はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

絶景の下で

2007-01-29 16:15:24 | かごんま便り


 海の向こうには開聞岳がそびえている。まさに絶景。思わず携帯電話のカメラで写真を撮り、その場から友人たちに送った。天の邪鬼の私も、頴娃町の番所鼻講演の景色には素直に感動した。
 松島(宮城県)、天の橋立(京都府)、厳島(広島県)は有名な日本三景。しかし、番所鼻公園は、それ以上の美しさなのであろう。江戸時代に全国を歩いて初めて実測地図を作った伊能忠敬が「けだし天下の絶景なり」と賞賛した場所という。
 同じ「絶景かな」の言葉でも、歌舞伎の舞台で石川五右衛門が京都・南禅寺の山門上で言う台詞「絶景かな、絶景かな、春の眺めが値千金とは小さなたとえ……」がある。これは芝居上の言葉である。それに比べて、忠敬の「けだし天下の絶景かな」は重みがある。測量の途中では当然、有名な三景も見たであろう。それよりも「けだし天下の絶景なり」と、最大級の賛辞を付けて番所鼻公園の景観を褒めたのは、本当であろうと思わせる。
 さらに早春の潮騒と海の色は、学生時代の伊豆半島の旅行を思い出させた。25年以上前になるが、伊豆で見た海の色に似ていたからだ。ちょうど今ごろ、節分の前だった。
 旅館の主人から節分の時の節分の時の掛け声「おにはそと、ふくはうち」の意味を聞いた。漢字で書くと「遠人疎途(おにはそと)不苦者有智(ふくはうち)」になるそうだ。 
 遠仁者疎途=おもいやり、いつくしむ事が「仁」。これを遠ざけている者は、人の途(みち)からはずれている。
 不苦者有智=「智」は物事の分別がある事。これを持っている人は、何があっても動じない。
 こんな意味だった。私に教えてくれた主人は、旅の禅僧から教えてもらったそうだ。
 節分は悪鬼を払う豆まきが定番である。太巻きを食べる人も多くなっているようだ。数年前に関西出身の同僚の音頭で職場で試してみた。何でも食べている時はしゃべってはいけないらしい。男が数人、その年の恵方を向いて黙って食べた。異様な雰囲気で一斉に吹き出してしまった覚えがある。
 伝統行事の本来の意味が忘れられている習慣も多い。最近は何かに付け「遠人疎途不苦者有智」を思い出すようになった。
 番所鼻公園の写真を送った友人たちからの返事は一様に「今度、連れて行け」だった。
 毎日新聞鹿児島支局長 竹本啓自 2007/1/29掲載
 
 写真は本文と関係ありません。

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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
番所鼻公園 (アカショウビン)
2007-02-13 08:45:43
番所鼻公園からの開聞岳ではありませんが、お読み下さる方に開聞岳のイメージをお届けしたくて…。
借り物写真でご期待に添えずごめんなさい。
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ごめんなさいね (アカショウビン)
2007-02-13 01:33:58
どうしても手に入らない写真は、フォトライブラリから購入したり、リンクフリーの画像を使っています。支局長にお借りしようかなあと思いましたが、お忙しい方なので遠慮してしまいました。
借り物の場合は必ず注釈をいれますのでご容赦のほどお願いいたします。
またお気づきの点はご指摘ください、よろしくお願いします。
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Unknown (Unknown)
2007-02-12 21:24:17
写真と本文が関係ないなんて、ちょっと拍子抜けですよね。
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Junさま ようこそ (アカショウビン)
2007-01-31 17:32:28
コメント有難うございました。
いつもお読みいただき有難うございます。
はがき随筆関連のアップだけで、ふうふう言ってますが、もっともっと地元の紹介もしなきゃいけませんね。
竹本支局長にお願いしときます。

お気に入りに入れて頂き嬉しいです。

Junさまのページもよろしかったら教えてくださいな。


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Unknown (Jun)
2007-01-30 22:44:16
番所鼻公園から見た開聞岳の写真懐かしく拝見しました。鹿児島県出身です。3年前に里帰りした時に
行って来ました。いつもブログ読んでいます。
これからも鹿児島のことをブログに書いてください。
お気に入りに入れていつでも見れるようにしています。
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