はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

クマ対策の輪広がれ

2019-05-28 19:54:43 | 岩国エッセイサロンより

2019年5月21日 (火)

   岩国市   会 員   吉岡賢一

 岩国市南部で最近、クマの目撃情報が相次いでいる。「クマの餌となる生ごみの扱いに注意し、朝晩の外出時は特別に警戒するように」と、各所の防災スピーカーから、ひっきりなしに警報が発せられている。
 近くには幼稚園や小、中学校も多数あり、児童生徒の通学も危険だ。学校側の安全指導はもちろん、通学路の見守り隊の協力強化や、送り迎えを保護者に呼び掛けるなどの緊急対策がとられている。それでも十分とは言い難い。
 そこで、地域の高齢者という人的資源に協力を仰ぎ、ラジオや笛など音を発する器具を持って、通学路の各所に立っていただく。そういう輪を広げたい。それだけでも当面の力になりそうである。私たちにできることをやりたいものだ。 
 
大切な子どもたちを育てるには、地域の協力なくしては考えられない。互いに確認したいものである。
    (2019.05.21 中国新聞「広場」掲載) 


貴重な両生類 手厚い保護を

2019-05-28 19:54:00 | 岩国エッセイサロンより

2019年5月26日 (日)

   岩国市  会 員   角 智


 山口県東部を流れる錦川は、河口の岩国市から広島湾に注いでいる。 
 中流域の支流の宇佐川は、国の特別天然記念物で「生きた化石」といわれ世界最大の両生類・オオサンショウウオが生息する本州最西端の地とされている。  
 この川は現在、砂防ダム士事に伴い、74匹が保護施設で飼育、一般公開もされていると聞き見学した。
 本来、夜行性のため水槽の土管の中などに隠れている個体が多かったが、体長110㌢、推定年齢95歳と貫禄ある個体もいた。爬虫類と魚類の習性を併せ持つ生体は珍しく、幼生の間は前脚の付け根あたりから体外に突き出たエラで呼吸するが、成長すると肺呼吸に替わるという。
 絶食に耐え、捕食の時以はほとんど動かないが、歯が鋭く、飼育者が指をかまれ出血した写真を見て驚いた。大変貴重な生き物への手厚い保護が必要だ。
   (2019.05.26 朝日新聞「声」掲載)


犬も食わぬ

2019-05-28 19:53:15 | 岩国エッセイサロンより

2019年5月28日 (火)

  岩国市  会 員  村岡 美智子


 日曜日の午後、くだらないことで夫ともめた。「私、出て行く。帰って来ん!」と言い残し、娘も誘って家を出た。本当は帰って来るのだけれど。
 姉のところへ行き、夫のことを愚痴りながら、我々は晩ご飯の時間を楽しく過ごした。夫はひとり寂しく、何かしら食べただろう。その晩帰ってきても、顔を合わせなかった。
 翌朝、夫が謝った。謝ることは苦手で、今まで謝ることはほぼなく、ぶすっとして数日過ごす。しかしながら今回は、冷静に考えて非を認めたようだ。
 ささいなことにもめず、仲良くやろうよ。
 (2019.05.28 毎日新聞「はがき随筆」掲載)


菜の花に想う

2019-05-28 19:40:12 | はがき随筆

 小学6年生の時、菜の花の黄色い風の中スキップで家路へ。すると腕白坊主3人が現れ、私をポカポカ殴って逃げた。泣いて帰るとおとなしい母が学校に告げた。若い男性教師は3人を呼び廊下に立たせ「女子を殴るとはチン玉を持っちょるとか」叱った。今と違う大らかな時代? であったと私は思う。

 先生は「思春期の兆しでしょう。ごめんなさい」と母と私に頭を下げられた。

 あだ名が「赤十字」「僕4銭」「ありっしやん」の3人は今も元気でしょうか。菜の花の咲く時、花言葉「小さな幸せ」と共に心に浮かぶ3人である。

 宮崎県延岡市 逢坂鶴子(92) 2019/5/28 毎日新聞鹿児島版掲載


情緒とは

2019-05-28 19:32:39 | はがき随筆

 「近松門左衛門作品の語彙はシェークスピア作品の語彙より2倍近く多い」というのを20年ほど前何かで読んだ。何が違うのか書いてなくて疑問が残った。

 それが3月21日の本紙、岡潔シンポジウムを読んで解けた。岡氏も藤原正彦氏も、フランスの文化にも英語の語彙にも情緒の概念がないという。人と人、人と自然との間に生れる日本独特の情緒。ドナルド・キーン氏が魅了されたのも、この情緒の世界だったのだろう。

 論理の文化と情緒の文化。岡氏が「日本が人類を救う」という情緒。まだしっかりつかめぬ私。新たな課題が出てきた。

 熊本県八代市 今福和歌子(69) 2019/5/27 毎日新聞鹿児島版掲載

 


あのときの苺

2019-05-28 19:24:43 | はがき随筆

 真っ赤な苺がプランターの縁に下がっている。「今年も苺がとれたよ」と心のなかでつぶやいた。勤務していた中学校の授業資料室の窓際に私の机があり、向かいの棟の特別支援学級の5人の生徒が、担任の先生と中庭で花やトマトを育てていた。ゆっくり語る会話が楽しく聞こえ、時には仲間に入れてもらった。珍しかったジャンボ苺を観察しながら収穫を楽しむ彼ら。収穫を終えたとき3株もらい、その株から出たランナーを苗にして毎年作り続けて30年。彼らは元気にしてるかな。幸せを祈る気持ちがそうさせる。あのときの品種を植え続けている。

 鹿児島県出水市 年神貞子(83) 2019/5/26 毎日新聞鹿児島版掲載


朝は山姥

2019-05-28 19:13:38 | はがき随筆

 「その髪どうしたん」と久しぶりに会った友が、目をまん丸にして驚いている。

 それからしばらくして、自宅庭を紹介する新聞記事にのった私の写真を見た別の友が、「みちがえた上品な髪でいいが」と絶賛。それまで心の中で、モヤモヤと悩み続けていた事が、サーッと霧が晴れた気分。

 「よ~しもう迷わない」と白髪染めを手離した。もうすぐ1年。自然体で生きることの気楽さにすっかりとりこになった。

 ただ朝起きがけに鏡を見ることだけは避けたい。それは正に孫も驚く〝山姥〟そのものなのだから。

 宮崎県日南市 永井ミツ子(71) 2019/5/25 毎日新聞鹿児島版掲載


マジはいつから

2019-05-28 19:06:53 | はがき随筆

 中高生でも「それマジ?」「マジかよ」と盛んに使う。江戸期に一時使われていたと聞くが約40年前の東京でのサラリーマン時代に初めて耳にした。酒の席で「それマジ?」と連発する同僚がいた。おかしくて皆でまねしたことを思い出す。おそらく東京の一部の若者が使っていたのであろう。

 それが今は全国津々浦々、若者が盛んに使っている。若者言葉が次々生れて消えていく中でマジは40年以上も使われ続けている。すっかり市民権を得た形だ。将来、教科書にも採用されるかもしれない。「それマジ?」

 熊本県嘉島町 宮本登(67) 209/5/24 毎日新聞鹿児島版掲載


月間賞に的場さん

2019-05-28 18:46:07 | 受賞作品

はがき随筆4月度の受賞者は次の皆さんでした。(敬称略)

 【月間賞】4日「ジェスチャー」的場豊子=鹿児島県阿久根市

 【佳作】4日「デジタル新聞」増永陽=熊本市中央区

 ▽4日「小さな畑」小野小百合=宮崎県日南市

 ▽16日「心に咲いた花」若宮庸成=鹿児島県志布志市

 

 5月1日に皇太子徳仁さまが新しい天皇の位に即かれ令和の時代が始まりました。

 多くの人が即位を喜び世の中はお祝いムードに包まれています。令和の時代も平和が続くようにと祈るばかりです。

 的場豊子さんは、スイスの高原列車の旅に行こうと、ご主人から誘われた。旅先で言葉が通じるかしら? と不安もあるが、以前エジプトの旅では身ぶり手ぶりで十分に通じたから今回も何とかなるだろうと。「なぜか通じるんです」に作者の女性としてのたくましさとユーモアが感じられて気持ちがいい。思わず拍手を送りました。スイス旅行の後日談も楽しみにしています。

 増永陽さんは、卒寿の方。その日常は驚くほどエネルギッシュです。新聞のデジタル版のプレミアムプランを登録して北海道版やサンデー毎日、エコノミストまで読破されている。高齢になるとIT関連のカタカナ文字は敬遠しがちになりますが、増永さんの文章は最新のIT用語満載です。まさにこの作品は人生百年時代を照らす光です。

 小野小百合さんは、お父さまが残された小さな畑をご夫婦で守っておられる。その日常を自分の心の内を見つめながら書かれて、しっとりとした文章に仕上げました。

 若宮庸成さんの作品。物の不足した時代、衣類に開いた穴にはツギを当てて大事に着ていました。今は使い捨ての時代ですが、だからこそツギを当ててくれた人の暖かさが見にししみて「心に咲いた花」とタイトルにした作者の気持ちが読者に伝わります。

 4日の竹本伸二さんの「食」、17日の古城正巳さんの「反省」も心に残りました。

みやざきエッセイスト・クラブ会員 戸田淳子


予想

2019-05-28 17:55:11 | はがき随筆

 平成最後の新年を迎えた1月5日の毎日新聞の社説に「新元号の発表4月1日」とあった。早速、妻と話し合い、お互い希望の元号を書いて封筒に入れ、発表時に開封しようと引き出しに保管した。

 待っていた4月1日、保管した引き出しを探すが封筒がない。まだボケてはいないよねとお互いを励ますが、分からないままに、昼前のテレビで「令和」が映し出された。考えもしなかった新元号誕生の瞬間だった。翌日の新聞に大きく「和やかな時代を願う」とある。

 私たちの元号案は「幸」のことを書いた覚えがある。

 鹿児島県出水市 宮路量温(72) 2019/5/23 毎日新聞鹿児島版掲載


新学期

2019-05-28 17:47:33 | はがき随筆

 生命保険の仕事で、昼休みの中学校を訪問している。職員室の中にいると、入り口で生徒たちがドアをノックする。

 「1年2組の〇〇です。△△先生に用があってきました。入ってもよろしいでしょうか?」

 声が小さいと中にいる先生たちには聞こえず「どうぞ」と言ってもらえない。言い直して「失礼します。こんにちは」と入ってくる。先生の机までの道順、職員室を出る時の挨拶。それらは細かく決まっていて、間違えるとやり直しをさせられる。

 当然ながら、2年生、3年生はスムーズだ。毎春繰り広げられるこの光景がほほえましい。

 宮崎県延岡市 渡辺比呂美(62) 2019/5/23 毎日新聞鹿児島版掲載


言葉遣い

2019-05-28 17:38:56 | はがき随筆

 ある日、テレビを視聴していたら、演劇を鑑賞した人が「全然面白かった」。また、かなり以前のことだが、登山を終えた人が「全然きつかった」と口にした。

 全然という副詞にはその事柄を全面的に否定する言葉が付加するので「全然面白くなかった」「全然きつくなかった」と言うべきである。

 また「地震の被害者等(など)」と発音しているが、事物の場合は「机や椅子など」、人に関する場合は「熊本地震の被害者等(ら)」「市長等(ら)が出席して」と発音するのが正しい言葉遣いである。

 熊本市東区 竹本伸二(90) 2019/5/23 毎日新聞鹿児島版掲載