はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

空振と大食堂

2013-05-22 13:33:26 | ペン&ぺん

 14日午後10時6分、支局で仕事をしていると「ドーン」。交通事故で車がぶつかったか、突風の音かと思った。記者が何度も気象台に電話をかけたが、話し中。ようやくつながり、音の正体が桜島の「空振」と分かった。かつて鹿屋通信部で4年勤務したが、空振は記憶にない。爆発音、体感空振ともに「中」だが、空振初体験の私には衝撃波だった。改めて鹿児島を〝体感〟した。
 横断歩道を渡っていると多くのドライバーが歩行者が渡り終えるのを当たり前のように待っていてくれる。「早く渡れ」と言わんばかりにエンジンをふかす人が多いこのご時世に、ホッとする。エレベーターに乗ると、他人同士が会釈をして降りていく姿をよく見かける。都市部では見られない光景だ。他人を思いやる、いたわるという心が、まだ廃れていない。
 今月初めの連休、妻と娘2人がやって来た。17年前、鹿屋市で生まれたばかりの長女と3人で時々、鹿児島市を訪ねた。まだ西駅の名も三越もあった。今回、家族4人で山形屋7階ファミリーレストランで昼食を取った。午後2時を過ぎても赤ちゃん~お年寄りと幅広い年齢層で埋まっている。連休だけが、理由ではないだろう。
 山形屋によると、1943(昭和18)年7月1日から現在のスタイルになったという。かた焼きそば、レディースセット、お子様ランチが人気で、庶民的な雰囲気、幅広いメニューがうれしい。子供の頃、あまり連れていってはもらえなかったが、たまに大食堂に行くと幸せな気分になった。私の郷里にあった「大洋デパート」大食堂のことだ。昭和30、40年代に子供時代を過ごした私に、大食堂は亡父にせがんで行った思い出の空間。娘たちにとっても、桜島を眺め、大食堂で食事をするのはかなりのぜいたくで、「友達に自慢する」と言って帰っていった。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎

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