はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

会話なき日々

2016-05-22 18:17:25 | はがき随筆
 病院の待合室で高校時代の恩師と偶然一緒になった。当時の先生で健在なのは、市内に住む91歳になる原田先生ただ一人である。あいさつして横に座ると大変喜ばれて会話がはずんだ。
 先生には子どもさんがなく、4年前に奥さまが他界されてからは1人暮らしである。食事や買い物のことなど日々の生活をいろいろと聞いた。不自由な中でも最も寂しいのは、終日会話のない日々が続くことだ。こうして教え子と話す時間がとてもうれしい。会話しながら高校時代を思い出し、私もうれしかったがとてもつらかった。幸い、病院は連休明けで混んでいた。
  志布志市 一木法明 2016/5/22 毎日新聞鹿児島版掲載

贅沢日和

2016-05-22 18:11:41 | はがき随筆
 食器棚の片付け。黒塗りの花模様、卵形のお弁当箱が隅におかれ「あらっ〝粋〟な感じ」。ふたには白い筆文字で「贅沢日和」と描かれていた。早速、鶏の空揚げ、ゆで卵、海鮮サラダとあり合わせを詰めた。公園には桜が豪華絢爛に咲き誇り、花見客を歓迎している。園庭にはブルーシート。グループの輪が広がり宴たけなわ。寄り添う仲間は心温かく和み、感極まった。感慨無量。淡い桜の匂いが辺り一面に漂う。夜の裸電球が夜桜をやさしく照らし、桜の季節の光景をしかと目の奥深くしまう。宝石のごとく高貴に光放つ様は花見贅沢日和かな。
  姶良市 堀美代子 2016/5/21 毎日新聞鹿児島版掲載