はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

重い課題

2012-02-08 15:38:08 | ペン&ぺん
 青空に浮かぶクジラやカメ。手前にはゾウやキリンが歩く緑の大地。その奥にツタのような植物が絡みついた原子力発電所の施設──。そんな空想的で奇抜な絵を描いたパンフレットが目を引いた。
 「3・11さよなら原発!かごしまパレード」への参加を呼びかけるものだ。催しは3月11日、鹿児島市のJR鹿児島中央駅東口広場であり、東日本大震災の復興支援のチャリティーマーケットも行われる。
 再稼働に賛成であれ、反対であれ、震災と福島第1原発事故のあと、どう原発と向き合っていくかは大きな社会的関心事となっている。
 「これから社会に出ていく大学生の皆さんは本当に大変だと思う。あまりにも大きな負の遺産を背負うことになるからです」
     ◇
 TBSテレビ番組「報道特集」キャスターの金平茂紀さんが語った言葉が印象に残った。先日、鹿児島大で開かれた「原発とメディア」をテーマにしたシンポジウムの基調講演で、福島第1原発を廃炉にするために40年から50年要することに触れた時だ。
 40年と言えば、社会人になって、仕事を持って定年退職するまでの年月になる。その間、何らかの形で社会的なコストを延々と支払い続けることになる。
 シンポジウムには、原発事故後、千葉から県内に移住した矢田部史崇さんもパネリストとして参加。原発で爆発が起きた直後「テレビや新聞には逃げるべきかどうかの判断に役立つ情報がなかった」という厳しい指摘があった。
 もしも仮に川内前発で同じような事故が起きた場合、読者に役立つ情報を届けられるかどうか。情報が入り乱れるだろう事故後に、的確に情報を取捨選択できるのか。シンポジウムに参加し、重い課題を提示されたと感じた。
 鹿児島支局長 馬原浩 2012/2/6 毎日新聞掲載

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