はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

96歳の生き様 

2021-01-25 12:14:13 | はがき随筆
 世界を恐怖に陥れた疫病が 終息しないままに迎えた今和 3 (2021) 年。綾子おばさんは何と96歳になる。
 実はこの96歳、6年ほど前 に連れ合いを亡くし、今日まで一人暮らしを続けているのだが、先日電話をくれて「今、 おうちに居ますか。 じゃあ、 来るからね」。
 てっきり、どなたかの車で 送ってもらうのかと思いきや お裾分けの食料を背中のリュックにいっぱい詰め、2、3㌔もある山道をつえを頼りに歩いてきたのにはびっくり。「マスク、忘れちゃったわ」とおちゃめに笑い「お茶なら飲んできたから要らない」と、椅子に腰掛けるでもなく小一 時間ほどしゃべって帰途に。
 「帰りは車で送るから」とのこちらの提案も一蹴。葛根やら何やらの体に良い植物を探しながら帰ると言う。 俳優の笠智衆さんみたいに片手を上げて、どなたかに頂いたという赤い靴が、うねうねと続く山道を右に曲がり、やがて消えていった。「あんなに元気な96歳、見たことがないよね」と妻と話す。
  綾子おばさんに、かねて聞 こうと思っていた疑問をぶつ けてみた。「おばさんもくよくよすることあるの」「そりゃ、  あなた、私だっていろいろあるわよ」。お子さんも無く、  親族とのぎくしゃくもあって  夜眠れない日もあると言う。  
 さて、今年72歳の私。彼女のすてきな生き様を見習い、ゆるゆると老い坂を下ってい こうと考えている。 
 鹿児島県霧島市  久野茂樹 71歳 2021.1.4 男の気持ち欄掲載

公園の散歩道

2021-01-25 12:04:15 | はがき随筆
 永年続けてきた早朝散歩も、 1月より暫く時間をずらすこ とに。子供から、寒さと暗さが 心配だからと。強がりを言う年 でもなく、素直に受け入れる。 新聞を読み終えた昼前、いつものコースへ。校区公園に到着。 まずトイレのボランティア。ペ ーパー確認ほか。暖かな日差しの中では、ブランコや鬼ごっこ。小さな凧を揚げようと走るお父さん。幼子もついて走る。みんなの元気な声を聞きながら、歩 道を3周。コロナから解放され たような一時は、マスクで現実を知らされる。いつ終わるか知れないコロナ。万歩計を記録し、 足だけでも鍛えておこう。
 熊本市中央区 原田初枝(90)  2021.1.2 毎日新聞鹿児島版掲載