四国遍路で田舎道や山中を歩くと様々な思いが心を過ぎる。
歩いても行けども人影が見えない。人家は田や畑の遥か彼方、山道からは遥か下方に小さく見える。
路傍の名も知れない野草の花は眼に優しく、小鳥の鳴き声が耳に飛び込み、田舎の匂いを鼻で感じ、沢水で舌を潤し、風が火照った身を冷やしてくれ、心地よさを意識する。
経験が阿頼耶識に蓄積され、末那識が遍路を継続させる。
金が無くても、文明の利器を使わなくても目的は達成できる。
浅知恵で自然を改造した都市は無駄が満ち溢れ、喜びよりも悩みが多く、不便極まりない。