「電話ですよ」「はあい」と受話器をとる。テレビで放映された私の描く「昭和の風景」を見た視聴者から「絵を見せてほしい」との突然の電話。懐かしいかやぶきなど生活にじむ絵をテーマに描きつづけている。数日して訪ねて来られた。ランドセルにおかっぱの風景画をじ~と見つめ、忘れていた思いが脳裏によみがえったのでしょう。目に涙をにじませ、この絵は私そのもの、癒されますと一言。涙にはうれし涙、悲し涙とあるが、きっと奥底に何かがあるのだろうと感じた。技術はないが、たった1枚の絵にこんな温もりのある出会いがあった。
鹿児島県さつま町 小向井一成(71) 2019/5/4 毎日新聞鹿児島版掲載