はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

待合室にて

2021-01-07 15:59:04 | はがき随筆
  10月の終わり、指のしびれで整形外科へ。待合室にいると若いスタッフが「本のカバーはなんですか」と。レストランの包装紙を利用していたのだった。
 「20代、30代だからといって縛られなくていいんですよね」。私のジーンズのシャツ、靴のバッシュを見て新鮮に映ったのだろうか、目からうろこの様相だ。
 それから時々ことばを交わした。ある日、開院記念日に患者全員に箱ティッシュが配られた。また来てくださいねに、できるだけ来ないようにしますと答えた。秋の爽やかな日の出会いを、いま思う……。
 鹿児島県薩摩川内市 馬場園征子(79) 2021/1/6 毎日新聞鹿児島版掲載

初冬の庭

2021-01-07 15:51:07 | はがき随筆
 眼科医に「紫外線に注意」と言われて1カ月余りが過ぎた。久々に庭を見回って驚いた。北国からは雪の便りが届くのに、そこから買ってきたシバザクラがかれんな色を見せている。
 キンモクセイはかおりを残しただけで終わり、白ツバキは落ちて茶色に変色している。野ボタンや菊も咲き、ビワの木はボワ~ボワ~とした花をつけている。傍らには、タマネギが連れ合いの性格そのままにきちんと並んでいる。
 甘藷の葉は霜枯れているが、はやり病のせいでひ孫たちも来られない。小さな軍手も出番を待っているのに……。
 宮崎県日向市 榎田安恵(80) 2021/1/5 毎日新聞鹿児島版掲載

睦月

2021-01-07 15:41:12 | はがき随筆
 1月の異称を睦月と言うが、どんな意味があるのだろうか。広辞苑で調べてみると「陰暦正月の異称。むつびのつき」と記載してあった。むつびとは何だろう?「慣れ親しんで心安くなること」だそうだ。小学生当時、冬休みは無論のこと、日曜日もクラスの者たちが寒さに負けず、独楽回し、ラムネの玉遊び、凧揚げ、竹馬乗りなどで仲睦まじく遊んだ。
 同級会の折に、そんな共通した遊びが話題になったものだ。後期高齢化して同級会も絶えてしまった。睦月に限らず1年間を通じてみんなが仲睦まじく小学校生活を過ごしたものだ。
 熊本市東区 竹本伸二(92) 2021/1/4 毎日新聞鹿児島版掲載

前進ある日々

2021-01-07 15:30:03 | はがき随筆
 5.6年前取りつけた太陽熱温水器から、屋根を伝わり水漏れがぽたぽた。心に落ち着きがなく気になる。以前依頼した会社が、年1回は見にきますとのことで安心。その後全く見えない。出費と連絡先をちゃんと出納帳に記入したが、過ぎた帳簿の調査が面倒な81歳。なんとか類似の会社から気軽に出張くださり、屋根瓦の上によじ登り、活気ある真剣な動きでの仕事ぶり。いくらその道の専門家とはいえ敬服の限り。胸中すっきりした。小説家伊集院静さんが、人生わからないことばかり、それでよいと。日々、一歩でも二歩でも前進したいものだ。
 鹿児島県肝付町 鳥取部京子(81) 2021/1/3 毎日新聞鹿児島版掲載