はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「まさか」と思わずに

2013-05-29 19:33:21 | ペン&ぺん

 既に梅雨入りしていた奄美に加え、九州、中国、四国地方も梅雨入りした。日本気象協会九州支社(福岡市)によると、6月の降雨量は例年比で120%を超す傾向という。皆さん、備えは大丈夫ですか。
 私が鹿屋通信部に赴任したのは1994年。県内が甚大な被害に見舞われた93年の「8・6水害」の翌年だった。大隅半島も至る所で土砂崩れや道路陥没など豪雨の爪痕が残っていた。死者・行方不明者49人。今も、危機一髪で難を逃れた人たちのドラマがテレビで再現されたり、当時の惨状が新聞やテレビで報道されたりする。それらを見るとやはり、すさまじかったのだ。
 仕事柄、大事件や大事故が発生すると、我々は多くの記者を現場に向かわせ、あらゆる手段を使って、最新で正確な情報を集めて紙面ほ作る。「押っ取り刀」で現場に向かうが、最初に入ってきた一報と異なり「大したこと」でない場合も多い。そんな時は撤収すればいいだけ。「おや!」「えっ~!」という情報が入ってきたら、先輩たちから「大騒ぎをしろ」と教えられてきた。
 私たちは東日本大震災で、想像をはるかに超えた大津波や「安全」だったはずの原発の事故を目の当たりにした。3・11で、もう「想定外」という言葉は使えないことを学習した。いや、鹿児島の皆さんの方が20年前に学んでいるのだ。「自分(我が家)は大丈夫だ」「たいしたことはないだろう」と根拠のない考えは持ってはならない。
 15年ぶりの鹿児島勤務で私は初めて「空振」を体感した。「ドーン」という音は驚異だった。鹿児島にいる私たちは豪雨も桜島も、避けて暮らせない。鹿児島地方気象台の情報に耳を傾け、もう一度、避難場所を確認したい。「ここは大丈夫」「まさか」と思わず、自然災害は「何でもあり」の構えで命を守りたい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎

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