はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

若い女優を応援

2019-05-25 22:43:23 | はがき随筆

 劇団民芸の新作「正造の石」を見てきた。足尾鉱毒事件の渦中にある村で育った、無筆の20代半ばの女性の物語。

 田中正造のつてで東京に出、女性活動家宅で女中として働くが、官憲に情報を流す役割を与えられる。石川啄木と出会ったり、活動機関紙に載った詩を読んでもらううちに読み書きをおぼえ、職業婦人を目指すように。演じているのは、鹿児島県出身の森田咲子嬢。市民劇場の例会でも、過去に奈良岡朋子、日色ともゑと共演し、成長著しい。今回も大看板の樫山文枝と互角に渡り合っていた。小さなブーケと応援メッセージを届けた。

 鹿児島市 本山るみ子(66) 2019/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載


日記を続ける

2019-05-25 22:37:19 | はがき随筆

 私は、随分昔から日記を付けている。とは言っても、その日の天候と出来事くらいで、メモと言った方がいいかもしれない。

 昔読んだ作家の忘れられない言葉がある。

 「女性はおしゃべりが上手で何十分でも話をしている。それをそのまま文章にすれば良いのです」

 しかし、いざ文章にするとなるととても難しい。

 けれど、書くという作業は心身を使う事であり、良い認知予防になるのではないかと思い、今日も続けている。

 宮崎県延岡市 木戸浩子(78) 2019/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載


境界の線

2019-05-25 22:30:02 | はがき随筆

 熊本地震の時、阿蘇山は無残に剥がれ血肉をさらす痛々しい姿を見たが、いま採石のために人力でそぐ山肌はそれよりひどい気がする。

 自然のサイクルはこれほどに山を痛めても再生してくれるのだろうか。人知では計り知れない力の均衡、それを犯していないか。あのときの地震も人の手で自然を操った結果が破壊力を増幅した部分はなかったか。人は道路や橋を造るために自然を随分破壊している。しかも調和など構わずに踏み越える。限界がどことも知れない境界を、知らぬ間に人間は越えていないのだろうか?

 熊本県阿蘇市 北窓和代(64) 2019/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載


愛読書

2019-05-25 22:23:10 | はがき随筆

 その本に出会ったのは、20年くらい前、仕事で福岡と宮崎間を往復していた頃だった。待ち時間に売店で薦められ、分厚い本を買った。

 読み始めると、わかりやすく一晩で読み終えた。その後も何度も繰り返し読んだ。第2巻、第3巻と出版されて映画にもなった。あの有名な「ハリーポッター」だ。主人公は男の子で、あらゆる試練を乗り越え、立派な魔法使いになるという物語だ。

 全7巻を買いそろえ、映画も全部見に行った。何度でも読みたくなる心躍るその本は今でも大切にしている。

 宮崎市 藤田綾子(73) 2019/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載


女性騎手

2019-05-25 22:14:33 | はがき随筆

 競馬場には一度も行ったことはないけど競馬は大好きです。番組は必ず見ます。

 新聞に「女性騎手、藤田菜七子騎手(21)」とあり、びっくりしました。どんな人だろうと興味津々でテレビを見ました。黄色にオレンジのシャツ。藤田さんの落ち着いた姿は際立っていました。馬が飛ぶように走り出します。騎手たちのムチが交差します。超カッコイイです。藤田さんムチが見えません。右の手は馬のたてがみを何度もなで下ろしているのです。馬がスピードを出し5位になりました。あの時藤田さんは馬とどんな会話をしたのでしょうか。

 熊本県八代市 相場和子(92) 2019/5/15 毎日新聞鹿児島版掲載


女性騎手

2019-05-25 22:14:33 | はがき随筆

 競馬場には一度も行ったことはないけど競馬は大好きです。番組は必ず見ます。

 新聞に「女性騎手、藤田菜七子騎手(21)」とあり、びっくりしました。どんな人だろうと興味津々でテレビを見ました。黄色にオレンジのシャツ。藤田さんの落ち着いた姿は際立っていました。馬が飛ぶように走り出します。騎手たちのムチが交差します。超カッコイイです。藤田さんムチが見えません。右の手は馬のたてがみを何度もなで下ろしているのです。馬がスピードを出し5位になりました。あの時藤田さんは馬とどんな会話をしたのでしょうか。

 熊本県八代市 相場和子(92) 2019/5/15 毎日新聞鹿児島版掲載


ペットの力

2019-05-25 22:07:49 | はがき随筆

 志布志のペット霊園から、毎年行われているペットの彼岸供養をたのまれ出かけて行った。驚くのは、いつ行っても参加者が多いことである。今回の参加者も約100人とか。四、五十人は座れる霊園のホールには入りきれず、外にはテントが張ってある。参加しているすべての人が、飼っていた犬や猫たちを亡くして悲しんでいるだけでなく、愛するペットが彼岸の世界に生れてほしいと願っている同心の集いである。参加者の中には、志布志市以外からの人も多いという。こんなにも人の心を動かすペットの見えないちからに感動させられる。

 鹿児島県志布志市 一木法明(83) 2019/5/14 毎日新聞鹿児島版掲載


さとうさんは何処

2019-05-25 21:59:40 | はがき随筆

 河津桜と菜の花が咲き誇っていた2月中旬の五ヶ瀬川の堤防。コノハナロードでの花物語の祭りを間近にして仲間数人と化粧直しと称した、結実した菜の花の枝切りや枯れた下葉のはぎ取り作業をしていた。多くの人が花見にきたが、その中の1人の若い女性が手伝いますと、2日間来た。祭りも終わり、その出来事も忘れかけた頃、市外のカメラマンから、仲間のところに写真が送られて来た。風の又三郎のようだった彼女のことを誰もさとうさんとしか知らないから、彼女がモデルの写真を渡すことができない。さとうさんは何処の状態が続いている。

 宮崎県延岡市 露木恵美子(68) 2019/5/13 毎日新聞鹿児島版掲載


孫のみやげ

2019-05-25 20:23:49 | はがき随筆

 孫娘の修学旅行は、京都、奈良であった。古の都は、中学生の目にどう映ったか聞いてみたいが「奈良公園の鹿がかわいかった」とか答えるのでなかろうか。

 私へのおみやげは線香だった。「せんこう?」と思ったが、そういえば私はたまに線香をたいている。事前に決めていたのだろうか。それとも清水寺の売店で「そうだ、じいちゃんには線香がいい」と思ったのだろうか。いずれにしても心に残るおみやげになった。

 今度実家に帰ったとき、両親の墓にあげようと思っている。

 熊本市北区 岡田政雄(71) 2019/5/12 毎日新聞鹿児島版掲載


クマ対策の輪広がれ

2019-05-25 20:22:35 | はがき随筆

2019年5月21日 (火)

    岩国市   会 員   吉岡賢一

 岩国市南部で最近、クマの目撃情報が相次いでいる。「クマの餌となる生ごみの扱いに注意し、朝晩の外出時は特別に警戒するように」と、各所の防災スピーカーから、ひっきりなしに警報が発せられている。
 近くには幼稚園や小、中学校も多数あり、児童生徒の通学も危険だ。学校側の安全指導はもちろん、通学路の見守り隊の協力強化や、送り迎えを保護者に呼び掛けるなどの緊急対策がとられている。それでも十分とは言い難い。
 そこで、地域の高齢者という人的資源に協力を仰ぎ、ラジオや笛など音を発する器具を持って、通学路の各所に立っていただく。そういう輪を広げたい。それだけでも当面の力になりそうである。私たちにできることをやりたいものだ。 
 
大切な子どもたちを育てるには、地域の協力なくしては考えられない。互いに確認したいものである。
    (2019.05.21 中国新聞「広場」掲載) 


同時に

2019-05-25 20:21:50 | 岩国エッセイサロンより

2019年5月14日 (火)

   岩国市  会 員   樽本 久美


 「令和」。なんといい響きであろうか。父が亡くなってから御朱印を始めたが、新しい年になったので、改めて、近くの神社に御朱印をいただきに参った。新年とはまた違った風を感じた。初めていく神社。こんな近くに、このような神社があったなんて。緑がたくさんで、空も青い。 
 「青い空今日も見上げて手を合わす」。私が昔作った川柳だ。川柳を始めて10年余り。なかなかいい旬はできないが、毎日少しずつ作ることが上遠のこつかと思い、老人ホームに入居している母と一緒に川柳を投稿している。2人同時に掲載されることが目標だ。
  (2019.05.14 毎日新聞「はがき随筆」掲載)


約 束

2019-05-25 20:19:28 | 岩国エッセイサロンより

2019年5月11日 (土)

  岩国市  会 員   山本 一


 1969(昭和44)年4月25日に結婚。財産は月賦の終わっていない白黒テレビだけ。祝い金は1000円が相場の時代だ。あれから50年。「記念に海外旅行」と約束していた。
 が、今は全くその気がうせた。理由は飛行機に乗りたくないからだ。これまで海外に行く度に体調を崩した。おまけに「神経性下痢症」の持病もある。
 とはいえ妻は記念日好きだ。こんな時、「お姉ちゃんのいる京都へみんなで行こう」と近くに住む次女からの助け舟。「海外は娘たちと行って」と終活ノートに書こう。あの世で恨まれないように……。
   (2019.05.11 毎日新聞「はがき随筆」掲載)


有りがたい

2019-05-25 20:02:45 | はがき随筆

 平成27年、病を得て入院手術。体重が8㌔近く減り体力も落ち、二つの体操教室を辞めた。市の月1の「初めての短歌」に入会した。3カ月、会員の方の昨歌を聞いていた。すると先生の「どうして出さないのですか」に奮発した。「もののふの修行のごとき句の世界 自分を鼓舞し門前に立つ」を生れて初めて作った。短歌は1首・2首と数える基礎さえ把握していなくて赤っ恥。しかし四苦八苦しつつ2年たった。

 思えば私の病はがんで、聞いたときは衝撃を受けた。が、新たな出会いもあり、ありがたいと思う今日このごろ。

 鹿児島県いちき串木野市 奥吉志代子(70) 2019/5/11 毎日新聞鹿児島版掲載


マトリョーシカ

2019-05-25 19:56:02 | はがき随筆

 

 「ばぁ、ばぁ」孫娘が呼んでいる。アンパーンとかワンワンとか近ごろ話せるようになった。

 私の手を取りサイドボードの前まで連れてくる。上にあるマトリョーシカを取ってくれとせがむのだ。人形を取り出す度に「わー」と喜ぶ。二つに離れたものをつなげようとするがサイズ違いになってうまくいかない。一人で「あれ?」と言いながら、顔の部分だけを一列にきれいに並べていく。このマトリョーシカは船員だったた父が私たち姉妹に買ってくれたものだ。眠っていた人形がまた目覚めて私の孫と遊んでくれる。そして、私は優しかった父を思い出す。

 宮崎市 高木真弓(65) 2019/5/10 毎日新聞鹿児島


5円のはがき

2019-05-25 19:48:51 | はがき随筆

 古い箱から変色した5円はがきの束が見つかった。昔、県外で寮生活していたころ、私が父に宛てた便りで、結びはいつもお金の無心ばかり。先月の繰越金に続いて今月の収支明細など。夏休みに帰省するための旅費など含めてあと2000円欲しいとある。

 父からの返信は字が乱れすぎて判読できないが、2000円挟んであったっけ。驚いて帰省したら父は脳梗塞で倒れて言語もままならず、兄や姉の看病を受けていて数ヵ月後、他界した。何一つ恩返しできなかった親不幸ぶりは60年経ても申し訳なさに胸が張り裂けそうになる。

 熊本県玉名市 大村土美子(80) 2019/5/9 毎日新聞鹿児島