はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

積み重ね

2011-05-23 21:19:58 | ペン&ぺん
 ナイトゲーム用の照明がグラウンドを照らし出す。人工芝は濃い緑。白く光るボール。それを追う選手たちの声が響く。「外、外」「左、左」とパスコースを叫ぶ。
 木曜日の夜8時すぎ。鹿児島市鴨池新町の緑地公園。練習する社会人サッカーチーム、FCカゴシマを訪ねた。
 発足2年目。現在は九州リーグ(所属10チーム)で上位に食い込んでいる。目指すはJFLを経て、Jリーグ入り。その目標に向け、選手たちは汗を流し続ける。
   ◇
 「プロスポーツで地域を幸せにしよう」。そう題し、小原爽子・鹿屋体育大広報戦略アドバイザーが鹿児島地域経済研究所発行「地域経済情報」5月号に寄稿している。
 その中で、サガン鳥栖やロアッソ熊本などJ2チームのホームタウンと鹿児島市を比較。人口規模、事業所数、母体企業などを表にまとめ「鹿児島市のポテンシャル(潜在能力)は他に比べて大きく見劣りするものではない」と指摘している。将来的には、鹿児島市をホームとするJリーグのチームが誕生しても不思議ではない。
 寄稿文に印象的な部分がある。山梨県甲府市で聞いたタクシードライバーの言葉だ。以下抜粋。
 「サッカーには興味がないから、観戦に行ったことはない。でも、この街からヴァンフォーレ甲府がなくなるなんて考えられない。ヴァンフォーレが初めてJ1に上がった時には、本当に街中が盛り上がったし、喜んだ」
 寄稿文は、こう記す。
「プロスポーツクラブは活用次第で地域にさまざまな効果をもたらす『地域の財産』となりうる」
   ◇
 練習は続く。夜の空気が少しずつ冷えていく。「アップ、アップ!」。選手が息荒く叫ぶ。
 この練習の積み重ねの向こうに、チームが「地域の財産」になる道が続いている。そう選手やサポーターは信じている。
  鹿児島支局長  馬原浩 2011/5/23 毎日新聞掲載

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