はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

諭しかた

2015-06-09 01:16:12 | 岩国エッセイサロンより
2015年6月 5日 (金)

岩国市  会 員   片山 清勝



歩道沿いの植え込みに白いものが見える。近づくと「けなげに一生懸命咲いている花を抜いたり切ったりしない事です」と書かれ、抜き取られたくぼみのそばに置かれている。「花泥棒は罪ではない」といわれているが、丹精込めたそれを黙って持っていかれて、美しさを評価されたと喜ぶ人はいない。一文を置かれた人は、持ち去りを直に責めず、小さくても生き物の命の大切さを話しかけている。私なら「盗むな」とだけ書いただろう。

効果ある説き聞かせには、相手の気持ちに優しく入り込める言葉が肝要と教えられる。

     (2015.06.05 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

初めから仏には

2015-06-09 01:12:53 | 岩国エッセイサロンより
2015年5月19日 (火)

岩国市  会 員    貝 良枝

仕事の帰り、1人暮らしの母の家に寄る。今は妹が掃除や食事の世話をしているので、薬を見て世間話をして掃るだけ。  
 妹は時々、母の行動や言葉にイライラして「まー腹がたつ」と私に愚痴る。「まあまあ、怒っても、お母ちゃんはすぐ忘れるんだから、カッカするだけ自分がエライよ」と諭す。
 そんなある日、妹にかわって母の好きなおかずを持って行ったら「魚は嫌いじゃ」と言う。さっと取りあげ、目の前で残飯に入れた。それでも母は、勝手口を出る私に「ありがとう」と言う。悪かったなぁ。鬼になったり仏になったり……。  
    (2015.05.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロン より転載