はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆3月度

2014-04-29 14:45:30 | 受賞作品
 はがき随筆の3月度の入賞者は次の皆さんです。

【月間賞】10日「母の介護」田中健一郎(75)=鹿児島市東谷山
【佳 作】▽ 21日「あの日の桜」本山るみ子(61)=鹿児島市上荒田町
     ▽ 25日「ノロ休養日」的場豊子(68)=阿久根市大川


 「母の介護」は、骨折した母親の介護の話ですが、介護家庭の研修会というものがあるということを初めて知りました。社会の構造が確実に変化してきているようです。そこで紹介された手紙の内容には一考させられます。母親の見た黒猫の夢、眠りに就く時の母親のむしろ可愛さ、文章全体に優しい雰囲気が流れているところに魅力があります。
 「あの日の桜」は、中年になって恋をした人と、別れた時の桜花の思い出です。「人生足別離」という漢詩の一節を、「さよならだけが人生さ」と訳した詩人がいましたが、恋は幾つになっても甘美で、別離は切なく、それゆえに記憶に残ります。まるで少女の文章のようなみずみずしさが素晴らしいと感じました。
 「ノロ休養日」は、他人ごとと思っていたノロウイルスに罹って、自宅待機を余儀なくされた。軽症だったので、おかげで、家中の掃除に精を出すことができ、素晴らしい春が来たという、軽妙な文章です。確かに人生は考えようですね。
 この他に3編を紹介します。
 中鶴裕子さんの「イクメン」は、父親の子育てが話題になっているとは知っていたが、それを病院で実際に見た感動の文章です。子供の大きな泣き声、ハグする父親の優しさ、確かに時代は変わりました。
 中島征士さんの「10万年後の安心」は、核廃棄物への不安が切実に書かれています。プルトニウムの半減期から計算すると、安心を得るには10万年かかるという。その時間の幅を逆に遡ると、原生人類の出現よりもかなり以前ということになる。本当に大丈夫だろうか、心配になります。
 清田文雄さんの「町の魚屋さん」は、奥さまの体が不自由になって以来、8年間も、電話一本で品物を届けてくれる魚屋さんに感謝を表した文章です。時折オマケをいただくが、それが焼き芋だったので奥さまは大喜び。かつては恐らく当たり前であったこういう光景が、特別の話題になることにも考えされられてしまいます。
  (鹿児島大学名誉教授 石田忠彦) 

春が来た

2014-04-29 14:38:30 | はがき随筆
 まだ肌寒い早朝、庭に出ると早春の風にジンチョウゲの香りが漂う。見れば、シモクレン、レンギョウ、雪柳が我が家の垣根沿いを旬の彩りで飾っている。思わず両手指先をくっつけてカメラのアングルに見立てのぞき込む。紫、黄、白とコントラストが美しい。時折散歩の人たちが「きれいかなー」と歩みを止め、声をかけてくれる。「雨風にすぐ散ります」と応えるも、束の間の花の競演に浸っている。そんな時、娘から電話がきた。「赤ちゃんができた。帰省して出産する」と。男子とのこと。心がパッと温かくなった。我が家に正真正銘の春が来た。
  出水市 宮地量温 2014/4/24 毎日新聞鹿児島版掲載

おもてなし

2014-04-29 14:27:49 | はがき随筆
 春は各地でウオーキング大会が目白押し。2月は南さつま海道鑑真の道歩き16㌔のコース。3月の龍馬ハネムーンウオーク1日目は18㌔コース、2日目は10㌔コース。4月は霧島温泉駅の里山ウオーク11㌔を完走した。どの大会も天候に恵まれ、県内外から多くの参加者でにぎわった。例の「お・も・て・な・し」の影響か、多大なおもてなしを受け毎回、消費カロリーを摂取カロリーが上回る。坊津の甘いキンカン、温泉卵、定番の豚汁、甘酒、ふくれ菓子……。車で走りなれた道も歩くと新鮮で発見の連続だ。そろそろ春のウオーキングシーズンも終わる。
  垂水市 竹之内政子 2014/4/23 毎日新聞鹿児島版掲載