雷が鳴るといつも思い出す。中学1年生の時、母とたんぼでとても怖い思いをしたことを。
母はクワで泥をすくい畦を、お菓子のように仕上げている。私は近くで草刈りのまねや、泥をつぶしたりして遊んでいた。
ピカッ、バリバリ、ズドーン。耳をつんざくものすごい音と光。母は悲鳴を上げる私に「鎌を捨てて!」と叫び、飛びかかり素早く土手の片隅にうずくまった。大雨と雷鳴は容赦なく襲い、必死に守る母のときめく胸の下で耳をふさぎ、祈る思いで通り過ぎるのを待った。
ずぶぬれのまま雷の怖さに驚き、しばらく抱き合っていた。
薩摩川内市 田中由利子(69) 010/7/30 毎日新聞鹿児島版掲載
母はクワで泥をすくい畦を、お菓子のように仕上げている。私は近くで草刈りのまねや、泥をつぶしたりして遊んでいた。
ピカッ、バリバリ、ズドーン。耳をつんざくものすごい音と光。母は悲鳴を上げる私に「鎌を捨てて!」と叫び、飛びかかり素早く土手の片隅にうずくまった。大雨と雷鳴は容赦なく襲い、必死に守る母のときめく胸の下で耳をふさぎ、祈る思いで通り過ぎるのを待った。
ずぶぬれのまま雷の怖さに驚き、しばらく抱き合っていた。
薩摩川内市 田中由利子(69) 010/7/30 毎日新聞鹿児島版掲載