はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

温泉での出来事

2016-05-09 17:06:12 | はがき随筆
 お花見を満喫し、妹家族と温泉に行った。
 乳白色の「美人の湯」に身を沈めると、まるで美しくを約束したような錯覚になり、心地よく湯煙の中、眼を閉じていた。「そろそろ上がろうか」と妹は湯からあがったとたんにずっこけてしまった。慌てた私は打撲した足を水で冷やしやりながら、大事に至らず安堵した。
 年齢を重ねると気持ちでは分かっていても体がついてこない。何事もほどほどがよいのかもしれないと、お互いすべらないようにと手を取り合い、温泉を出た。
  鹿児島市 竹之内美知子 2016/5/8毎日新聞鹿児島版掲載

花鉢の舞台

2016-05-09 16:49:29 | はがき随筆
 将来は大工さんになりたい小学生の男孫がいる。その大工志向をいいことに、ある日曜日、父親が勝手に物づくりの段取りを始めた。私に何を作ってほしいかとのたもうので、玄関前に花鉢を置く台があればと。
 親子の合作で出来上がったのは祭祀に使うような白木の少し高さのある台。我が家ではこの手作りの台はちょっと目を引く。花をつけそうな鉢を見つけると、ついこの舞台にあげたくなるのだが、2鉢までと決めている。そろそろエビネランが咲きそうなので舞台に引っ越すことになる。自己満足のこの演出はささやかな幸せをくれる。
  霧島市 口町円子 2016/5/7 毎日新聞鹿児島版掲載

積丹半島

2016-05-09 07:42:29 | はがき随筆


 積丹半島に夫と息子3人でホッケ釣りにいった。アザラシやイルカが定着している「シャコタン半島」に行った。かつてはニシン御殿がひしめき合っていたが、沿岸漁業の不振で人口流出が止まらず過疎化が著しい。風光明媚で景観に富み、海岸線一帯はニセコ積丹小樽海岸国定公園に指定されている。
 ホッケは入れ食い状態。日の出を眺めながら食べるオニギリとカップ麺、至福のひとときである。ホッケを開いて甘塩し一夜干しにして、はるか南の出水に送った。出水からは、みずみずしい孟宗竹のタケノコが故郷の香りを包んで届いた。
 札幌市 古井きみえ 2016/5/5 毎日新聞鹿児島版掲載

サル年はクル年

2016-05-09 07:33:55 | はがき随筆
 私は幼少のころからよく夢を見ます。それも色付きです。昔読んだ高木彬光著「占い推理帖手相編」に「色付きの夢を見るのは一万人に一人」と書いてありました。ですから私は一万人に一人の珍しい存在なのです。ですが夢知らせなどは一度も体験したことがありません。ところが、千葉県に住む娘が「子供を連れてそっちに行ってみたい」と電話してきた夢を見たのですが、その翌日カミさんが安納芋を送ったと電話したとき「暇ができたら、娘と一緒に行こうかと考えている」と言ったというのです。初の夢知らせ?
 申年は何かが〝来る〟年かも。
 西之表市 武田静瞭 2016/5/4毎日新聞鹿児島版掲載