさ、確かに時代は変わりました。
中島征士さんの「10万年後の安心」は、核廃棄物への不安が切実に書かれています。プルトニウムの半減期から計算すると、安心を得るには10万年かかるという。その時間の幅を逆に遡ると、原生人類の出現よりもかなり以前ということになる。本当に大丈夫だろうか、心配になります。
清田文雄さんの「町の魚屋さん」は、奥さまの体が不自由になって以来、8年間も、電話一本で品物を届けてくれる魚屋さんに感謝を表した文章です。時折オマケをいただくが、それが焼き芋だったので奥さまは大喜び。かつては恐らく当たり前であったこういう光景が、特別の話題になることにも考えされられてしまいます。
(鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)