はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

プヨプヨ

2022-07-30 21:26:35 | はがき随筆
 5歳の孫が毎日のように「バアバアと一緒に寝る」とうれしい事を言う。娘が「なぜバアバアがいいの」と尋ねた。「プヨプヨしているから」と孫。ショック! あぜんとした。それって太っていることじゃないか。
 そばで聞いていた夫がニヤッとして「プヨプヨとー」とはやし立てカチンときた。その上妹らにまで知らせる始末。夫と寝ようとしないのでひがんでいるのだ。しかし寝るのはいいが、布団は蹴るは動き回り私を手枕腹枕にして寝た心地がしない。
 いつまで一緒に寝たいと言ってくれるのか。とりあえずプヨプヨをどうにかせねば。 
 宮崎県串間市 林和江(65) 2022.7.10 毎日新聞鹿児島版掲載

かわいい!

2022-07-30 21:18:11 | はがき随筆
 5.6弁の花は芯の方が白く外に向かって薄ピンク。そのグラデーションが上品でかわいい。道端ではじけそうになった種を持ち帰ってばらまいたのが、今夏も庭のあちこちで咲き出した。ヒガンバナ科? 名前は? ハサミ使いに興味を持ち始めた2歳の孫が「僕がおはなチョキチョキする」と言う。安全なハサミで花の終わった茎を切らせた。するとやがて蕾がまたにょっきり出てきた。何と今、三番花が咲いている。花殻摘みという園芸作業はこんな効果をもたらすのだと納得。何度も楽しませてくれる花もちょいちょいやってくる孫もかわいい!
 熊本市中央区 渡邊布威(84) 2022.7.9 毎日新聞鹿児島版掲載 

遼太郎のこと

2022-07-30 21:11:13 | はがき随筆
 15歳を過ぎた遼太郎は、愛犬の名前です。志布志湾の堤防下に捨てられていた子犬が、散歩する僕から離れず家まで来てしまい、カミさんの一声でわが家の家族になった。当時ゴルフ界に爽やかに登場した石川遼から名付けたのが遼太郎。
 動物の子は何をやっても可愛い。カミさんはメロメロで、自分が食べずとも「遼太郎には」と買い与える。気付くと我が家の真ん中に君臨している始末。
 しかし、去年の年明け早々2階の大手術を経験、生還に安堵した結果、一層わがままな老犬になった。お互い老いゆく身、折り合ってゆくしかない。
 鹿児島県志布志市 若宮庸成(82) 2022.7.9 毎日新聞鹿児島版掲載

百年ぬか床

2022-07-30 21:01:35 | はがき随筆
 漬物はおいしい。作るのは楽しい。好評だと嬉しい。
 昨年の冬は大根付けを作った。塩漬けして締めた大根を甘酢に漬け込んだもの。タカノツメが利き過ぎたが、のんべえには好評の手みやげとなった。
 今年の夏はぬか漬けにトライ。米ぬかと塩を基本にコンブとタカノツメを混ぜる。水を加えて程良い固さになったところで。知人から分けてもらった一握りのぬか種を入れる。「祖父母の代から引き継いでいるので百年以上よ」との話。4.5日でフカフカの百年ぬか床となった。
 畑のナス、キュウリがそろそろ収穫で出来るようになった。
 宮崎県延岡市 太田充(68) 2022.7.9 毎日新聞鹿児島版掲載

初夏の山

2022-07-30 20:54:57 | はがき随筆
 春の立田山はまだ緑が浅く、なだらかな丘の流れに見えた。太陽と雨の恵みを存分に受けた木々は繁茂し、どっしりとした風格の山になった。
 山の斜面の一連の建物は緑をバックに白く光り、異国の風景を思わせるハイカラな眺めになった。梅雨の晴れ間の青空には夏雲が力強く湧き、涼風が吹き渡り、ひととき梅雨の蒸し暑さを忘れさせてくれる。
 竹林の竹はぐーんと伸びて奔放にしなっている。お向かいのホームは静かに時を刻み、窓の下のひまわりも。小さなリズムが手をつないで優美なハーモニーを奏でている。 
 熊本市東区 黒田あや子(90) 2020.7.9 毎日新聞鹿児島版掲載

かわいい手紙

2022-07-30 20:46:27 | はがき随筆
 ある土曜の朝「ガチャン」と玄関のポストの音。なんだろうと開けて見ると、紙を八つ折りにした物がぽろりと落ちた。
 「いつもあそんでくれてありがとう。おじちゃん絵かくのがんばってね~ファイト」と短い手書きに可愛い絵がそえてあった。なんとみくちゃんからの手紙。彼女の素直な心が文に表れ、気持ちが十分に伝わってきた。みくちゃんは時折、アトリエをのぞきにきて「何の絵?」「上手だね」と話し掛けてくれる小1の女の子である。
 僕は決して文も字も上手でないが、誰かにちゃんと伝えようと思う時は手書きが一番かも。
 鹿児島県さつま町 小向井一成(74) 2022.7.9 毎日新聞鹿児島版掲載

わさび味噌

2022-07-30 20:37:13 | はがき随筆
 畑のキュウリがなりだした。夫はキュウリにわさび味噌を付けて酒のつまみにする。この時期になると道の駅坂谷に買いに行く。「明日9時には出るぞ」と誘われ、久しぶりにアジサイロードを通った。裸山、重機が入り伐採中の山が続く景色は以前とり違って見えた。
 道の駅に着き、店員に尋ねると「山の伐採で環境がかわりわさびが作れなくなり品物はない」との返事に驚き落胆した。農家に同情すると共にとんだとばっちりを受けた思いがする。金山寺味噌や他のもろみで食べているが、わさび味噌が恋しい。
 宮崎県串間市 武田ゆきえ(67) 2022.7.9 毎日新聞鹿児島版掲載

クローバーの上で

2022-07-30 20:29:09 | はがき随筆
 「よ~し、今日こそは見つけるぞ」と気合を入れ、シート持参で近くのグラウンドへ出かける。そこはクローバーが広がっており、ロマンチックな散歩コース仕様になっている。
 クローバーの中に座り、深呼吸。「四つ葉のクローバー、四つ葉のクローバー」と言いながらキョロキョロ。なかなか見つからないが、ないはずはないと信じつつ、目を凝らす。両手でクローバーをなでて探す。
 もう今日はやめようかと思う頃、そこにあるではないか。ドキドキが一気に押し寄せる。何かいい事がありそうな。なんという乙女心。
 熊本県八代市 鍬本恵子(76) 2022.7.9 毎日新聞鹿児島版掲載

リモートデビュー

2022-07-29 21:51:24 | はがき随筆
 ボランティアの水泳コーチの更新は「リモート参加で」ときた。さっぱりやり方が分からない。恐る恐るホームページを開いて入力したら、受講可と返信があり早々と待機。ところがところが突然開始時刻に画面が消えた。「焦るなよ落ち着け」。最初から立ち上げ5分遅れで入室できた。
 講義中は、1分内で理解度をチェックする問題が多く、瞬時に正解と理解率がでたのには驚いた。試験ではなかったが、講師は不出来な私の答えが見えているはず。参加者から質問が出たが、私は余裕が無かった。時間と金をかけていろいろな講習にでかけたなぁ。コロナ前は。
 宮崎市 津曲久美(64) 2022.7.7 毎日新聞鹿児島版掲載

世界に一つの本

2022-07-29 21:06:59 | はがき随筆
 世界に一つしかない不思議な本です。色は虹色七色。毎日書き続けています。その本の名前は人生。同じ本はありません。心というペンで走るように書ける時もあれば、涙雨で書けない時もあります。明るく楽しい夢いっぱいの本にしたいです。歴史に名を残した人々は一つの本を書き上げた人々です。人生のお手本です。心を引っ張ってくれます。梅雨が明けて青空が広がり、心の隅々まで広がっていくようです。眠っていたチューリップやコデマリ草が、開き始めました。神様の手が動き始めました。今日のページに書きましょう。感謝の心を添えて。
 熊本県八代市 相場和子(95) 2022.7.6 毎日新聞鹿児島版掲載 

自家焙煎

2022-07-29 20:58:29 | はがき随筆
 大型連休のただ中、ひたすら山小屋のいろりを囲み、お茶作りに専念するのが夫の年中行事だ。まず無農薬の茶畑の草取りに剪定と続き、淡い緑の新芽が成長すると、いよいよ茶摘みの開始。茶葉作りに通うこと1週間。火の近くは熱い。顔から流れる汗をぬぐい、煙にいぶされながらの作業は大変だった。
 鉄の大鍋で煎り、ブリキの茶つぼに詰め完成。昔ながらの自家焙煎は代々、伝承されてきた。その一杯の香りと深い味わいは格別だった。飲みながら「苦労した甲斐があった」とほほえむ夫に「ご苦労様」。
 鹿児島県鹿屋市 中鶴裕子(72) 2022.7.5 毎日新聞鹿児島版掲載

母を想う

2022-07-29 20:49:50 | はがき随筆
 「妹はいいなぁ」と、二つ違いの姉は私のことをずっと羨ましがっていた。
 幼い頃、末っ子の私は母と寝床が一緒だった。母は柔らかくあたたかで、毎晩安心と極楽の気分だった。一方、姉は父と寝ていたが、痩せ気味の父はゴツゴツと固く冷たく冬などは足元がなかなか暖まらなかったと今でもボヤくことがある。
 その後、父は病に倒れ、高齢になった母を、独り身の自分が在宅介護する生活が始まった。寝たきりの母を見送るまでの8年間、再び私が母を独り占めにさせてもらった。
 時折そのぬくもりが恋しい。
 宮崎市 藤田悦子(74) 2022.7.4 毎日新聞鹿児島版掲載

ひまご

2022-07-29 20:34:47 | はがき随筆
 福岡市に在住している孫娘が一昨年に結婚して去年の12月に娘を出産した。私にとっては初の曾孫である。その子を抱いて夫が運転する車で来訪した。
 早速抱かせてもらったが、半年ほど過ぎているので、体が大きくて元気よく手足を動かしていた。「ひいおじいちゃんだよ」と声をかけると、ニコッと笑ったような気がした。 
 4.5年も過ぎたら「ひいじいちゃん、こんにちは」と言ってくるだろうな。そんなことを想像した。でも、その頃の私は百歳近くになっている。現在は健康体で元気な状態を保持している。それを続けたいものだ。
 熊本市東区 竹本伸二(94) 2022.7.3 毎日新聞鹿児島版掲載

砂の道、指宿の旅

2022-07-29 20:26:09 | はがき随筆
 干潮時に出現する砂の道を歩いて指宿の知林ヶ島へ渡る人たちを何度かテレビで見た。「私もいつか」と願い、このたび帰省した娘たちと挑戦した。
 その日は中潮だったが、午後から歩けるという。1時過ぎに行くと、もう広い砂の道を歩く人たちが見える。私たちも後を追う。右も左も海。私は右側の渚を歩く。引き潮の波が穏やかに寄せて来る。と思いきや時折大波が来て靴をぬらしそうになる。高地に暮らしているので久しぶりの浜辺での戯れが楽しい。
 小雨が降り出してきた。島の展望台まで登るつもりが、歩けただけでよしとして終了。
 鹿児島県霧島市 秋峯いくよ(82) 2022.7.2 毎日新聞鹿児島版掲載

カミさんあっての

2022-07-28 16:16:50 | はがき随筆
 朝からシトシト雨が降っている。庭のイエローのスカシユリが、雨にぬれてしっとりとした緑の中でひと際さえてみえた。カメラに収めたいが雨……。だが天は我に味方してくれた。午後になったらやんだのだ。
 外に出るために、カミさんに靴、杖、椅子を持ってきてもらい、何とか撮影ができた。
 カミさんは「1000㍉くらいの望遠レンズがあれば、縁側からでも撮れるのだけれどね」という私のつぶやきには耳を貸さず「ついでに私も撮って」とVサイン。いまや我が家は、カミさんの思い通りに動かざるを得ないようになっている。
 鹿児島県西之表市 武田静瞭(85) 2022.7.2 毎日新聞鹿児島版掲載