新型旅客機 １１号

巨大旅客機のメーカーは、アメリカのボーイングと欧州連合のエアバスの二極構造に集約されている。昔は沢山の航空機メーカーがあったが、巨大化・高度化・複雑化する飛行機の開発をするためには、多くの技術を結集する必要があるので当然の成り行きである。

現時点でのそれぞれの最新鋭の飛行機は、ボーイング７８７ドリームライナーとエアバスＡ３８０である。７８７はジャンボ７４７より小型で、Ａ３８０は大きい。搭乗旅客数で比較すると、７８７は３００名・ジャンボは５００名・Ａ３８０は客室が二層構造で最大８００名である。

アメリカの考え方は、小さな飛行機で、多方面に多くの便数を確保しようとする。欧州連合は１箇所に大量の人員を運ぶという哲学で、開発戦略が違うようである。アメリカはショットガンで欧州は大砲である。どちらが市場で受け入れられるのか興味のあるところである。

太平洋戦争では日本は戦艦大和で戦いに挑んだけれども、空母からの戦闘機に敗北した。自然の海の生物ではマグロが人間に食われ激減し、鰯はまだまだ多く生息している。

１世代前のジャンボ７４７の時は、アメリカは低速大量輸送の飛行機を開発し廉価な旅を提供しようとし、反面欧州連合は超音速少人数を運ぶ高運賃のコンコルドで挑んだけれども、ジャンボジェット機に完敗した歴史がある。

Ａ３８０は大量輸送よりも、その巨体を利して快適空間を演出したいようである。飛行機に豪華客船の居住性を作るという。飛行機で移動する時まで、居住性を求めるのは強欲なのではないのか。

アメリカは飛行機本来の機能即ち早く目的地に到着することに徹したサービスをめざす。

たぶん欧州の飛行機の運賃は高価になると思う。金満族あるいは貴族が客筋だろうが、その種の人種は多くない。多くの人間は富裕族でない平凡な人種である。

そして巨大化志向が安全だろうとの錯覚が流行しているが、必ずしも安全とはいえない。恐竜が絶滅したのも、鯨が乱獲されたのも、巨大さが災いした。どちらに市場はエールを送るかはわからないけれども、アメリカの戦略が勝利するような気がする。

大きいことは善い事だという流行は、反面大きな危険や不安を内蔵している。物事によって大きさを選択しなければならないと思う。